広島高等裁判所松江支部 昭和34年(ナ)1号 判決 1960年8月05日
原告 宮崎正雄
被告 中田吉雄
主文
昭和三四年六月二日施行の参議院議員鳥取県選挙区における被告の当選を無効とする。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実
原告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、その請求原因および被告の主張に対する反駁として次のとおり陳述した。
本件当事者および訴外米原昶、小田スエは、昭和三四年六月二日施行された参議院議員選挙に際し、鳥取県選挙区において立候補し、選挙の結果その得票数は、被告は一一七、九九一票原告は一一七、九五二票、訴外米原昶は一五、一七五票、同小田スエは四九八四票と判定せられ、同月六日の選挙会において被告を当選人と定め、鳥取県選挙管理委員会は同月八日被告の当選人決定を告示した。
しかしながら、被告の有効投票中に当然無効のものがあり、また無効票として処理された投票中に当然原告の有効投票たるべきものがあるほか、票数の計算に誤りがあつて、これらを加減すれば、原告の得票総数は被告のそれより多数となるので、被告の当選は無効である。すなわち
第一、被告の有効投票とされたもので、無効とすべきものは次のとおりである。
一、本件選挙区内における左記著名人の氏、名もしくは氏名に一致しまたは酷似した投票は、被告の氏、名、または氏名を誤記したものとみるべきではなく、候補者以外のものの氏、名、または氏名を記載したものとして、無効とすべきである。
中田政美 昭和二七年一〇月衆議院議員選挙に当選し、昭和二八年四月同選挙および昭和二九年一二月鳥取県知事選挙にいずれも落選、建設省政務次官に任ぜられたことがある。
中田義正 昭和一〇年九月より昭和二二年四月まで鳥取県会議員在任、昭和二一年四月衆議院議員選挙に落選、昭和二二年四月より翌年三月まで鳥取県弁護士会会長に在任、
中西利理 昭和三〇年二月および昭和三三年五月の各衆議院議員選挙に立候補しいずれも落選、
田中たつ 鳥取県助産婦会々長で、昭和二一年四月衆議院議員選挙に当選した婦人運動の先駆者、
田中嘉男(よしを) 八頭郡から立候補し昭和一七年一一月より昭和二二年一月まで鳥取県会議員として活躍した、
高田勇 昭和三四年二月鳥取市長に当選し在職中、
田中信儀 昭和六年より昭和二二年まで鳥取県会議員として在任し、その間昭和一六年より昭和二二年まで議長をつとめ、昭和二二年四月参議院議員選挙に鳥取県選挙区から立候補して当選し昭和二五年五月まで在職
右理由によつて無効とされるべきものは別紙第一表の(一)記載の合計三二一票である。
二、「中田正雄」と記載された投票は、被告の名を誤記したものと認めるべきではなく、原告の氏を誤記したものと認められる理由もあるので、候補者の何人を記載したかを確認し難いものとして無効とすべきであるる。この理由によつて無効とされるべきものは同表の(二)記載の八九票である。
三、本件選挙と同時に施行された全国区参議院議員選挙の候補者のうちに、鹿島俊雄 沖原紀夫(としを) 後藤俊男 加賀山之雄 石谷憲男 小西英雄 石田次男 中村順造 中川源一郎 吉田セイ 米田正文 田中清一 鶴園哲夫があるので、被告の有効投票とされた同表の(三)記載の三八票は、これらの候補者の氏または名と一致するので候補者の何人を記載したか不明であるから無効である。
四、前記全国区参議院議員選挙の候補者に中尾辰義 永岡光治 牛田寛 中村順造 中川源一郎 吉田セイ 田中清一 があるので、ナカヲ 岩美 7、一 ナカヲ 関金 6、一 ナカヲ 鳥取第二 甲27、一なかを 郡家 甲7、一 なかヲ 東郷 甲2、一 ながおか 日野 2、一 牛田 中山 甲4、一 中村 境港 5、一 ナカ<小> 倉吉 甲7、一 吉田 若桜 10、二 計 一一票もまた無効とすべきである。前記第一表の(一)記載中田中たつ関係の「田中」類型票二九票は右理由によつても無効である。
五、別紙第一表の(四)記載の三〇票は氏名のうち、氏または名の一方が被告のそれに一致するけれども、他の一方が被告のそれと字型、字音、寓意のいずれにおいても全く異なるから無効とすべきである。特に右票のうち「中田吉子」「中田よし子」「なかたよしよ」は女性名であるので、被告の名との近似性は特に稀薄である。
前記(一)表中の「中田政美」の類型票二一票は、右の理由によつても無効である。
六、同表の(五)記載の二三票は投票用紙に氏のみが記載され、その文字のうちあるものが他の候補者の氏の一部の文字と同一であり、他の一半がいずれの候補者とも一致しないから無効と解すべきである。殊に本件選挙の候補者中に「小田スエ」がいて、被告の氏中田と「田」の文字を共通しているので、とうてい被告の有効票とは解されない。
七、中切 鳥取第三 甲1、一 なか八 倉吉 甲11、一 計 二票は上半が被告の氏「中田」の上の字中(なか)と符合しているが、下半は被告の氏と全く近似性がないので無効とすべきである。
八、左記三一票は有意と認められる他事記載があるので、無効とすべきである。(1)米子第三 12、「中田ヨシー」の「ー」が他事記載 (2)同 甲10、「中田ナシ」の「ナシ」 (3)鳥取第三 甲16、左上の「を」 (4)淀江 甲2、右行の「田中」 (5)気高 甲2、左行の「中原」 (6)鳥取第一 甲10、裏面の「一」 (7)若桜 甲3、「ナカ」と「タ」の間の「一」 (8)智頭 甲9、最後の記載「ミリ」とも読めるもの (6)智頭 甲11、最上の「ー」 (10)鳥取第一 甲22、下部の記載は単なる筆勢の余字とは思われない (11)鳥第二 甲30、(ヨ)の「( )」 (12)米子第二 甲5、右下隅の記載 (13)同第三 甲20、「ナカ」と「ダ」の間の「一」 (14)羽合 甲10、右上隅の「ハノ」 (15)倉吉 甲12、上部の「うずまき」の符合 (16)東伯甲3、上部の「○○」 (17)東伯 甲9、雄の右の「○」(18)智頭 甲12、「石谷」は他事記載 (19)米子第二甲15、冒頭の「か」 (20)国府 甲47、右下の「ー」 (21)郡家 甲1、下部の意味不明の記載 (22)河原甲1、「中田」と「吉雄」の間の「○」 (23)八東 甲10、最下部の記載 (24)用瀬 甲7、「中」と「田」の間の意味不明の記載 (25)佐治 甲1、下部の「○」 (26)境港 甲11、下部の記載 (27)鳥取第一甲3、下部の記載 (28)同第二 甲5、最後の「ア」 (29)同第二 甲18、「中田三」の「三」 (30)米子第一 甲5、<社>の○ (31)三朝 甲1、上部の「リ」 計三一票
九、投票のうち
(イ)被告に近似性の全くない氏、名、氏名の記載されたもの(ロ)仮名一文字のみの記載があるもの(ハ)全国区用紙に記載したもの(ニ)不真面目なものは当然無効である。この点で、ながわ 八東 1、一 かなまる 鳥取第二 17、一 米原 西伯 1、一 なかおたつよし 鳥取第一 6、一 中田(全国区用紙に記載したもの) 鳥取第三 10、一 倉吉 10、一 ナ 若桜 5、一 計 七票は無効である。
第二、無効投票として処理されたもので原告の有効投票とすべきものは次のとおりである。
一、同表の(六)記載の四三票は、その氏名の大部分が原告の氏名と一致しているので、他に特段の事由のない限り、原告の有効投票とみるべきである。
二、同表(七)記載の二一三票は、その文字が原告の氏の字形、字音または語感等において著しい近似性がある一方、その記載された文字に一致する他の候補者が実在することその他特別の事情がないので、原告の氏を誤記したものとして有効と解すべきである。特に原告の氏「宮崎」の文字は平常用いられる文字ではなく、かつ原告は新人の候補者であるため、選挙人のうちには往々読み違い、書き違い、聞き違いをするもののあることは免れないところである。
三、同表の(八)記載の九一票は、文字が稚拙、不完全であつても、原告に投票する意思を推定することができるから、他に特別の事情のない限り、投票者の意思に従つて原告の有効投票とみるべきである。
四、右一、三の理由により左記の票もまた原告の有効投票とすべきである。<富>崎 米子第一 丙3、一 みヤキもあ 大山 丙2、一 ミ<さ><を> 鳥取第一 丙8、一 フみヤ 東郷 丙2、一 ミヤ 羽合 丙3、一 ミ<サ> 倉吉 丙10、一 計 六票
五、左記の票は、有意の他事記載があるものとは認められないので、原告の有効投票とすべきである。ネみヤざき 岩美 5、一 キシマザキ 鹿野 丙3、一 メミヤザキ 鳥取第一 丙11、一 ワミカザキ 倉吉 丙5、一 計 四票
六、左記の票は名は原告の名を正しく記載し、氏は被告の氏に類似するにすぎないものであるから、原告の有効投票とみるべきである。仲田正雄 江府 3、一
七、投票中(イ)選挙の種類、政党、選挙すべき地位等を附記したもの(ロ)単に二重記載したもの(ハ)単に抹消または訂正したものは当然有効である。この理由で左記五票は原告の有効投票とすべきである。地方みやざき 米子第三 5、一 (みやざき・みやざきまさお倉吉 14、一 (宮崎・宮崎 淀江 6、一 自・宮崎正雄 米子第三 丙1、一ちまく・みやせき 三朝 丙3、一 計 五票
第三、被告の有効投票中左記五票は、原告の有効投票と解すべきであつて、混在票とみるべきである。宮田止男国分 甲1、一 仲田正男 倉吉 15、一 日南 1、一 江府 12、一 田中正<雄> 鳥取第一 甲44、一 計 五票これを是正すれば原告の増票五、被告の減票五、となる。
第四、(一)各開票区において別紙第一表の(九)記載のとおり票数計算に誤りがあつて、得票数は原告の増票八、被告の増票四となり、(二)原告、被告の各有効投票がそれぞれ相手方の有効票中に混在していたものがあつて、別紙第一表の(九)に示すとおり(イ)原告の票が被告票中に混在していたもの 二六票 (ロ)被告の票が原告票中に混在していたもの 一三票であつて、(イ)を是正することによつて原告の増票二六、 被告の減票二六 (ロ)を是正することによつて原告の減票一三 被告の増票 一三となりこれを通算すれば、原告の増票一三、被告の減票一三となる。
第五、さきに原告が援用した写真判定票(甲乙丙丁号票)中、判読の明瞭なるものを除き、個々の票に対する原告の判読理由は次のとおりである。前記第一の一関係(別紙第一表の(一)(二))(1)田中 鳥取第三 甲28、一 筆勢ならびに「中」の書体より見て、投票用紙を逆にして「田中」と記載したものである。(2)田中 米子第一 甲1、一 「中田」とも「田中」とも見られるようであるが、「田」「中」の右肩の運筆より見て「田中」と見るのが妥当である。(3)田中 大山 甲6、一 「中田」とも「田中」とも見えるが、「中」の字形から見て「田中」と読むのが妥当である。
同第一の四関係(4)ナカヲ 鳥取第二 甲27、一 (5)なかを 郡家 甲(7)、一 (6)なカヲ 東郷 甲2、一 右三票は、明らかに右の通りであり、(5)の第三字目を「お」の未完成文字と見ても同様である。
同第一の五関係(同表の(四))(7)なかダはる<え> 関金 甲2、一 最後の字は判読困難であるが、「え」と読みうるとしても、然らずとしても、被告の名とは似もつかず、また「え」は「へ」と同じく他事記載として無効原因となる。
同第二の一関係(同表の(六))(8)宮崎○<雄> 淀江 丙1、一 第三字目は判読が困難であるが、第四字目は偏と「つくり」を反対に並べて記したもので、「雄」と書く意思が伺われる。(9)みヤギまさお 岩美 丙1、一 第一字目は「み」の右半を書き終つていないが、「み」を書く意思は十分見られる。(10)みかきまさお 境港 丙2、一 第一字目は「み」と書く意思が表われており、第二字目「か」は「や」と読める。
同第二の二関係(同表の(七))(11)みヤぢま 佐治 丙1、一 「ぢ」は「ざ」の最終の筆を左転すべきを、右転したもの、「ま」は「き」の結びが不完全なものである。(12)<岩>崎 米子第一 丙1、一 第一字目は「岩」に似た文字であるが、「宮」と書こうとした意思が伺われる。(13)岩<崎> 米子第三 丙2、一 「岩」は「宮」の誤記であることが推認される。(14)山崎 北条 丙3、一 「宮」を抹消して「山」と書いているが、「宮崎崎」え投票する意思を改めて「山崎」に投票したものではなく、「宮」と「山」といずれが正しいかに迷つたものである。(15)ヤマサキ 船岡 丙1、一 「ヤ」は「み」の、「マ」は「ヤ」の、各不完全記載である。(16)ミカモト 倉吉 丙1、一 「カ」は「ヤ」のつもりで書いたものでる。(17)のざき 青谷 丙3、一 第一字目は「み」と書く意図であつたものが、「の」の如くなつたものである。
同第二の三関係(同表の(八))(18)<富>崎 米子第一 丙3、一 「宮」は「富」に似ているが、「宮」の下部の口の中え不必要な「十」を記載したにすぎず、文字を正確に知らないものの陥り易い誤りである。(19)宮<崎> 米子第一 丙5、一 下の文字は「崎」を書こうとした苦心がうかがわれ、原告に投票する意思が明らかであるる。(20)宮崎わキ 米子第二 丙5、一 原告の姓が「宮崎」であつたか「宮脇」であつたかに迷い、「宮崎」と書いておき「わキ」を加えたにすぎない。「わ」を「さ」の誤記と見れば「宮崎さキ」である。(21)<み><や>ざき智頭 丙4、一 第一字目は「み」を書こうとした意思がうかがわれ、第二字目は終画を脱した「や」の不完全記載である。(22)<み>ヤざき 船岡 丙3、一 第一字目は「み」とみられ、第二字目は「ヤ」の稚拙な記載である。(23)みヤざキ 鳥取第二 丙2、一 「ざ」は「ザ」の横倒しともみられる。(24)<み>ヤシキ 国府 丙1、一 第一字目は「み」の不完全記載、「シキ」は「ザキ」の音を誤つたものである。(25)<み>ヤ<き>キ 国府 丙2、一 第三字目は「き」の錯記であり、かつ「さ」の筆末を右転した誤記である。(26)みヤ、き 東郷 丙5、一 第二字目は「ヤ」に見られ、第三字目は「、」か「こ」であつて、原告えの投票意思を推測せしむるに十分である。(27)ミヤ井キ 岸本 丙1、一 「井」は「ザ」に不必要な横棒一本を加えたものである。(28)<ミ>フザキ 米子第一 丙11、一 第一字目は「ミ」を横転して記載したもの、第二字目の「フ」は「ヤ」の不完全記載である。(29)クやザキ 智頭 丙14、一 クは「み」の不完全記載である。(30)<ミ>ヤぎま 米子第一 丙8、一 第一字目は「み」の最終の筆を逸した不完全記載、「ぎ」は「ざ」の誤、「ま」は「き」の誤りである。(31)ミヤニサ 米子第一 丙10、一 第一字目は「シ」ではなく「ミ」であり、「ニ」は「サ」を横転して横棒を忘れ、「サ」は「キ」の横倒しと見られる。(32)ミやかフ 鳥取第三 丙3、一 文字の稚拙さから見て「か」は「サ」の不完全記載と思われる。(33)ミヤ○○ 境港 丙1、一 第三、第四字は「サキ」または「さき」と書く意図が見える。(34)みや○○ 倉吉 丙7、一 第三、第四文字を強いて読めば「こさ」であるが、いずれにしても、原告を指す意図である。(35)みみカさき 西伯 丙2、一 「みみ」は「み」がうまくかけなかつたので、二度書いたもの、「カ」は「ヤ」と書いたつもりである。(36)ヤヤざぎ 米子第一 丙7、一 第一字目は「み」の不完全記載である。(37)おヤきさ 青谷 丙5、一 「お」は「み」を書く意図であり、「きさ」は「さき」の転倒したものである。(38)シヌギキ 智頭 丙6、一 「シ」は「ミ」の不完全な筆勢、「ヌヌ」は「ヤ」の不完全な筆勢、「ギ」は「ザ」を横書きしたもので、「ミヤザキ」と書く意思が見える。(39)ミカザナ 北条 丙2、一 「カ」は「ヤ」の不完全な筆勢、「ナ」は「キ」の不完全記載である。(40)ヤヤきま岩美 丙2、一 第一字目は「み」の誤、第三字目は「さ」に横棒を一本余分に附加したもの、第四字目は「き」の錯記である。(41)ミカレき 米子第一 丙2、一 「カ」は「ヤ」と見られ、「ミヤさき」の誤りであるる。(42)みカ○○ 米子第一 丙4、一 「カ」は「ヤ」の意思と見られる。(43)みや<さ> 中山 丙1、一 <さ>は「さ」の半分を記載したものである。(44)<ミ>ヤキ 鹿野 丙2、一 第一字目は「ミ」と書かれている。(45)<み>ヤキ 東伯 丙1、一 <み>は「み」の左半分記載である。(46)<み>ヤ<き> 鳥取第一 丙9、一 「み」は「み」の錯誤<き>は「き」の筆端の折り曲げを誤つたものである。(47)ミヤギ 米子第一 丙6、一 第三字目は「ザ」と「キ」が重なつたものとみられる。(48)ミザナ 東郷 丙4、一 「ナ」は「キ」の横棒が一本不足したものである。(49)<や><さ><き> 羽合 丙2、一 三字とも不正確であるが、第一字目は「や」と判読され、<さ><き>はいずれも左右転倒した錯記である。(50)ミカき 西伯 丙1、一 「カ」は「ヤ」の不完全記載である。(51)<ミ>かキ 智頭 丙10、一 <ミ>は「ミ」の不完全記載、「か」は「や」とも読める。(52)ミゼキ 三朝 丙4、一 「ゼ」は「ヤ」に濁点を附したものまたは「ザ」の不完全記載と思われる。(53)宮○ 倉吉 丙9、一 第二字目は「崎」の意図である。(54)宮○ 米子第二 丙4、一 第二字目は極めてうすい記載であるが、「崎」を書こうとした形跡が推定される。(55)みや 「み」は筆勢が不完全であるが「み」と思われる、「さ」を加えようとしたが自信がないため抹消した。「みやさき」と表示しようとしたことが判る。(56)ミが 倉吉 丙8、一 「が」は「ザ」とも読める。(57)ミマ 北条 丙4、一第一字目は「シ」の形をしているが稚拙な「ミ」の筆勢、第二字目は「マ」の形をしているが「ヤ」の稚拙な筆勢である。(58)まさお 鳥取第一 丙7、一 辛じて「まさお」と読うる記載がある。
同第二の七関係(59)ちまく・みヤせき 三朝 丙3、一 「ちまく」は「ちほく」即ち「地方区」と読むべきであり、「せ」は「サ」の意図と見られる。
第六、如上当事者双方の得票数の増減を通算すれば原告の増票三八九票 被告の減票 五六六票となる。鳥取県選挙管理委員会において決定された原告の得票数一一七、九五二票に右三八九票を加えれば一一八、三四一票となり、被告の得票数一一七、九九一票から右五六六票を減ずれば一一七、四二五票となり、原告の得票数が被告のそれより九一六票多くなるので、当然原告が当選者となるべきである。
第七、予備的主張
一、第一の一において指摘した著名人のうち田中嘉男、高田勇について、少くとも、その選挙区であつた地区、即ち田中嘉男については八頭郡(開票区郡家、船岡河原、八東、若桜、用瀬、佐治、智頭)の票(計一三票)高田勇については鳥取市(開票区同市第一、二、三)の票(計三票)は少くとも無効とすべきであるる。
二、第一の二の主張が認められずして、「中田正雄」類型票が、被告の有効票と解せられるならば」宮崎吉雄」類型票は原告の有効票と解すべきである。この点において無効票中原告の有効票と解すべきものは別紙第一表の(一〇)のとおり三〇票である。
三、第一の三の主張が容れられないならば、第二の二の理由によつて、無効票中左記のものは原告の有効票と見るべきである。
みやざきのりを 船岡 4一、 智頭 3二、 宮崎のりを 日野 丙2一、 「り」が抹消されてあると見れば当然有効票である。 宮崎憲夫 青谷 9一、 宮崎憲男 溝口 4一、 計六票
四、第一の四の主張が容れられず、有効票と判定されるならば、無効票中左記六票は原告の有効票と見るべきである。宮崎太郎 岩美 2一、 宮崎博史 米子第三 8一、 島沢正雄 気高 3一、 高橋正雄 八東 1一、 いしもとマサヲ 国府 3一、 <谷>口正お 日南 丙4一、 計六票この場合、無効票中左記二票は氏名を示す四文字のうち二文字が原告に一致し、全体が語感において原告の氏名に近似しているので、原告の有効投票と見るべきである。山崎石雄 気高 7一、 宮沢正秋 赤碕 丙5一、 計二票
五、第一の三および第一の五の主張が認められない場合無効票中左記一〇票は原告の有効投票となすべきである。宮崎健吉 米子第二 13一、 倉吉 18一、 宮崎弥一郎 淀江 3一、 宮崎せい一 鳥取第二 丙5一、 ミヤザキタメジ 日野 丙1一、 石田正雄 鳥取第三 11一、 石谷正雄 日南 4一、 吉田正雄 郡家 1一、 会見 2一、 高田正雄 鳥取第一 3一、 計一〇票
第八、被告の主張(第二)に対する反駁
(一) 甲二の(二)につき
ナカタニ四票、中たに一票、なかたに一票、計六票は「中田に」と記載した趣旨と解され、「ニ」「に」は他事記載であつて無効である。
同じく(三)につき
ヨシダヨシヲ、よしだよしお、吉田吉雄、中村吉雄、中村ヨシヨ、石田吉男(吉雄は誤記と認める)、山田吉雄、各一票宛合計七票は第一の三の理由によつて無効とすべきである。大田よしお一票は全国区候補者「大谷よし雄」と語感において酷似しているから、同人の票と見るべきものであつて無効である。
同じく(四)につき
中田正雄四三票、中田正お一票、中田マサオ一票、中田マサヲ一票、なかたまさを一票、なかたまサを一票、合計四八票は第一の二の理由により無効である。仲田正雄一票は原告の有効投票と見るべきことは第二の六に記載したとおりである。
同じく(五)につき
「田中吉雄」の類型票二七票は第一の一および三の理由により無効である。
同じく(六)につき
「田中」類型票二三八票(第二表の(三)中の「田仲」二票を除いたもの)は第一の一および四の理由により無効であり「田仲」二票は一層強い理由により無効と見るべきである。
同じく(七)につき
田中よしはる、田中よを、田中一夫各一票合計三票は氏も名も被告と異なり近似性が全くないから無効である。
同じく(八)につき
長田一票、永田五票計六票は第一の六の理由により無効である。
同じく(九)につき
吉田八票、ヨシダ、よしだ各一票合計一〇票は第一の四の理由により無効である。
同じく(一〇)につき
中西三四票は、第一の一の理由により、中川四二票、なかお二票、ナカオ二票、合計四六票は第一の四の理由によりいずれも無効である。
同じく(一一)につき
中田憲男、中田トシオ、中田次男、中田義一、中田てつお各一票宛合計五票は第一の三の理由により、中田義正一票は第一の一の理由により、仲田雄二一票は第一の五の理由によりいずれも無効である。
同じく(一三)につき
吉田・中田)一票は全国区候補者に吉田姓のものがある以上他事記載または何人に対する投票であるか確認し難いものとして無効である。
同じく(一四)につき
第二表の(五)記載の票は第一の五の理由により無効であり、「中田政美」類型票四二票は第一の一の理由によつても無効である。
四の(一)につき
岩崎五票 いわさき一票 山崎三票 土崎一票 ヲカザキ一票 とみざき一票 宮脇五票 宮嶋三票 宮城一票 合計二一票は第二の一の理由により原告の有効投票と見るべきであり、ミザヤ一票 めやざに(点字)一票 セヤザケマヤミ(点字)一票 合計三票は第二の三の理由により原告の有効投票と見るべきであり、米田正雄一票 岩垣正雄一票 合計二票は予備的主張の四が認められる場合には原告のため有効たるべきである。
乙一の(一)につき
国府乙19 投票者は筆の終りに点を打つ癖があることは「宮崎」の下にも「正雄」の下にも点があることで明らかであつて、「正」の下の点は同じ癖から無意識に打つたものである。
福部乙12 「2」は「みヤざき」とは筆勢が全く異なり達筆な点から見て開票関係者が計数のため記載したものと思われる。
岩美乙3 「みやざき」と記載したが「みやざは」ではないかとの疑を生じたので、念のため「は」を書添えたものであつて、他事記載ではない。
郡家乙8 「石谷」は抹消する意思が明らかであり、他事記載には当らない。
河原乙8 無学の選挙人が何か書きかけて抹消した形跡があり、有意の記載とは思われない。
若桜乙3 「ニ」は「正」の字を書こうとして書きえなかつたものである。
若桜乙7 第三文字は「崎」と読める。
智頭乙14 第一文字は「み」を書こうとしたものである。
境港乙16 人によつては収筆の癖のあることが多く、この程度では有意の記載と認めるべきでない。
気高乙9 文字の稚拙さから見て、「ん」に重なつた横棒が、有意な記載とは思われない。
鳥取第一乙23 第三文字は「ザ」の濁点が長くなつたにすぎない。
鳥取第二乙1
鳥取第二乙5 各「ー」は原告の名を失念したため記載したものと思われ、有意の他事記載という程度ではない。
鳥取第三乙21 この程度では有意とは認められず、「み」または何かの字の書きかけと見られる。
鳥取第三乙22 二重文字で記載する程度では未だ不真面目とは断定できない。
米子第三乙11 最上部の記載は何か字を書きかけて、横棒で抹消したものである。
三朝乙10 「宮崎」と書いたが意に満たず、「富崎」であつたか「宮崎」であつたか疑を持ちながら仮名で「とみヤさキ」と書いたもので、「富崎」と「宮崎」が極めて誤り易い点から見て「と」は他事記載とみるべきではない。
倉吉乙3 「みやざきお」とみれば「まさ」を脱落したもの、「みやざき様」とみれば敬称の附加であつて、いずれにしても有効である。
倉吉乙5 欄外の記載は後日何人かによつて、うつかり記載されたものと見るのが自然である。
倉吉乙8 上部の記載は有意の記載と認めうる程度のものではない。
関金乙5 上部の記載は「中」を横棒で抹消したものである。
淀江乙6 「宮崎トス雄」であつて有効である。
同じく(二)につき
岩美乙13 「みヤぢま」の如く見えるが、「ぢ」は「ざ」の左右転倒であり、「ま」は「き」の筆端折り曲げの誤りである。
用瀬乙2 記載の稚拙な点から見て、「宮崎」と書こうとして「宮場」と見える如き文字を書いたものと思われる。
用瀬乙5 第二文字は形が片寄つてはいるが、「崎」と読むことはさまで困難ではない。
佐治乙4 記載は「ミヤカキマナヲ」であり、第六字目は「サ」の未完成文字である。
佐治乙6 「シ」は「ミ」の不正確な筆勢、「マ」は「ヤ」の不完全記載である。
智頭乙12 「富崎」の如き記載をしたが十分意に満たず抹消して「ミヤザキ」を、方言混りに「メヤザけ」と記載したものであつて、原告を投票する意思である。
境港乙9 「ご」は「ざ」の横線を書き落したものにすぎない。
気高乙4 「嶋」と「崎」とは字形からも語感からも近似しており投票者は「崎」と書くつもりでうつかり「嶋」と書いたものであろう。
鳥取第一乙8 「みや」のほかは「くき」の如く読めぬこともない、「みや」ではなく「みやざき」なることを表明するため記載したものである。有意の他事記載でもない。
鳥取第一乙36 「嶋」と「崎」は語感が近似しており原告を指すものである。
鳥取第二乙23 「宮橋正雄」と読め、原告の氏の誤記である。
鳥取第二乙26 文字の稚拙な点より見て「崎」を書こうとして「端」の如き文字を記載したものである。
鳥取第三乙16 「やまさき」は第二の二の理由により原告の有効投票である。
鳥取第三乙18 「みやざき」を書こうとして「や」を脱落し「ざ」に余分の横棒一本を加え「ぎ」となつたもので、原告の有効投票である。
鳥取第三乙23 第二字目は「ヤ」の不完全記載、第三字目は「サ」の第二画を脱落したものか、または「カ」であるから、全体は「ミヤサキ」または「ミヤカキ」であつて原告を指すものである。
鳥取第三乙37 第二字目は「ヤ」の第三字目は「サ」のそれぞれ不完全記載である。
鳥取第三乙39 「宮ざき」(「宮」は不完全記載)と記載することにより、同時に原記載を抹消しているから有効である。
西伯乙4 第三字目は字になつていない。「みや」が判読できる以上原告を指すものである。
青谷乙3 第一字目は「み」の誤記、第四文字は「ま」と読め、全体として「みやざま」即ち「みヤざき」のうち「ざ」を「ぎ」と誤り「き」を「ま」と誤つたものである。
青谷乙6 第三字は「ざ」の、第四字は「き」の、いずれも筆端の折り曲げを逆に書いたものである。
東郷乙13 第一字目は「ミ」である、第二字目は明らかに「ヤ」である。第三字目は判読不明であるが「田」ではなく原告の有効票とみられる。
東伯乙8 「正」の字もかすかに読みとれるから原告の有効投票である。
会見乙1「ミヤ崎」の書き誤りである。
会見乙2 結局「みさざ」であつて原告を指すものと思われる。
淀江乙1
淀江乙5
淀江乙4 乙4の名は「ため治」であろう、いずれも予備的主張の四が認められる場合原告の有効票である。
大山乙5 第一字目は「み」の誤記、第二字以下は「いやさき」であつて、全体として原告を指すものである。
日野乙3 投票用紙を逆様にして「ミヤ」と記載したもので、原告を指す意図が伺われる。
日野乙7 「宮さき」(「宮」は不完全記載)である。あるいは第一字「み」と書きかけてやめたもの、第二字は「み」のつもり、それに「さき」を加えたものと見るべきである。
日野乙9 文字の稚拙さより見て、第二字目は「崎」を書こうとしたものと思われ、原告の有効票と見るべきである。
乙の二につき
国府丁1 明らかに「なかお」と読めるから無効。
国府丁2 文字がさまで幼稚でない点と下部の記載の位置形状から見て有意の他事記載とみるべきである。
岩美丁1 「ナタ」は第一の六の理由により無効。
郡家丁2 「ハ一」は明らかに他事記載である。
郡家丁4 記載は「なかさは」であつて、被告の氏と著るしく異なるから無効。
船岡丁1 第四字目は「美」の誤記であるから、全体は「中田正美」であつて無効。
八東丁1 第四字目は「美」の不完全記載「中田正美」であるから無効。
佐治丁1 「なかこたけ」と記載してあり、全国区候補者仲子武一を指すものであるから無効。
智頭丁1 「中田正美」の誤記と見られるから無効。
智頭丁2 全体の記載が「なカまる」と推測できるから無効
智頭丁3 「ナ中」と判読され「田中」の誤記であるから無効。
智頭丁4 如何にしても判読不能であり、「タヤカキレ」と読んでも意味不明。
智頭丁7 「なかお」であり、全国区候補者中尾辰義があるので無効。
智頭丁10 「中田カく」は第一の五の理由により無効。
境港丁1 明らかに「ナフガ」と記載されており被告と近似性がなく無効。
境港丁3 「田中」であるから無効。
境港丁5 「ナガタ」は無効。
境港丁10 上部の記載は抹消と見られず、他事記載であつて無効。
鳥取第一丁5
同丁6 いずれも「田中」であるから無効。
鳥取第一丁8 明らかに「中毛」と記載され、被告の氏と近似性がなく、前記中尾辰義の氏に近似しており無効。
鳥取第一丁9 「吉川」および他事記載と見られ、被告の氏名に近似性がないので無効。
鳥取第二丁1 「たなか」であるから無効。
鳥取第二丁2 「田中吉雄」であるから無効。
鳥取第二丁3 「ナタ」は無効。
鳥取第二丁4 「長田」は無効。
鳥取第二丁6 「かなだ」は無効。
鳥取第二丁8 「たかた」は無効。
鳥取第二丁9 「おた」であるから無効、かりに「なだ」と読んでも無効。
鳥取第三丁3 「なが」は「ながた」の不完全記載であるから無効。
西伯丁2 記載は「をたさま」であり小田候補に対する票であつて被告に対する票ではない。
米子第二丁2 「ナガ」は「ナカダ」ではなく、「ナガタ」の不完全記載であつて、無効。
米子第一丁7 「中田清一」は無効。
米子第一丁10 記載は符号であつて、文字ではないので、有効とはいえない。
米子第一丁14 「たかだ」であつて無効。
米子第一丁15 下部の記載は有意の他事記載である。
米子第二丁1 第四字目は判読不能、相当達筆な記載であるから、第一字目を「な」の「」を忘れた記載とは思われず、全体の記載は「よカだ○」であつて、被告の氏とは全く異なるので無効。
米子第二丁3 「タナか」は無効。
米子第二丁8 「たなか」は無効。
米子第二丁9 「田中」は無効。
米子第二丁7 「中田カンジ」は無効
米子第二丁10 第二字目は判読不能全体の記載は「な○し」であつて、被告の氏と近似性を欠き無効。
米子第二丁14 「お田」と読まれ小田候補があるので無効、「の田」と読んでも無効。
米子第三丁3 「ナ田」は無効。
米子第三丁4 記載は「土の」であつて、被告の氏と近似性を欠き無効。
米子第三丁7 「中尾」の不完全記載であるから無効。
米子第三丁10 「タナカ」は無効。
米子第三丁11 「たなか」は無効。
青谷丁1 第三字目は「ミ」であり、以下の記載は判読不能。
青谷丁3 「中タカラ」であつて無効、「中タダラ」と読めば「ダラ」は有意の他事記載である。
青谷丁5 「チコ」であつて何人を記載したか不明であり無効。
青谷丁6 「田中」は無効。
青谷丁7
同丁8 いずれも判読不能であるから無効。
羽合丁2 著名人「田中たつ」を記載しようとした意図が明らかであるから無効。
羽合丁3 「戸田」と見るのが自然であるから無効。
羽合丁5 「カタ」は無効。
東郷丁1 「ナダ」は無効。
東郷丁3 「中田」は抹消して「田中」と記載したものであるから無効。
三朝丁2 第一字目は「を」の不完全記載であり、全体は「をだ」であるから小田候補の票であつて無効、「だ」と読んでも無効。
三朝丁3 「田中」は無効。
三朝丁4 「フブタ」であるから無効。
三朝丁5 「中田」の右側の意味不明の数文字は明らかに他事記載である。
倉吉丁1 「た中」は無効。
倉吉丁2 「中西」と判読され無効。
倉吉丁3 「士た」と読まれるから被告の氏と近似性を欠き無効、「おた」または「た」と読んでも無効。
倉吉丁5 「みヤだ」と読まれ、原被告の氏の混記であるから無効。
倉吉丁6 「ヨシカ」と読むのが自然であり被告の氏名と全く異なるので無効。
倉吉丁7 「たかた」は無効。
倉吉丁8 「田中」「中田」(いずれも不完全記載)の並記である、「田中」に意味がある以上この並記は他事記載となる。
倉吉丁9 明らかに「けカたに」と記載され被告の氏と著しく異るから無効。
倉吉丁11 第二字目の左側の「ノ」は他事記載である。「なた」と見ても無効。
倉吉丁12 「ナかのさん」と書いて全体を抹消した記載であるから無効。
倉吉丁13 第一字目は判読不能、第二字目は「の」であつて、被告の氏名とは全く異なるので被告の有効投票とは見られない。
関金丁1 符号を記載したものか不真面目な記載と見るべきであつて無効。
関金丁2 第一字目を「中」と読むのは無理である。全体が判読不能であり無効。
北条丁1 「ナナナ」と記載された結果となつており、被告の氏名と著しく異なり無効。
北条丁2 「田中」の不完全記載であつて無効。
大栄丁2 「米田」の不完全記載であり前記米田正文候補の票と見るべきであつて無効。
東伯丁1 左側の記載は明らかに有意の他事記載である。
東伯丁2 「ヤレ」または「中レ」であつて被告の氏名と著しく異なり無効。
赤碕丁1 記載は「カータシ」であり無効。
赤碕丁3 「たなか」は無効。
会見丁1 「中タ」と読むことは無理であつて、判読不能。
岸本丁1 「吉田」は無効。
岸本丁2 「米田」の不完全記載であつて、無効。
箕蚊屋丁1 「タロ田」と読むのが自然である、被告の氏名と全く異なるから無効。
箕蚊屋丁3 「たなか」は無効。
中山丁1 「田中義男」は無効。
中山丁2 「たから」であつて、被告の氏名に近似性がなく無効。
大山丁1 判読不能であり、素朴に「フヨシ」と読んでも意味不明であつて無効。
名和丁1 「な田」は無効。
溝口丁2 素朴に読めば「をカブ」であつて意味不明、かりに第三字目が「ダ」の未完成文字と見ても「をカダ」ないし「たカダ」であつて無効。
日南丁1 「中田朕」と読まれ、第三字を「勝」の未完成文字と見ても「中田勝」となり、いずれにしても無効。
日南丁3 「ナカオ」は無効。
日南丁4 「タナか」は無効。
日野丁2 「なかむろ」と読め、第三字目が抹消されたものと見れば「なカろ」であつて、いずれにしても被告の氏と著しく異なる。
日野丁4 下部の記載は他事記載である。
日野丁5 「中田」と読むことは無理であつて、自然に読めば「力フ」であつて意味不明である。
日野丁6 「力田」と読まれるので無効。
(二) 福部村における代理投票に関連する主張について。
福部村開票区における原告の有効票中、被告の指摘する乙1、4、6ないし9、18ないし22計一一票のうち乙8、9、18の三票は他の票とは明らかに異なる同一人の筆跡であり、乙七の一票も他のものと異なる筆跡であるが、かりに他の七票が同一人の筆跡であるとしても、被告も自認する如くあり得る状態であつて怪しむに足らない。
赤鉛筆による記載は投票者の何人であるかを識別せしめるための有意のものであるとか開票従事者が白票に記入したとの主張は投票所、開票所の事務の実情より見て単なる邪推というほかはない。
被告訴訟代理人は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、次のとおり陳述した。
第一、原告の主張に対する反駁。
一、請求原因冒頭の第一項掲記の事実を認める。
二、第一の一につき、
原告主張の著名性を争う。すなわち
中田政美 原告主張の経歴を有する人であることは認めるけれども、元東京都に永く居住しており、鳥取県知事選挙に落選後は政界を全く引退し、鳥取地区においては政界人として著名ではなくなつている。
中田義正 昭和二一年四月の衆議院議員選挙に落選以来、政界に出る意思はなく、昭和二五年検事に任官して鳥取市を離れ、辞職後、広島市で弁護士を開業し今日に至つており、政界を引退した一法律家にすぎない。
中西利理 鳥取地区において相当名を知られた政界人であり、衆議院議員選挙に立候補したことはあつても、参議院議員選挙に立候補したことは一度もなく、本件選挙において「中西利理」と記載された票は皆無に等しい。
田中たつ 第二回衆議院議員選挙後全く政界を引退し、以後如何なる選挙にも立候補したことがない。
田中嘉男 昭和二二年一月まで県会の翼賛議員であつたが、選挙を行つたことは一回もなく、同月公職追放となり政界を引退し追放解除後も一度も選挙に立候補したことなく、公職についたこともない。
高田勇 本件選挙の三月前に行われた鳥取市長選挙に当選し就任したものであるから、かかる人を更に本件選挙の候補者であると混同する筈はない。
田中信儀 昭和二七年四月脳溢血で倒れ爾来病臥し、昭和三五年四月に死亡したものであつて、本件選挙に「田中信儀」なる投票は一票もなかつた。
同じく二につき、
「中田正雄」「なかたまさお」等の完全混記の票が、被告の有効投票であるゆえんについては、後記のとおりである。
同じく三、四につき、
投票は原則として当該選挙の候補者に対してされたものと推定すべきであつて、反対の意思が明らかでない限り、みだりに他の選挙の候補者に対しされたものと解すべきでない。原告主張の「なかおか」(日野2)「中村」(境港5)の票を除くその余は、全部被告に対する有効投票である。
原告は「田中」などの投票を、同時に行われた参議院議員全国区選挙の候補者中に同一の姓のものがいることを理由として、その無効を主張するけれども、本件の場合特に次の事情が勘案されなければならない。すなわち(イ)全国区と地方区では投票用紙が全く異なること、(ロ)地方区の投票を先にし、全国区の投票を後にするようにとの指示に基き、そのように投票が行われていること、(ハ)全国区の選挙は、地方性を全く脱し、立候補者は一二二名の多きに達しているので、その氏名を地方区の候補者と関連させるならば殆んどが全国区の候補者の氏名と近似または同一となり、しかも全国区の候補者に引きつけ判断するなら、莫大な数の投票が無効となるに至ること。
本件選挙においては次のような具体的な事実と特別な事情が存在したことを十分に考慮しなければならない。すなわち(イ)鳥取地区における田中清一の得票数は鳥取県全国区有効票数二四六、九八五票中五六六票にすぎないこと、(ロ)「田中」ないし「たなか」なる票が二八三票に達し「中田吉雄」を「田中吉雄」と誤記した票二七七票を加えると五六〇票にも達する事実と、田中清一の得票数五六六票を対比すると「田中」なる票を「田中清一」の票かも知れないと考えることが不合理であること、(ハ)本件選挙の約二五六、〇〇〇票中に「田中清一」なる票は殆んど皆無に等しいこと、(ニ)「田中」「たなか」は本来「中田」を顛倒したものと解されること。
若し原告のいう如く全国区候補者の氏名と関連させると、原告の有効票とされているもののうち別紙第二表の(六)記載の合計七一票は無効とすべきである。
同じく五(第一表の(四))につき。
投票記載の氏が被告の氏と一致し、名が異なつているのは本件選挙において、被告は氏を選挙民に周知せしめるように選挙運動を行つたもので、そのため「名」が徹底しなかつた嫌があり、名を誤つて覚えられたため誤記されたのである。
原告指摘の票のうち
中田雄夫(大栄甲2) 中田品吉(境港甲7) 中田正義(米子第三9) 中田正吉(日南7) は「中田吉雄」の四字のうち三字までが合つているか、または三字までが音が共通であるから、原告の主張によると、当然被告の有効投票となる筈のものである。
「中田カタ」(郡家1)は「中田ナカタ」の「ナ」の字の脱字、「中田ノガタ」(若桜12)は「中田ナガタ」の誤記であつて、いずれも「中田」の二重記載であつて有効である。
原告の主張によれば、原告の有効票とされているもののうち左記二〇票は無効とされるべきである。
宮ざきかつじ(智頭5)、宮崎藤市(境港15)、みやざききすけ(鹿野4)、みヤざきためじ(鳥取第三18)、宮崎敬一(西伯4)、ミヤザキケンキチ(米子第三29)、ミヤサキシヨ一(青谷9)、宮崎重政(羽合3)、みやざきただよし(岸本3)、宮崎いさむ(用瀬乙1)、宮崎忠次(境港乙13)、宮崎雄男(鳥取第三乙43)、宮崎市蔵(三朝乙8)、みやざきさだみ(倉吉乙1)、みやざき文(淀江乙8)、宮崎憲次(名和乙1)、宮崎上(日南乙1)、宮崎たろー(日南乙2)、ミヤザキノリシゲ(鹿野1)、みやさきとしじ(鳥取第三13)
同じく六(同表の(五))につき、
原告指摘の票のうち、「田」(大栄甲3)を除いては、全く理由がない。
同じく七につき、
鳥取第三甲1につき 第二字目は運筆の状況よりして「田」を崩したものであつて、「切」ではない。同文字の左肩の横の字画は第一文字の「中」と続けて記載する際に筆が滑つたと見るべきである。
倉吉甲11につき 第三字目は、「た」を不完全に記載して抹消したものであつて、「八」ではない。従つて右記載は「なか」であるから被告の有効投票である。
同じく八につき、
(1)米子第三12 「中田ヨシー」は「ヲ」を書けぬために記載したものか、被告を「よしいさん」と呼んでいるので、その意味で「ヨシー」と長音記号を記載したものと解される。他事記載ではない。
(2)米子第三甲10 投票の文字が稚拙な点よりして、その中「ナシ」は「ヨシ」を「ナシ」と誤つて記載したか、或は「ヨ」を「ナ」と誤記したものであるから、他事記載に当らないし、又投票の記載全体の印象よりしても、有意のものとは認められない。
(3)鳥取第三甲16 左上の文字は、その稚拙な文字から、「な」と判読でき、右側に「なかよしお」と記載したものであつて、左上の文字は有意の記載ではない。
(4)淀江甲2 選挙人が、被告の姓につき「中田」か「田中」か確信が持てぬので、その双方を記載したものであつて、有意の他事記載にあたらない。
(5)気高甲2 左行の「中原」は、明らかに抹消されているので、問題なく有効投票である。
(6)鳥取第一甲10 裏面の記載の文字が稚拙なる点よりして、最初誤つて裏面に記載し、ついで表面に記載しようとして、「中」を書きかけ、思いなおして中止したものと解される。有意の他事記載にはあたらない。
(7)若桜甲3 原告主張の「一」は、その位置形状よりして、単なる書き損じと解すべきである。
(8)智頭甲9
(9)智頭甲11 右投票は、地方区の候補者の氏名として「1中田吉男」全国区の候補者の氏名として「2石」と書きかけて誤りに気付き、「2石」を抹消し、地方区の候補者の氏名のみ生かし、この際冒頭の数字「1」の抹消を失念したものであるから、有意の他事記載にあたらない。
(10)鳥取第一甲22 原告指摘の右(8)および本票の記載は、選挙人が被告の名を記載しようとして書くことができず、筆を走らせたものであつて、有意の記載とはいえないものである。
(11)鳥取第二甲30 (ヨ)なる記載は、被告の名を略記したものである。氏名を記載して後名を略記する際には、名の中の最初の一字を「カツコ」で囲んで記載することは、世上一般に行われているところで、右記載もまさにこれに当る。
(12)米子第二甲5 原告指摘の記載は、片仮名で「ヨシ」と被告の名を書きかけたものである。
(13)米子第三甲20 前記(7)と同一理由で、被告の有効投票である。
(14)羽合甲10 右上部の片仮名の記載は、有意と認められず、「中田」なる記載が明瞭である限り被告の有効投票である。
(15)倉吉甲12 原告指摘の記載は、「田」を書きかけて、これを抹消したものであるから他事記載にあたらない。
(18)智頭甲12 「石ハ」は「石谷」と書きかけたものであり、「石ハ」の「石」を丸く囲む記載があることにより、全体を抹消したものと見るべきであるから、他事記載には当らない。
(19)米子第二甲15 冒頭の「か」は「かな」と書きかけその誤りに気付き、「なかだ」と記載して、「か」を抹消するのを失念したものであつて、有意の他事記載ではない。
(20)国府甲47 原告主張のような記載はない。
(21)郡家甲1 第三字目はその形状よりして明らかに「氏」と記載したものであり、右は敬称であるから他事記載とはいえない。
(22)河原甲1 指摘の記載は、「○」ではなく、何かを書きかけて後それを抹消したものであつて、他事記載ではない。
(23)八東甲10 最下部の記載は、被告の氏を失念したか、書けぬために筆を走らせたと見るべきであつて、有意の他事記載ではない。
(24)用瀬甲7 指摘の記載は、何かを書きかけて中止したものと見るべきであるから、有意の他事記載には当らない。
(25)佐治甲1 下部の記載は「○」ではなく、黒く塗りつぶしてあるものであるから、何らかの記載を抹消したものであつて、有意の他事記載ではない。
(26)境港甲 下部の記載は明らかに被告の名を記載しようとして書けずに抹消したものであるから、他事記載ではない。
(27)鳥取第一甲3 下部の記載は、その位置形状よりして単に筆が走つたものにすぎず、有意の他事記載ではない。
(28)鳥取第二甲5 「ア」は「タ」の音をのばして発音している選挙人が、長音符の意味で記したものであるから、有意の他事記載ではない。
(29)鳥取第三甲18 第三字目の記載は「吉」を書きかけたものであり、他事記載には当らない。
(30)米子第一甲5 <社>は被告の所属党派たる日本社会党を表わす意味で省略して記載したものであり、このような略記は、世上しばしば用いられているので、有意の他事記載には当らない。
(31)三朝甲1 文字の極めて稚拙な点よりして、書きかけ抹消するのを失念したと見るべきであつて、有意の他事記載ではない。
同じく九につき、
(イ)(ロ)(ハ)の主張は理論自体は正しい。「ながわ」(八東1)は「なかた」の誤記と認められ、被告の有効投票である。他の事例は争はない。
第二の一につき、
投票用紙に記載された氏名を示す文字の大部分が、候補者の氏名と一致する場合は、原則としてその候補者の有効投票と認めることについては異論はない。しかし原告指摘の票のうち「みやわきのぶを」(智頭丙1)「ヤマサキモサヲ」(三朝丙1)などを右の理由によつて原告の有効投票とみなすというのは主張自体矛盾である。
同じく二につき、
原告が自らの有効投票と主張する「宮脇」「宮嶋」「宮城」について、「脇」「嶋」「城」は「崎」よりもはるかに日常使われない特別な文字であり、字劃も多く難しいものであり、「崎」を誤記する程度の知識の人が、それよりも易しい字、不完全な字に誤つて書くことはありえても、それより一層困難な字に誤記することは到底常識上考えられない。
なお鳥取県には、左記著名人があるから「宮脇」「みやわき」「ミヤワキ」票は無効となる。
宮脇英篤 鳥取県の出身で、全国に著名な二十世紀梨の栽培で、その改良普及および販売の功労者として知られ、昭和一八年鳥取市会議員となり、また鳥取市選挙管理委員をつとめ、戦後も果実組合連合組合長に長く在職した著名人
宮脇英夫 宮脇英篤の息子で、かつて鳥取県庁に勤務し、農協情報連文化部長、中央会組織教育部長として全県下を講演行脚し農村指導者として著名
「ミヤジマ」「みやじま」なる票はおよそ「みやざき」と音も異なり字形も異なる。「岩崎」「イワサキ」「いわさき」などの票につき、「宮」を「岩」「いわ」と誤記する可能性は極めて少ない。ただ「高崎」なる票は「高」の字は「宮」に近似しているので、「中井」「中西」が被告の有効票であるように、原告の有効投票と解して差支えない。
同じく三につき、
第一表の(八)中24・27・28・29・36ないし41・63・64・69・70・71・83・84・86の記載内容は争わないが、原告の氏との相違が著しく、単なる誤認とは認められない。
同じく四につき
米子第一丙3 第一字目「<富>」がその字形からして「宮」の誤記であることは認めるが、「富サキ正雄雄」(関金乙3)が存在するが故に「富崎」を「宮崎」の有効投票と認めるのではない。
大山丙2 第一字目は、濃く書かれている「一」によつて抹消されている、第三、四文字は意味不明の記載であり、第五文字は「みやざき」と何ら関係のない他事記載である。
鳥取第一丙8 第二三文字は全く意味不明であり、これを「サキ」と読むことはできず、明らかに無効投票である。
東郷丙2 第一字目の「つ」なる記載は、「み」を書きかけて消すのを忘れたとはとれず、有意の他事記載と認むべきである。
羽合丙3 第二字目は明白に抹消したものであり、結局「ミ」のみの記載が残つているに過ぎぬから、右は無効投票である。
倉吉丙10 第二字目を「サ」と読むことは不可能であり、右は意味不明の記載である。仮りに原告の主張通り「ミサ」と読めるとしても、これをもつて原告の有効投票と認めることはできない。
同じく五につき、
岩美5 第一字目の「ネ」は、「みヤざき」のいずれの文字にも関係がなく、明らかに有意の他事記載である。
鹿野丙3 最上部の「キ」は抹消されていないから他事記載というべきであり、かつ「シマザキ」なる記載は、原告の姓との相違が著るしく、いずれにしても無効投票である。
鳥取第一丙11 第一字目は明らかに「×」であつて、否定的な意味を有するものであるから他意の他事記載というべきである。
倉吉丙5 第一字目は、明らかに「ワ」であり、その記載は原告の姓と何らの関連性が認められず、有意の他事記載である。
同じく六につき、
「仲田正雄」なる票が「宮崎正雄」よりも「中田吉雄」に似ていることは、一目瞭然である。
同じく七につき、
原告の主張を認める。
第三につき
「仲田正雄」が被告の有効投票であることはさきに記載したところであり、「田中正雄」の「田中」は「中田」の顛倒記載とみるべきである。
第四の(一)(二)につき
原告の主張を認める。
第五写真撮影をした投票に関する主張に対する反駁
(一) 第一の一(第一表の(一))につき
(イ) 中田義正関係
鳥取第一甲1 原告は記載内容を「中田義正」としているけれども、第四字目は「正」ではなく「王」であつて、「義王」として「ヨシオウ」と読むべきである。被告の有効投票である。
若桜甲2 最後の文字は、形状、運筆の具合からして「サ」ではなく「を」と見るべきであつて、結局「中田よしまを」となり、「よしを」の誤記として被告の有効投票となる。
岩美甲7 第四字目は「昌」ではなく、「男」をくずした文字であること、その形状からして明らかであつて、「中田義男」と記載されたものである。
(ロ) 田中たつ関係
鳥取第三甲28 「中」「田」の各第二画の肩が切れていないこと、文字の稚拙な点よりして「中田」と記載したものであつて「田中」ではない。
米子第一甲1 大山甲6 いずれも「中田」と記載されたものであることは記載自体から明白である。
(ハ) 田中嘉男関係
若桜甲14 第二字目は「な」第六字目は「お」と読むべきであつて、「たあかよし○」ではない。
(ニ) 高田勇関係
鳥取第一甲2 第一字目は「タ」ではなく、「ナ」である。すなわち選挙人は「タノ」と書きかけて後、これを抹消して「ナカダ」と記載したものであり、ただ抹消が不完全なため「け」となつているにすぎない。
鳥取第一甲8 第一字目は、その形状からいつても「な」の書きかけであつて、「た」ではなく「な」と読むべきである。
(二) 同じく二(同表の(二))につき
境港甲2 第三字目はその形状よりして「吉」をくずしたものであつて「正」ではない。
(三) 同じく(同表の(三))につき
東伯甲6 第三字目は「と」ではなく「よ」の書きかけであるから「よしを」と読むべきである。
米子第一甲12 第三字目は一見「え」のようであるが、これは「吉」と形態が類似していることから、「吉」と記載する意思で書かれたものと見るべきである。
東伯甲4 「右」は明らかに「吉」の誤字であるから「吉」と見るべきであり、従つて「田中吉雄」の記載であつて、被告の有効投票である。
鳥取第二甲13 第三字目は「ヨ」の、第四字目は「よ」の不完全記載と見るべきであるから、結局「よしお」の誤記である。
(四) 同じく四につき
鳥取第二甲27 第三字目はその形状、字の稚拙なる点よりして、「タ」を記載したものと解すべきであつて「ヲ」ではない。従つて右票は明白に被告の有効投票である。
郡家甲7 文字の稚拙な点を考慮すれば、第三字目は「を」ではなく、「タ」を書こうとしたものと解すべきであり、仮りにこれが不明であつても、第一、二字で、「なか」と明らかに読める以上、当然被告の有効投票である。
東郷甲2 文字が極めて稚拙な点から考えれば、明らかに「なカタ」と記載したものと見るべきであるる。
中山甲4 第一字目は「中」を誤つて記載したものであつて、「牛」ではないから被告の有効投票である。
倉吉甲7 第三字目は記載全体の文字の稚拙な点字の形状よりして、「川」ではなく、「タ」の不確実記載であつて、「タ」と読むべきである。
(五) 同じく五(同表の(四))につき、
鳥取第二甲 第三字目はその形状よりして「雄」であり、第四文字と合せて「雄吉」となるが、これは明らかに「吉雄」の顛倒である。
鹿野甲1 第三字目が「よ」であることは明白であり、最後の字は「お」か「を」の書きかけであつて「ち」ではない。
関金甲2 最後の字は「お」と見るべきであつて、「はるえ」の女性名を記載したものと解すべきではない。
会見甲2 第二字目を仔細に観察すれば、明らかに「田」を記載したものであつて、明白に「中田」と記載されているので、被告の有効投票である。
(六) 同じく六(同表の(五))につき
倉吉甲3 米子第三甲3 いずれも文字の稚拙な点から見れば、各第一字目は「は」「を」ではなく「な」の不完全記載と見るべきであつて、「なカた」「なかだ」である。
八東甲4 文字が稚拙であり、かつ筆勢がふるえているようであるが、記載台に凸凹があつたためとも考えられ、記載自体は明らかに「ナカタ」と読める。
(七) 第二の三(同表の(八))につき
米子第二丙5 下の二字は「ちき」と判読されるのであつて、原告の名を記載したものとは解されず、有意の他事記載である。
智頭丙4 第三、四文字は辛じて「さき」と読めるが、その余は全く意味不明であるから、原告の氏を記載したものとは解されない。
国府丙1 記載中明白なものは「ヤ」のみであり、他は全く判読不能であるから、何人の氏名を記載したものか確認し難いものである。
東郷丙5 記載は「みわこき」であるから、原告の氏名を記載したものとはいい難く、無効投票であるる。
大山丙1 記載は「マヤザキ」ではなく、「アメザマ」か或は「アカザマ」であるから無効投票であるる。
鳥取第三丙3 記載中明瞭なのは「ミ」と「フ」のみであつて、他は全く判読不能であり、原告の氏を記載したものとはいえない。
倉吉丙7 「みやこ」に続けて「さ」のような記載があり、結局「みやこさ」であつて、原告の氏を記載したものではない。
東郷丙4 記載は「ミザナ」であり、到底原告の氏を記載したものとはいい難いから無効である。
羽合丙2 第一字目は抹消されており、その余は全く判読困難であるから、結局原告の氏を記載したものとはいい難い。
智頭丙2 第三字目はその形態より見て「重」の略字であつて、内容は「みや重」となり、到底原告の有効投票とは認められない。
倉吉丙2 形状運筆より見て「宮本」或は「宮東」と記載されたものであり、原告の氏を記載したものとはいえないものである。
米子第二丙4 記載は判読不能であつて、何人の氏名を記載したものか確認し難いものである。
鳥取第一丙10 記載は「みや」ではなく「おや」と見るべきであるから、原告の氏を記載しようとしたとはいい難い。
北条丙4 第一字目は「シ」であり、第二字目は「マ」か「タ」であるから、到底原告の氏を記載したものとはいい難い。
鳥取第一丙7 記載中明瞭なのは「お」のみであり、他は判読不能といわざるを得ず、無効投票であるる。
第二、原告の有効票中に当然無効のものがあり、また無効票として処理された投票中に当然被告の有効票と判定すべきものがあり、さらに票数の計算に誤りがあつて、これらを加減すれば被告の得票数は原告のそれより多数となり、被告の当選となる。
(甲) 調書記載の投票に関する主張
一、誤つて無効票として処理された被告の有効投票に左の一票がある。
ナカダ 西伯 1一
二、無効として処理された投票中、被告の有効投票と判定すべきものは、左のとおりである。
(一) なか 国府2一 米子第一2一 羽合1一 中 福部4一 智頭3二 合計六票
右はいずれも「なかた」「中田」の書きかけ、すなわち不完全記載または「た」「田」の脱字と考えられる。
(二) ナカタニ 国府5一 境港8一 鳥取第三3一 倉吉7一 中谷 福部2一 鳥取第三4一 米子第三20一 倉吉14一 中山5一 中たに 境港11一 なかたに 大山4一 合計一一票
右はいずれも被告の姓に酷似し「田」と「谷」と観念連合がある上「なかたに」の「なかた」より一般的であるため、誤記したものであり、「に」を余字記載と見るべきでない。
(三) 中原吉雄 河原 1一 米子第三 18一 中原義雄 米子第三 5一 ヨシダヨシヲ 米子第一 5一 よしだよしお 倉吉 11一 吉田吉雄 日野 9一 中村吉雄 気高 11一 中村ヨシヲ 鳥取第一 2一 大田よしお 智頭 12一 中西よしお 米子第一 7一 中谷吉雄 米子第二 3一 石田吉雄 境港 3一 山田吉雄 鳥取第一 1一 同計一三票
右はいずれも、被告の姓名中主として姓の一部が誤記されたもので、これを全体としてみれば、被告え投票する意思のあることを記載から判断しうる。
(四) 別紙第二表の(一)記載の六二票は、いずれも被告の姓名のうち、姓のすべてと、名のうちの最後とを正しく記載しており、被告を投票した意思を確認しうる。我国においては名よりも姓をもつて人を呼称し、識別しているのが通常であり、本件選挙において、原被告は、各自その姓を呼称し運動したので、選挙民が両候補者の姓をもつて認識の基準としていたことは容易に察せられる。原告の姓「宮崎」と被告の姓「中田」には共通性がなく間違えられることはない。「中田正雄」と記載された投票は全体として見れば「宮崎正雄」とは殆んど近似性がなく「中田吉雄」に近似していると認められるから、両者の混記ではなく、被告の有効投票と解すべきである。
(五) 同表の(二)記載の二七票は、いずれも「中田吉雄」「ナカタヨシオ」の姓の二字を顛倒したものであつて、単なる誤記であり、当然被告の有効投票である。
(六) 同表の(三)記載の二四〇票は、いずれも「中田」「なかた」を誤つて顛倒し「田中」「たなか」と記載したものであり、被告を投票する意思を有することが十分推認される。およそ選挙制度をとる以上、有権者がなした投票は、できうる限り有効な意思をもつて候補者に投じられたものと解すべきであるが、本件選挙の候補者は中田、宮崎、米原、小田の四名であつて、「田中」「たなか」に近似するのは中田以外には存在しない。
(七) 左記三票は、被告の氏「中田」を顛倒し「田中」と記載した上に、被告の名の一部を誤つて記載したものであつて、被告に投票する意思を確認しうるから、被告の有効投票と判定すべきである。
田中よしはる 岩美 5一 田中よを 中山 6一 田中一夫 鹿野 2一
(八) 長田 青谷 2一 永田 鳥取第二 18一 米子第三 6一 倉吉 12二 赤碕 3一 合計六票は通常「ながた」と発言されるが、これは「なかた」と酷似しており、殊に濁音は明瞭に発言されない場合もしばしば存するのであつて、他に類似の姓をもつ候補者の存しない以上被告の有効投票と解される。
(九) ヨシダ 赤碕 8一 よしだ 会見 3一 吉田 用瀬 4一 西伯 5一 米子第三 10二 倉吉 5一 東伯 5一 赤碕 11一 淀江 5一 合計一〇票
右は被告の姓のうち「中」と名のうち「吉」「よし」を混同し、顛倒したものであつて、被告を支持する意思を確認しうる。
(一〇) 同表の(四)記載の八七票のうち、中西の「西」は中田の「田」と字体が酷似している、すなわち田のたて棒を一本加えると西となり、誤り易い。のみならず「中田」の中心をなす上の字の「中」が共通しているのであつて、他に類似の候補者の存しない限り被告の有効投票とすべきである。
中川の「川」は中田の「田」と同様に簡単な字であるのみならず、「川」と「田」は水との観念連合をもつている。中井の「井」は字形の上からも「田」に類似するのみならず密接な観念連合がある。「なかお」の「お」は「なかた」の「た」と文字形上の類似性をもち誤記され易い。「なかの」の「の」は「なかた」の「た」と発言が似ている上に「野」と「田」の観念連合があり誤記とみられる。「中山」の「山」は「田」と字が簡単で似ており、山に横棒を二本加えると田になる。「中上」の「上」は字画からして「中田」の「田」と類似しており誤記したものと解される。いずれも「中西」の場合と同じくこれらの姓に類似の候補者のない限り被告の有効投票とすべきである。
(一一) 中田憲男 岩美 3一 中田トシオ 米子第一 17一 中田次男 大栄 3一 中田義正 鳥取第二 16一 中田義政 鳥取第二 15一 中田仲夫 気高 2一 中田義一 鳥取第二 7一 仲田雄二 米子第一 14一 中田てつお 日野 5一 合計九票
は被告の姓「中田」を正確に記載し、名の一部に誤りがあるが、候補者の氏名の中心をなす姓が完全に記載されている以上名の一部に誤読誤記があつても、これを全体としてみれば、「中田吉雄」に投票する意思であることを確認しうるから、被告の有効投票である。
(一二) シ×××ナカタ 八東 1一
右は点字の投票であつて、これを無効とした理由は「×××」を他事記載であるとしたものと推測されるところ、通常点字において字を消すときは右記号を使用するのであり、始めに誤つて「シ」記号を書いたためこれを抹消し、あらためて「ナカタ」の記号を打つたものと解される。「×××」は他事記載ではない。
(一三) 中田・中田)倉吉 17一 日野 11二 中田吉雄・中田吉雄)倉吉 18二 仲田・中田)日野 10一 なかた・なかた)倉吉 16一 吉田・中田)米子第三 12一 合計八票
右は被告の姓またはこれに酷似したものを二重に記載したもので、その記載が意思の分裂ないし有意の他事記載とみられるものであれば格別、単に二重に記載したことのみで無効となるものではない。吉田・中田)の票は始めに「中田吉雄」を誤つて「吉田」と記載しその誤りに気付いてこれを抹消することなく、裏面に「中田」と記載したものであり被告に投票する意思を確認しうるから、被告の有効投票である。
(一四) 同表の(五)記載の四八票はいずれも被告の姓を正確に記載しており、被告を支持する意思を確認しうる。もつとも名が違つているが前記のとおり候補者の姓を選挙民に周知徹底させるように選挙運動を行なつたため、名をおぼろ気にしか記憶されておらず誤記されたものである。
(一五) 左記二票は混記ではなく、被告に対する有効投票である。他に「小田スエ」なる候補者がいるけれども、同人は女性である上「中」と「小」とは字義からも字形からも混同されやすく、これを全体として見れば「中田吉雄」「なかたよしお」を支持する意図であることは十分確認しうる。
をだよしお 米子第三 4一 小田よしお 倉吉 20一 計二票
三、原告の有効投票とされているもののうち、被告の有効投票と判定すべきものは左のとおり一三票である。
中田吉雄 鳥取第三 2二 東郷 1二 中田 東郷 14二 東伯 5一 溝口 5一 なかだよしお 鳥取第二 10一 東郷 6一 なかだよしを 西伯 8一 青谷 23一 なかたよしヲ 名和 9一 合計一三票
四、原告の有効投票とされているもののうち、無効投票と判定すべきものは左のとおりである。
(一) 氏名の確認し難いもの
(1) 岩崎 若桜 7一 鳥取第三 12一 西伯 1二 米子第三 30一 いわざき 名和 1一 山崎 米子第三 11二 東伯 9一 土崎 名和 3一 ヲカザキ 名和 8一 まざき 関金 3一 とみざき 倉吉 7一 合計一三票
右はいずれも「みやざき」の「宮」「みや」とは全く関係のない字が記載されている。「崎」「さき」のみが符合しているとしても、下に「さき」がつく姓は無数に存在し、かつ上半分が原告の姓と何らの関係のない文字が記載されている以上、投票の記載よりして原告を支持することは解されず、候補者でないものの氏名を記載したものとして無効とすべきである。
(2) 宮脇 鳥取第三 4二 青谷 10一 三朝 17一 淀江 3一 宮嶋 鹿野 2一 赤碕 8一 日野 6一 宮城 米子第三 5一 合計九票
右はいずれも「宮崎の「崎」とは全く関係のない文字が記載されている。「崎」を誤つて書くことはありえても、それより難しい字である「脇」「嶋」「城」を正確にかつ達筆で記載している以上、これを「崎」の誤記と解することはできず、候補者でないものを投票したものとして無効とすべきである。
(3) 米田正雄 三朝 18一 岩垣正雄 三朝 19一 合計二票
右は原告の氏「宮崎」とは全く別の姓が記載されているので、名が原告のそれとたまたま一致していても、原告を支持する票とは到底考えられない。
(4) 宮崎石谷 郡家 3一 宮崎重政 羽合 3一 合計二票
いずれも原告の名を記載したものとは認められず、かえつて他人の姓を記載したものと解され、投票意思が分裂して二人以上の氏名を記載したものであるから無効である。
(5) ミザヤ 羽合 5一
右は「ミヤザキ」の脱字ないし誤記とは解することができず、候補者でないものを投票したものとして無効である。
(6) めやざに 米子第三 21一 セヤザケマヤミ 鳥取第一 5一 合計二票
右は点字投票であり、盲人は自己の意思を点字によつて正確に表現することができるのであつて、およそ点字によつて投票しようとするものが、原告の氏名を記載するつもりで、かくの如く全然異つた記載をするはずがない。無効票とすべきである。
(二) 候補者以外の氏名を記載したもの
石田次男 国府 20一 大倉精一 北条 7一 合計二票
(三) 他事記載したもの
(1) 宮崎君へ 鳥取第三 20二
右の「へ」が他事記載に当る。
(2) みやざき 鳥取第一 6一
右は殊更筆、鉛筆等の用具を用いないで、何か硬い物体で辛じて判読しうるように色素を用いないで、氏名を記載したものであるから、記載なきものと認めるか、あるいは通常ならざる意思をもつて投票したものと解する他なく、無効である。
乙 写真に撮影した投票に関する主張
一、原告の有効投票とされている投票(写真)中無効となるべき投票(ただし(二)(24)東郷乙13は被告の有効投票と主張するもの)
(一) 有意の他事記載のあるものは左のとおりである。
(1) 国府乙19 氏名の右側に三つの点があり「正雄」の「正」と「雄」の中間にあるもの。
(2) 福部乙12 欄外にある「2」とあるのは「2」と思われるが、候補者の氏名と関係のないこと、その位置形状からみて、有意の他事記載である。
(3) 岩美乙3 「みやざき」の「き」の左側に記載されている「は」の文字。
(4) 郡家乙8 原告の氏名のほかに記載されている「石谷」の文字。
(5) 河原乙8 「ミ」の左下に記載されている「ー」の記号。
(6) 若桜乙3 末尾の「ニ」なる記載。
(7) 若桜乙7 第三字目の記号。
(8) 智頭乙14 第一字目の「ゆ」の記号。
(9) 境港乙1 「宮崎正雄」の各文字の右側にある計四つの点。
(10) 境港乙16 第四字目「雄」の最後の字劃が右欄外に長く延びた後大きく上にはねている記載。
(11) 気高乙9 第四字目「ん」の字に余分の字画を加えて「」とした記載。
(12) 鹿野乙1 「つ」の字に記載せられた不自然な二つの点。
(13) 鳥取第一乙5 「宮崎正」の右側から「雄」の右上にある意味不明の記載。
(14) 鳥取第一乙15 「宮崎」なる字の周囲を線にて囲んだもの。
(15) 鳥取第一乙23 「サ」の右側の記載。
(16) 鳥取第二乙1 「宮崎」「ミヤザキ」の各下に各「ー」の記載。
(17) 鳥取第二乙5 「宮崎」の下に長く「ー」の記載。
(18) 鳥取第二乙11 「宮崎」の上下に「( )」の記載。
(19) 鳥取第三乙21 「ミ」の左上の記載。
(20) 鳥取第三乙22 「宮崎」なる文字を殊更に二重文字で記載したもの。
(21) 鳥取第三乙28 「ミ」と「マ」の間にある「一」の記載。
(22) 米子第三乙11 最上部の「一」の記載。
(23) 東郷乙14 「ミヤザキ」の上下に付した「( )」の記載。
(24) 東郷乙21 「雄」の字の右下部の「ダラ」の記載。
(25) 三朝乙10 冒頭の「と」の記載。
(26) 倉吉乙3 最後の「お」の記載。
(27) 倉吉乙5 欄外の「全国区トリ」の記載。
(28) 倉吉乙8 最上部の意味不明の記載。
(29) 関金乙5 最上部の記載。
(30) 淀江乙6 「崎雄」の右側にある「トス」の記載。
(二) その他の理由によるもの
(1) 岩美乙13 「みやぢま」なる記載は原告の氏を記載したものではない。
(2) 船岡乙6 名は「よし子」と女性の名前であるので、男性の候補者である原告の氏名を記載したものとはいい難い。
(3) 用瀬乙2 記載は「宮場」であり、原告の姓との相違が著しく、原告の氏名を記載したものとはいい難い。
(4) 用瀬乙5 第二字目は全く判読困難であり、かつ、その形状よりしても「宮崎」と記載したものとは認め難い。
(5) 佐治乙4 「ミカカキアナヲ」と記載したものと認められ、姓名ともに原告の氏名とは著しく相違するので、原告の氏名を記載したものとはいい難い。
(6) 佐治乙6 片仮名で明白に「シマザキ」と記載され原告の姓とは著しく相違しており、原告以外の氏を記載したものである。
(7) 智頭乙17 「メヤザケ」と記載してあり、原告の姓を誤記したものとは認められない。
(8) 境港乙9 「みやご」と記載されており、原告の姓とは全く相違し、かつ「ご」は原告の名前の中にもない「音」であるから、原告の氏名を記載したものとはいい難い。
(9) 境港乙10 「みやきき信雄」と判読されるが、姓も名も原告の氏名とは異るので到底原告の氏名を記載したものとはいい難い。
(10) 気高乙4 「宮嶋」と読めるが、原告の姓と全く相違するから、原告以外の者の氏を記載したものである。
(11) 鳥取第一乙8 「みや」なる文字は極めて達筆で記載されているにもかかわらず、「や」に続けて全く意味不明の記載をしているのは不真面目であり、原告の氏を記載したものとはいい難い。
(12) 鳥取第一乙36 第二字目はその形状よりして明らかに「嶋」をくずしたものであり、「宮嶋」は原告の姓とは全く相違するから、原告以外のものの氏名を記載したものである。
(13) 鳥取第二乙10 欄外に「石谷」との記載があり、このように二つの氏名が併記されているのは何人に投票したか確認し難い投票である。
(14) 鳥取第二乙23 「高橋正雄」と判読され、その姓が原告と全く異るから、原告以外のものの氏名を記載したものである。
(15) 鳥取第二乙26 記載は明白に「宮端」であり、原告の姓と著るしく相違するから、原告以外のものの氏名を記載したものである。
(16) 鳥取第三乙16 記載は明白に「やまざき」であり原告の姓とは全く相違するから、原告以外のものの氏名を記載したものである。
(17) 鳥取第三乙18 記載は「みぎき」であつて、原告の姓と相違すること甚だしく、到底原告の氏名を記載したものとはいい難い。
(18) 鳥取第三乙23 第一字目は「ミ」、第四字目は「キ」であつて、他は意味不明であり、全体として到底原告の氏名を記載したものとはいい難い。
(19) 鳥取第三乙37 明白に判読できるのは第一字目の「ミ」のみであり、第四字目は辛うじて「キ」と読めるが、他は全く意味不明であり、原告の氏名を記載したものとは到底認められない。
(20) 鳥取第三乙39 仔細に観察すると「のもと」と記載した上に、これを抹消しないで「ざき」と記載されていると認められる。従つて右投票は何人に投票したかを確認し難いものである。
(21) 西伯乙4 記載は「みやし」と読めるが、原告の姓と全く相違するので、原告の氏名を記載したものとはいい難い。
(22) 青谷乙3 第一、第四文字は判読不能であり、全体として原告の氏名を記載したものとは認められず、無効である。
(23) 青谷乙6 記載内容は「みやずま」であり、原告の姓と著るしく相違するから、原告以外のものの氏名を記載したものである。
(24) 東郷乙13 如何に判読するも原告の姓を記載したものとは認められず、第一字目はある字を書きかけて中止したものであり、他の二字はその形体からしてむしろ「中田」と被告の姓を記載したものと認められるので、被告に対する有効投票である。
(25) 東伯乙8 記載は「雄」の字が看取されるのみにて、他は全く何を記載したか不明である。
(26) 会見乙1 記載は明白に「三崎」であつて、原告以外のものの氏名を記載したものである。
(27) 会見乙2 第四字目は判読不可能であり、結局「みさざ」と判読されるが、右は原告の姓と全く相違しており原告の氏名を記載したものとはいい難い。
(28) 淀江乙1
(29) 淀江乙5 右二票は名の部分はいずれも「[禾尺]一郎」となつているが、原告の名が二字であるのに対し三字であつて、その相違が甚だしいので原告の氏名を記載したものとはいい難く無効と解すべきである。仮りに右の点はしばらく措くとしても、両者は全く同一の筆跡であり同様な誤つた名前を記載していることから、同一人が記載したことは明白であり、しかも代理投票による投票であれば、右のように全く異つた名を記載することはありえないから、右は同一人が二票の投票をしたものであつて、少くともその中一票は候補者の氏名を自書しないものとして無効というべきである。
(30) 淀江乙4 「宮ざきため江」と記載されており、「ため江」は女性に対する投票であるから原告以外のものの氏名を記載したものというべきである。
(31) 淀江乙9 「みやざき」の記載の外、右上に「中」の記載があり、これは「中田」の「中」を記載したものであり明らかに無効である。
(32) 大山乙5 第一字目は「は」と判読され、結局「はいやさき」と読めるが右は原告の姓ではなく、何人の氏名を記載したか確認し難いものである。
(33) 日野乙3 片仮名の「ミ」らしき字が判読できるのみで、他は全く意味不明のものである。
(34) 日野乙7 「ゆのさき」と判読できるが、原告の姓とは全く相違し、何人の氏名を記載したか確認し難いものである。
(35) 日野乙9 第二字目は意味不明であり「崎」でないことは明白であり、形状が著るしく相違しているので「崎」の誤字とも考えられないから、第一字の「宮」と併せても原告の姓とはいい難く、結局原告以外のものの氏名を記載したものである。
二、無効とされている投票中被告の有効投票と判定さるべき投票(写真)
(1) 国府丁1 文字の稚拙な状態からも「なかた」を「なかお」と誤記したものである。
(2) 国府丁2 明白に「中田」と記載されており、第三字目の「の」は「田」の第五画目の記載がないためやや下に下つたと見られ、また文字の稚拙な点より考えて、右は被告の名を書けずに中止したため、右のようになつたものと考えられ、いずれにしても有意の他事記載ではない。
(3) 岩美丁1 片仮名の「ナタ」と記載したものであり、「カ」の脱字と解すべく、文字の稚拙な点から考えても明白に被告の有効投票である。
(4) 岩美丁2 文字の稚拙な点から見て第一字目の「甲」は「中田」の「中」を誤つて記載したものである。
(5) 岩美丁3 記載中に「中田」が併記されているが、かかる併記は有効である。
(6) 郡家丁1 平仮名で「なか」と記載してあり、「なかた」の「た」を脱字した不完全記載であつて、被告を指していることが明白である。
(7) 郡家丁2 「中田」の左側の「八 」なる記載は、その位置形状から見て、誤つて他の字を書きかけ、消さずに中止したものか「公認候補」の「公」を書きかけたともとれ、有意の他事記載ではない。
(8) 郡家丁3 文字が稚拙であり、しかも片仮名の「タ」と「カ」はその形が似通つているので「ダ」を「ガ」と誤記したものである。
(9) 郡家丁4 第三字目は「た」第四字目は「よしお」の「よ」と判読でき、「よ」の左側の点は、有意とは認められない。
(10) 船岡丁1 「中田」と記載しながら名を誤つて記載しているが姓が正しく記載されている以上、被告の有効投票と解すべきである。
(11) 河原丁1 第二字目の「口」は「田」の第三、四画すなわち「十」を書きおとしたか、「田」を「口」と誤記したもので、その記載は「中田」の意である。
(12) 八東丁1 名が被告と異なつているが、姓が符合している以上被告の有効投票と解すべきである。
(13) 佐治丁1 「なか」を記載し、他は「た」および「よしお」を書こうとして、書きえなかつたもので、「なか」が明らかである以上、被告に投票する意思のあることを充分推測できる。
(14) 智頭丁1 「中田直美」と記したものと解せられるが、姓が符合している以上、右は被告の有効投票と解すべきである。
(15) 智頭丁2 第一字目は「な」第二字目は「か」第三字目は「よ」で、「なかよ」と判読できる。従つて「なかたよしお」の「た」と名の一部を書きえなかつたものであるが、全体からみて、被告に投票しようとした意思が推測できる。
(16) 智頭丁3 第二字目は「中」の字を極めて稚拙に記したものか片仮名の「タ」であり、そうすれば「ナ中」あるいは「ナタ」であるから、いずれにしても被告の姓を指すことが明らかである。
(17) 智頭丁4 第一字目は片仮名の「ナ」か「タ」の不完全記載、第二字目は「カ」第三字目は「ナ」か「タ」の不完全記載であり、その右側の記載は濁点と解せられ、第四字目は「ヨ」の不完全記載、第五字目は平仮名の「し」であつて、全体として「ナカタヨし」あるいは「タカナヨシ」と読めるから、被告の姓と名の一部を記載したものとして、被告の有効投票である。
(18) 智頭丁5 用紙の一部が切損しているが、「中」の字のある部分まで破損しているところを見れば、開票の際に破損したものかあるいは選挙人が投票箱に入れるため折畳もうとした際、破損したものと解され、右破損が記号、または符号の意味においてなされたものと認めることは到底できない。
(19) 智頭丁6 第四字目は「雄」の誤記であり、「中西吉雄」となり被告の氏名の四字中三字まで符合しているので、被告に対する有効投票である。
(20) 智頭丁7 第三字目はその形状よりして平仮名の「ら」であり、「ら」と「だ」は発音が近似しているので、「なから」は「なかだ」の誤記である。
(21) 智頭丁10 記載は「中田カく」とあるが、姓が符合している以上被告の有効投票と解すべきである。
(22) 智頭丁11 片仮名で「ナカ」と記載されたものであることは明白であり、本件選挙における候補者中には他に「ナカ」のつく氏名のものは存在しないから、明らかに被告の有効投票である。
(23) 境港丁1 文字の稚拙な点よりして第二字目は片仮名の「カ」第三字目は同じく「ダ」の各不完全記載であり、全体として文字の稚拙な状況から、選挙人は「ナカダ」と記載する意思で右のように記載したことが明白に看取されるから、被告の有効投票と解すべきである。
(24) 境港丁2 記載に「たかなかた」とあるのは「なかた」の「なか」を「たか」と誤つて記載し、消さずにさらに「なかた」と記載したと解され「たか」は他事記載ではない。
(25) 境港丁3 第二字目の「」は明らかに「中」の誤記であり、「田中」の意である。
(26) 境港丁4 第一字目は「中」の第四画を書き忘れた不完全記載であつて、「中田」と記載する意思であることは明白である。
(27) 境港丁5 仔細に観察すると片仮名の「ナガ」に続いて、片仮名の「タ」と思われる記載があり、結局「ナガタ」と稚拙な文字で記載したものであるから、被告の有効投票と解すべきである。
(28) 境港丁6 「ナカク」と記載されており「ク」は「タ」の誤記である。
(29) 境港丁10 「中」の次の字は漢字の「田」をくずしたものか、変体仮名の「」の不完全記載であり、最上部の記載は誤つた記載を抹消したものであつて他事記載ではない。
(30) 鳥取第一丁5
(31) 鳥取第一丁6 いずれも「田中」であるが「中田」の誤記である。
(32) 鳥取第一丁7 第一字目は「中」であり、第二字目は「田」の不完全記載あるいは「ナカタ」の「ナ」を重複して書いたものとも解され、被告の有効投票である。
(33) 鳥取第一丁8 第二字目はその形状から「田」の誤記ともいうべきであるから、第一字と合せて「中田」と解される。
(34) 鳥取第一丁9 第一字目は「吉」と解され、第二字目は不明であつても、被告の名「吉雄」の「吉」が記載されており、他にそのような名のものが存在しない以上、被告の有効投票と解すべきである。
(35) 鳥取第二丁1 記載の意思は「たなか」であるから、「なかた」の誤記として被告の有効投票である。
(36) 鳥取第二丁2 第四字目は「雄」の不完全記載であつて、全体として「田中吉雄」であり、「中田吉雄」の誤記である。
(37) 鳥取第二丁3 片仮名の「ナタ」と記載され、「ナカタ」の「カ」を脱字したものである。
(38) 鳥取第二丁4 「長田」なる記載であるが、これは「なかた」の「か」を「が」と濁つて記憶し、その音に従つて表現したものであるから、被告の姓を表示したものとして有効である。
(39) 鳥取第二丁6 「かなだ」と記載されているが「なかだ」の「なか」を顛倒したものであつて、「なかだ」の誤記である。
(40) 鳥取第二丁8 記載の「たかた」は発音および形体の類似性からして、明白に「なかた」の誤記である。
(41) 鳥取第二丁9 第一字目は「な」の不完全記載、第三字目は「だ」であるから結局「なだ」となり「なかだ」の誤記と解すべきである。
(42) 鳥取第三丁3 「なか」と記載され「中田」の「中」を表示するものであり、他にそのような字または同音を含む候補者が存在しないから、右投票は被告の有効投票である。
(43) 西伯丁1 第一字目は「中」を、第二字目は不完全ではあるが「田」を記載したものと認められる。
(44) 西伯丁2 第一字目は平仮名の「な」を意味するものであるから、全体は「なたさま」なる記載であり、「さま」は敬称であるから、結局「なかた」の「か」を一字脱字したものである。
(45) 米子第一丁2 片仮名の「ナガ」であり、「ナカダ」の「ナカ」を意味し「カ」に濁点が附せられているのは単なる誤記と解すべきである。
(46) 米子第一丁5
(47) 米子第一丁6 全体の印象よりして片仮名を辛じて書ける選挙人による投票であつて、第一字目は「ナ」の第二画を反対に右側に曲げたもので「ナ」を意味し、第三字目は「ダ」の第三画を書き落したもので「ダ」を意味することは明らかであるから、右は「ナカダ」の意である。
(48) 米子第一丁7 記載中「中田」が被告の姓であることは明白であり、姓が符合している以上、被告の有効投票と解すべきである。
(49) 米子第一丁8 記載は「中田」の「中」であり、その下の不鮮明な記載は次の字を書くことができず、鉛筆が走つたにすぎないものと思われ、有意の記載とはいえない。
(50) 米子第一丁10 「中」を記載したものであつて、「中田」の「中」であるから、被告の有効投票である。
(51) 米子第一丁13 第一字目は明らかに「中」であり、第二字目はその形状よりして「田」の誤記と認められ、結局「中田」となる。
(52) 米子第一丁14 「なかだ」を誤つて記載したか、「たかだ」と感違いしたかのいずれかであるから、明らかに被告の姓を意味する。
(53) 米子第一丁15 記載中「中田」の下方にある記載は、その位置形状からして、被告の名を忘れたため、他意のない記載をしたものである。
(54) 米子第一丁16 「ナ」の左上の記載はその形状からしてある文字を書きかけ中止したもので、他意ある記載ではなく、第三字目はその稚拙な筆の運びより「タ」を記載したものと認められるから、右票は「ナカダ」の意である。
(55) 米子第二丁1 第一字目は「な」の字の「」を忘れた記載であるから「な」と解すべく、第四字目はその形状、筆勢よりして、平仮名の「よ」かあるいは「吉」の字をくずしたものと認められるから、明らかに被告の姓と名の一部を記載したものとして、被告の有効投票である。
(56) 米子第二丁3
(57) 同丁8
(58) 同丁9 各記載たる「タナか」「たなか」あるいは「田中」は、いずれも「中田」を「田中」と誤つて記載したものである。
(59) 米子第二丁7 「中田」は被告の姓であるから、名が異つても姓が符合している以上、被告の有効投票である。
(60) 米子第二丁10 第一字目は「な」であり、第二字目は稚拙であるが「た」と判読でき、「か」を脱字、名の「よしお」を書くことができず「ー」を書いたものである。
(61) 米子第二丁11 上の二字は「ナタ」あるいは「ナカ」であり、第三字目は「タ」の不完全記載であるから、その意味は「ナタタ」か「ナカタ」であつて、被告の姓の不完全記載である。
(62) 米子第二丁13 第一字目は平仮名の「な」、第二字目は一字画不足しているが「か」であつて、「なか」と読め「た」の脱字である。
(63) 米子第二丁14 第一字目は変体仮名の「」、第二字目は片仮名の「タ」であつて、「カタ」の意である、「ナカタ」のナを脱漏しているが、被告の姓を記載しようとしたことが明らかである。
(64) 米子第三丁3 第一字目は片仮名の「ナ」であり、第二字目は「田」の不完全記載であつて、「ナ田」となるが、これは「ナカ田」の不完全記載である。
(65) 米子第三丁4 第一字目は正確ではないが変体仮名の「」であり第二字目は同じく「」の初筆から続けて「の」と記載したものであるから、「」の意であつて、被告の姓を意味する。
(66) 米子第三丁5 平仮名で「なか」と記載したものと認められる。
(67) 米子第三丁6 明らかに「中」であつて、被告の姓を指していること明白である。
(68) 米子第三丁7 非常に稚拙な文字であるが「中田」と記載したものと認められる。
(69) 米子第三丁10
(70) 同丁11 丁10は片仮名の「タナカ」、丁11は平仮名の「たなか」であるが、被告の姓「中田」を「田中」と誤つて記載したものである。
(71) 青谷丁1 「中田」を誤つて「中中」と記載したものであり、その下の意味不明の記載は被告の名を失念したか、あるいは文字を書けないため不明瞭な記載となつたもので、有意の他事記載ではない。
(72) 青谷丁2 第一字目は片仮名のナであり、不完全ではあるが第二字目は「カ」第三字目は「タ」を意味することは、全体の字の稚拙であること字の形状、筆勢から明白であつて、結局「ナカタ」となる。
(73) 青谷丁3 記載の前半は「中タ」であり、第三字目は不明であるが、第四字目は片仮名の「ヲ」の誤記と思われるので、結局被告の姓と名の一部を記載したものである。
(74) 青谷丁5 文字の形状、筆勢より判断して「ナカ」あるいは「ナタ」と認められ、被告の姓を指すものである。
(75) 青谷丁6 「田中」は「中田」の誤記であり、その下の「ー」は名を失念したか、書けぬため筆勢の赴くところ記されたものである。
(76) 青谷丁7 「中」の字をくずして書こうとしたものと認められる。
(77) 青谷丁8 明らかに「なか」と記したものと認められる。
(78) 青谷丁9 第一字目は明白に「中」であり、これに次ぐ記載は次の字を書けないためであるから、有意の他事記載とすべきではない。
(79) 羽合丁1 第一字目はその稚拙な点と全体の形状より見て、平仮名の「な」を記載しようとしたものであるから、「な」と解すべく、他の二字と合せて「なかた」となる。
(80) 羽合丁2 姓が被告に符合しているので、被告の有効投票である。
(81) 羽合丁3 第一字目はその形状、筆勢よりして「中」を書こうとして、何らかの理由により手が思うように動かずして、第四画が左に偏つたため「口」のように見えるが、右は明らかに「中」であり、下の字と合せて「中田」となる。
(82) 羽合丁5 片仮名にて「カタ」と記載されているものであるから、「ナカタ」の不完全記載である。
(83) 東郷丁1 片仮名で「ナダ」と記載したものであつて、「ナカダ」の不完全記載である。
(84) 東郷丁3 選挙人が被告の姓を「中田」か「田中」か迷つた結果であつて、被告に投票する意思であつたことが明白である。
(85) 東郷丁4 明白に「中田」と記載され、さらに「タカナ」とあるが、これは「ナカタ」を顛倒して記載したものであつて、誤記と考える。
(86) 三朝丁1 文字の稚拙な点から考えて第一字目と第二字目は平仮名の「な」を「ナ」と「よ」とを離して記載したもので、「な」と認められ、その余は平仮名の「かた」であるから結局「なかた」である。
(87) 三朝丁2 第一字目は変体仮名の「」の不完全記載であり、第二字目は明白に「だ」であり、結局「なかだ」の「か」を脱漏したものである。
(88) 三朝丁3 「田中」は「中田」の誤記である。
(89) 三朝丁4 文字の稚拙な状況から考え、「フ」の部分は片仮名の「ナ」、「」は片仮名の「ガ」のそれぞれ不完全記載、第三字目は明白に「タ」であり、結局「ナガタ」となる。「ナカダ」の第二字目を濁つて発音することは、しばしばありうることであるから、右は原告の姓を記載したものとして有効である。
(90) 三朝丁5 平仮名片仮名で「ナカタ」と書こうと努力したが、文字にならず、あらためて左側にようやく「中田」と書いたものであつて、右側の記載は他事記載ではない。
(91) 倉吉丁1 第二字目は「中」の不完全記載であり、第一字と合せて「た中」となり、被告の姓を「田中」と認識して記載したものである。
(92) 倉吉丁2 稚拙ではあるが第一字目は明らかに「中」であり、第二字目は「田」を記載しようとして手がふるえたため、そのような記載になつたものである。
(93) 倉吉丁3 第一字目は変体仮名の「」を記載しようとしたことは、その形状からして明らかでありり、第二字の「た」と併せて「た」となり、被告の姓のうち「か」を脱字したものである。
(94) 倉吉丁5 稚拙ではあるが、いずれも平仮名で第一字目は「な」を第二字目は「か」を第三字目は「だ」を記載しようとしたものである。
(95) 倉吉丁6 第三字目はその形状よりして、片仮名の「ヲ」を記載しようとしたものと認められ、結局「ヨシヲ」の意であつて、被告の名を記載したものである。
(96) 倉吉丁7 「たかた」なる記載は「なかた」の誤記である。
(97) 倉吉丁8 左側に「中田」の姓を誤認して「田中」と記載しかけて、その誤りに気付き、右側に「中田」と記すつもりで「田」が不完全な記載になつたものである。
(98) 倉吉丁9 第一字目はその形状よりして、片仮名の「ナ」に誤つて余分の字画を左側に附してしまつたものか、あるいは平仮名の「な」の誤字であるから、結局「なかたに」の記載であり、「なかた」の誤記である。
(99) 倉吉丁10 明白に「中」と記載されているものであつて、被告の姓の第一字が記載されており有効投票である。
(100) 倉吉丁11 「た」の左側の「1」なる記載は、その位置形状からして、誤つて附せられたものであつて、有意の他事記載ではない。明白に「なた」とあるので「なかた」の「か」を脱字したものである。
(101) 倉吉丁12 第一字目は片仮名の「ナ」、第二字目は平仮名の「か」、第三字目はその形状よりして変体仮名「」を記載したもので、下の二字は「さん」と読め、第二字目の「か」は抹消されていると見るべきであるから、結局「なさん」と敬称を附して記載したものである。
(102) 倉吉丁13 第一字目はその形状よりして「中」を記載しようとしたもの、第二字目は変体仮名の「」であつて、結局「中」であるが、これは被告の姓の誤記である。
(103) 関金丁1 第一字目はその形状よりして「中」を、第二字目は同じく「田」を意味することが明瞭であるから「中田」となる。
(104) 関金丁2 最上部の記載は、その形状よりして「中」であり、その余は、他の字を記することができぬための他意のない記載であり、「中」の記載がある以上、被告の有効投票である。
(105) 関金丁3 第一字目は漢字の「中」、第二字目は同じく「田」であり、その余の記載は、その位置から考えても被告の名を失念したか、その字を記せないための他意のない記載である。
(106) 北条丁1 第三字目の横線をみると、両端が上にはねているので、「中」の字に近い形となつている。選挙人が漢字の知識が不十分なため、「中」の字を記載しようと努力した結果、「十」のような形の字を二度記載し、最後に辛うじて「中」に近い字を記載したものであつて、「中」と判読すべきである。
(107) 北条丁2 第二字目は「中」を記載しようとして、第四画目の記載を失念したものであり、結局投票は「田中」の意であり「中田」の誤記である。
(108) 大栄丁1 被告の姓を誤つて「田中」と記載した後、その誤りに気付き「中田」と読ませるために、返り点を打つたものである。
(109) 大栄丁2 第一字目は「中」の草書である「」を記すつもりであり、第二字目は明らかに「田」であり、結局「中田」となる。
(110) 東伯丁1 左側の二本の線は、誤つて筆が滑つたものであり、何ら他意のある記載ではない。
(111) 東伯丁2 第一字目は「中」の草書体であり、第二字目は「田」を書きかけたものとみるべきである。
(112) 東伯丁3 「申田」と読めるが、「申」は「中」の誤記である。
(113) 赤碕丁3 片仮名にて「カタシ」と記載したものと認められるが、これは「ナカタヨシヲ」のうち「ナ」「ヨ」「ヲ」を脱漏したものであつて、意味するところは被告の氏名である。
(114) 赤碕丁2 第一字目は片仮名の「ナ」、第二、三字目は平仮名で「かば」と記載したものであるが、「ば」は「だ」と母音が共通であり、文字の形態においても類似しているから、右は明らかに被告の姓を「なかば」と誤つて記載したものである。
(115) 赤碕丁3 「たなか」の記載は、被告の姓を「田中」と誤認して記載したものである。
(116) 会見丁1 形状運筆の状況から観察すると第一字目は、漢字の「中」を記載したものであり、第二字目は片仮名の「タ」を記載したものと判読でき、「中タ」と被告の姓を記載したものである。
(117) 岸本丁1 第一、二文字は「吉田」と記載され、第三字目は意味不明である。従つて「吉田」の第一字は「吉雄」の「吉」、第二字は「中田」の「田」であり、被告の有効投票である。
(118) 岸本丁2 全体の形態からして「中田」と読みうる。
(119) 箕蚊屋丁1 第一字目は誤記を抹消したもの、第二字目は形が偏平であることから考えれば「中」の第四画を失念したもので、「中」の意であり第三字目と併せて「中田」となる。
(120) 箕蚊屋丁2 第三字目は、その運筆形状から考えて「義」であり、その訓読は被告の名「ヨシヲ」の「ヨシ」と同一であり、しかも姓は「中田」と明瞭に記載してあるので、明白に被告の有効投票である。
(121) 箕蚊屋丁3 「たなか」なる記載は被告の姓「中田」の誤記である。
(122) 中山丁1 記載中「田中」は、「中田」を誤つて顛倒して記載したものであり、かつ第三字目は「義」であるから、「義男」となり、被告の名を音の共通な別の字で記載したものである。
(123) 中山丁2 平仮名にて「なから」と記載されているが、「ら」は「た」、あるいは「だ」と音が類似しているから「なかた」あるいは「なかだ」の誤記である。
(124) 大山丁1 第一字目は字の稚拙な点からして「ナ」かあるいは「カ」であり、他の二字は明白に「ヨシ」であつて、結局「ナヨシ」あるいは「カヨシ」であるが、これは「ナカダヨシヲ」の中の三字であるから被告の氏名を指すものである。
(125) 名和丁1 第二字目は田の不完全な記載であり、その上に「な」と併せて「な田」の意であるが、これは「なか田」の「か」の脱字である。
(126) 溝口丁2 第一字目はその形状よりして平仮名の「な」、第二字目は片仮名の「カ」、第三字目は不完全ではあるが片仮名の「ダ」であつて、「なかだ」の意である。
(127) 溝口丁3 稚拙ではあるが、明白に「中田」とあり、その余の記載は誤記を抹消したものである。
(128) 日南丁1 第三字目は、名を書くため「勝」という字を書きかけてやめたものと思われるが、「中田」なる姓が明白に記載されている以上、名が相違していても被告の有効投票である。
(129) 日南丁2 第一字目は、中央の縦の線が上部に突出ていることより考えて「中」の誤字であつて、「中」を記載する意思であつたことは明確であるから、結局投票の記載は「中田」の意である。
(130) 日南丁3 「ナカタ」を「ナカオ」と誤つて記載したものである。
(131) 日南丁4 「タナか」は被告の姓を「田中」と誤認して記載したものである。
(132) 日野丁2 第一、二字は明らかに「なか」であり、第三字目は「む」を書いて消し、第四文字は稚拙ではあるが「た」を記載しており、「なかた」となる。
(133) 日野丁3 稚拙ではあるが明白に「地区方中田吉雄」と記載してあり、「地区方」は「地方区」の意である。
(134) 日野丁4 明白に「中田」なる記載があり、その余の記載はその位置形状から見て筆勢による他意のない記載である。
(135) 日野丁5 形状から観察すると第一字目は、「中」の草書体「」に類似しているところから「中」の意であり、第二字目は「」の左下方に小さな点があることから漢字の「田」を記載する意思であることが認められるので、右票には「中田」との意の記載があるから、被告の有効投票である。
(136) 日野丁6 第一字目は、その形状からして片仮名の「カ」であり、第二字目は「田」の第五画が脱漏しているが「田」の意であることは十分察知できる。右記載は「カ田」となり「ナカ田」の「ナ」の脱字である。
(137) 米子第一丁1 甲二の(一五)と同一理由により被告の有効投票とすべきである。
(丙) 以上のとおり
(1) 無効票中被告の有効票と判定されるべきものは 調書記載の投票に関するもの(被告の計上した五三二票中には前記第二(甲)二の(一五)の二票が含まれていないのでこれを加える)五三四票 写真に撮影した投票に関するもの(右乙二の(137)の一票につき前同様)一三七票 合計六七一票
(2) 原告の有効投票中被告の有効票と判定されるべきもの 調書記載の投票(混在にして、当事者間に争のないもの)一三票 写真に撮影した投票(東郷乙13)一票 合計一四票
(3) 被告の有効投票中に混在した原告の有効票(当事者間に争がないもの)二六票
(4) 投票の数え違いによる被告の増加票(同上)四票
(5) 同じく原告の増加票(同上)八票
(6) 原告の有効票中無効と判定せらるべきもの 調書記載の投票に関するもの三四票 写真に撮影した投票に関するもの六四票 合計九八票となり、被告の得票数の増減は、(1)の六七一票に(2)の一四票と(4)の四票を加え、(3)の二六票を差引いた六六三票が増加票となり、原告の得票数の増減は、(6)の九八票に(2)の一四票を加え、(3)の二六票と(5)の八票を差引いた七八票が減少票となる。従つて被告の得票数は選挙管理委員会の確定票数一一七、九九一票に右六六三票を加えた一一八、六五四票となり、原告の得票数は同じく一一七、九五二票から右七八票を差引いた一一七、八七四票となり、双方の得票の差は七八〇票となり、被告の当選となる。
第三、右のほか福部村開票区における原告の得票中無効とすべきものがあり、その理由は次のとおりである。
一、同開票区における原告の投票中乙1、4、6、7、8、9、18、19の八票、および乙20、21、22の三票はそれぞれ同一筆蹟である。同村内投票所において代理投票の補助者となり、二人以上の選挙人のため代筆した者の中、蔵見投票所における浅井晃が六票、八重原投票所における川口紀子、同じく橋本孝由が各二票をそれぞれ代筆している。従つて補助者となつた者自身の投票と併せ、しかもそれらがすべて原告に投票したものと仮定すれば、同一筆跡の投票が七票のもの一組、三票のものが二組あり得ることではあるが、七票記載したものと考えられる浅井晃の筆跡は乙20、21、22の投票の筆跡と一致しているから、被告の指摘した八票の組のものに該当するとは考えられず、結局この八票は代理投票の手続によらずして投票された同一筆跡の投票と云わざるを得ないから、そのうち一票を除くその余の七票の投票は、候補者の氏名を自書しないものであつて無効である。
二、右の点を別にしても、赤鉛筆で記載されている乙1、4、6、13、17の各投票は左記理由により無効である。
(一) 投票所に選挙人のために備付けられている筆記用具は通常黒鉛筆であるから、ほとんどの選挙人がこれを使用し、稀に選挙人自身が持参した万年筆、毛筆を使用することはあつても、赤鉛筆を使用することは、ほとんどあり得ぬところである。考え得られることは、選挙事務従事者が事務上使用した赤鉛筆を用いて、代理投票をなすことのみであるが、本村内で代理投票の補助者となり、自ら選挙人のため代筆した岸田直樹、浅井晃、川光多喜夫、橋本孝由、川口紀子の各証人について見ても、明白に赤鉛筆を用いて記載したと証言している者はいないから、右投票は代理投票によるものと断定することはできない。しかも赤鉛筆による投票が、同村における原告の全得票一、〇七六票中僅かに五票であることを併せ考えるならば、前記赤鉛筆による投票は、投票者の何人であるかを識別せしめるための、有意の記載といわざるを得ず、結局右投票は無効である。
(二) 右の点は別にしても右赤鉛筆による投票は選挙人が自書したものでない疑が濃厚であるから無効である。すなわち、右投票のうち、乙1、4は原告の有効票とされている投票のうち端数綴りの中に、しかも一枚目と四枚目とに極めて近接して存在し、右赤鉛筆の色は開票の際に記載したと思われる右端数綴の一枚目ないし三枚目に記載されている赤鉛筆数字および横線の色と全く同一であるから、右投票は開票に際して何人かが開票事務に用いていた赤鉛筆を用いて白票に記入したとの疑が極めて顕著である。しかりとすれば、右乙1、4以外の赤鉛筆による投票乙7、8、9、18、19の各投票もまた同様の疑が顕著となるので、少くとも右のうち一票を除く四票もまた必然的に無効とならざるを得ないものである。
(証拠省略)
理由
原告、被告および訴外米原昶、小田スエが昭和三四年六月二日行われた参議院議員選挙に鳥取県選挙区から立候補し、選挙の結果、選挙会は被告の得票数を一一七、九九一票、原告の得票数を一一七、九五二票、訴外米原昶の得票数を一五、一七五票、訴外小田スエの得票数を四、九八四票と決定し、鳥取県選挙管理委員会が同月八日被告の当選を告示したことは当事者間に争がない。
そこで、以下各当事者の主張する投票の効力について順次判断する。
第一、各当事者の有効投票中、各自相手方の無効を主張する投票について。
一、原告が被告の有効投票中の無効を主張する票に関する判断、
(一) 著名人関係(請求原因第一の(一))
(イ) 検証の結果によれば、被告の得票中に、別紙第一表の(一)(イ)中田政美関係部分の表に掲記する、「政美美」(まさみ)およびこれと同音の漢字、ならびに仮名またはこれらを混用して「中田政美」(なかたまさみ)を表示した投票合計二十一票の存在することが認められる。
成立に争のない甲第二号証、証人西川徳弥、上根政章の証言を総合すれば、訴外中田政美は鳥取県八頭郡の出身であつて、公務員として建設省事務次官まで昇進した後、昭和二七年一〇月一日施行された衆議院議員総選挙の前に官を辞して右選挙に鳥取県から立候補して当選し、翌二八年四月一九日施行された衆議院議員総選挙に再び鳥取県から立候補したが、落選し、翌二九年一二月四日施行の鳥取県知事選挙に立候補して落選したものであつて、鳥取県では著名な人であることが窺われるから、右票は被告の名の誤記または被告に投票する意思であつたものと認めるよりも、実在する「中田政美」に投票する意思が表示されていると認めるのが相当であり、これを無効とすべきである。
もつとも、成立に争のない乙第五号証の一、二証人仲市実の証言に証人上根政章の証言の一部を総合すると、中田政美が自己の政治的生命をかける決意の下に前記知事選挙に臨み、落選後、爾後政界に出馬しないとの挨拶を残して鳥取県を去つた事実を認めるに難くないけれども、右事実が本件選挙当時、一般選挙人に対して周知徹底していたことについてはこれを確認するに足る証拠はない。
(ロ) 検証の結果によれば、被告の得票中に、同第一表の(一)(ロ)中の中田義正関係部分の表に掲記のうち岩美甲7一票を除き、その主張のような記載のある投票一二票の存在することが認められる。
被告は右票のうち(1)鳥取第一甲1一票は、第四字目は「正」ではなく「王」であつて、その上の字と合せて「義王」(ヨシオウ)と読み被告の名を記載したものと解すべきであると主張するけれども、検証の結果によれば第四字目は正確な「王」の字ではなく、その字形は「王」よりもむしろ「正」に近いものと認めるのが相当であつて、「正」の字のつもりで記載したものと推認できる、(2)若桜甲2一票は最後の字は「さ」ではなく「を」であると主張するけれども「中田よしま」まで正確な字で記載していることとその字形を観れば「さ」であると認めるに十分である。
同表中の岩美甲7一票は、その第四字目は字形より見て「昌」よりも「男」を草書体にくずしたものと認められるので「中田義男」と記載したものと認めるのが相当であり、「中田吉正」と記載した三票は、氏および名の第一字目まで被告の氏名に一致していることからみて、この選挙人は被告の名「吉雄」を誤つて「吉正」と記載したものと推認されるので右合計四票は被告の有効投票とすべきである。
成立に争のない甲第三号証の一、二、三証人西川徳弥、上根政章の各証言に証人仲市実の一部証言を総合すれば、訴外中田義正は前記中田政美の弟であつて、元鳥取市で弁護士を開業し、昭和一〇年九月二一日から昭和二二年四月末まで鳥取県会議員をつとめ、昭和二一年四月一〇日施行された衆議院議員総選挙に立候補したが落選し、また昭和二二年四月から翌二三年三月まで鳥取弁護士会会長をつとめ、その後検事に任官し、数年後に辞職して広島市で弁護士を開業しているものであつて、鳥取県内では鳥取市周辺で特に著名な人であることが窺われ、これに検証の結果により明らかな如く、前記表の一三票から被告の前記有効票四票を除くその余の九票は鳥取市およびその周辺の町村に散在している事実を合せ考えれば右九票は実在の「中田義正」を表示したものと認めるのが相当であつて、これを無効とすべきである。
被告において、中田義正は政界を引退した一法律家にすぎないので、右投票は被告に対するものであるというけれども、中田義正に政界に出る意思のないこと、およびそのことが一般選挙人に周知徹底している事実を認める証拠がないので右主張は採用しない。
(ハ) 検証の結果によれば、被告の得票中に同第一表の(一)(ハ)の中西利理関係部分の表記載の「中西」と記載した投票三票の存在することが認められる。
成立に争のない甲第四号証、証人西川徳弥、上根政章の各証言を総合すれば、訴外中西利理は鳥取県東伯郡の出身であつて、労働省関係の公務員の経歴をもち昭和三〇年二月二七日、昭和三三年五月二二日施行された各衆議院議員選挙に鳥取県から立候補し落選したものであつて、鳥取県では著名な人であることが窺われ、右事実に検証の結果により明らかな如く無効票中に「中西利理」と明記した票(倉吉12一)の存在する事実を合せ考察すれば、右三票は中西利理に対する投票ではないかとの疑をいれるに十分であつて、被告の氏「中田」を誤記したものとたやすく推認することができない。右投票は無効とすべきである。
中西利理が参議院議員選挙に立候補したことのない事実は弁論の全趣旨に徴し明らかであるけれども、選挙人のうちには、同人が本件選挙に立候補したと誤解したもののあることも考えられないことではなく、現に前記の如く「中西利理」に対する投票もあることであるから、右事実は前記認定を左右するに足らない。
(ニ) 検証の結果によれば、被告の得票中に同第一表の(一)・(ニ)の田中たつ、田中信儀関係部分の表記載のうち米子第一甲1、大山甲6を除き、その主張のような投票合計二七票の存在することが認められる。
もつとも、そのうち鳥取第三甲28は投票用紙を普通にしてこれを見れば、その記載は一見「中田」のようであるけれども「中」の字の第二画目の末端が第三画目より下に出ていること、第四画目の縦の棒が下に抜け出ていないこと、および「田」の字の上底が下底より短いこと、その他各字の字形を考えると、右記載は投票用紙を逆にして記載したものであつて、「田中」と読むべきである。
検証の結果によれば右除外票のうち米子第一甲1は字形、筆順および記載欄の上の方に記載してあること、大山甲6は「田」の字の第二画目が一筆で「形に曲り第五画目の横の線と僅かに開いていること、その他字形、記載欄の上の方に記載してあること、を考えると、右二票は投票用紙を逆にして「田中」と記載したものではなく、「中田」と記載したものと認められるので被告の有効投票である。
成立に争のない甲第八号証の一、二、三証人安田貞栄の証言を総合すれば、訴外田中信儀は昭和六年九月から昭和二二年四月まで鳥取県会議員であり、その間昭和一六年一一月から昭和二二年四月まで同議会議長をつとめ、昭和二二年四月施行の参議院議員選挙に際し鳥取県地方区から立候補して当選し昭和二五年五月までその任にあつたもので、鳥取県では著名な人であつたことが窺われること、ならびに成立に争のない甲第一号証乙第九号証により明かな如く本件選挙と同時に施行された参議院議員全国区選挙に立候補した田中清一が鳥取県において五六六票を得ている事実を総合すれば、右「田中」票二七票は田中信儀、田中清一等に対する投票ではないかとの疑をいれるに十分であるから、被告の氏「中田」と「田中」とが往々にして間違い易い事実を考慮に入れても「田中」のみの記載をもつて被告の氏を誤つて記載したものとはたやすく推認することはできない。よつて右投票は無効とすべきである。
成立に争のない甲第九号証証人安田貞栄の証言によれば、田中信儀が参議院議員をやめてから間もなく病気に倒れ、本件選挙当時は病床にあつた事を認めることができるけれども、右事実が選挙人一般に周知徹底されていたことの証拠がないことに、右田中清一の得票の点を合せ考えると、右事実は前記認定を左右するに足らない。
(ホ) 検証の結果によれば被告の得票中に、同第一表の(一)(ヘ)の田中嘉男関係部分の表記載の、漢字、仮名およびこれらを混用して「田中吉雄」(たなかよしお)を表示した合計二四七票の存在することが認められる。
もつとも大栄甲4一票は「たナかよしお」であり、鳥取第一甲14一票は「たなよしお」であるけれども、各その文字の稚拙であることから見て、前者は「よしお」の「し」の字を、後者は「たなか」の「か」の字をそれぞれ脱漏したものと推認され、岩美一3票の「たなよしお」も「たなか」の「か」の字を書き落したものと思われる。若桜甲14一票の「たあかよし〇」の最後の字は記載の稚拙であること、およびその字形から見て「を」の字を記載しようとしたが正確な字を書くことができず、これに似た右記載をするに至つたものであつて、「を」を意味するものと推認でき、「たあか」は「たなか」を誤つて記載したものと認められる。
成立に争のない甲第六号証の一、二証人西川徳弥、上根政章の証言を総合すれば、訴外田中嘉男(たなかよしお)は昭和一七年一一月から昭和二二年一月までの間鳥取県八頭郡から選出されて県会議員をつとめていたが、終戦前後はいわゆる翼賛選挙によつて選出されたもので通常の選挙によつたものではなく、その後現在に至るまで国会議員の選挙には一度も立候補しないことが認められる。右事実によれば田中嘉男は前記中田両名に比べるとさ程著名な人ではないものということができる。そして前記投票のうち名を被告の名「吉雄」と同一文字を用いて記載したものが一八九票の多数に達し、その他にも「吉」の字を用いて名を記載した票のある反面「嘉男」と記載された投票のないことおよび「中田」姓よりも「田中」姓が多く、被告も時に「田中」と間違えられることがある事実に、右投票に記載された名が被告のそれと一致し、またはその名を識別する基準となる「吉」(よし)の一字が表示されている点からみれば右「田中」は「中田」を誤つて「田中」と記載したものであつて前記二四七票は田中嘉男に対する投票ではなく、被告に投票したもので被告の有効投票と解すべきである。
原告は右投票中少くとも八頭郡内における投票一八票は田中嘉男に対する投票として無効とすべきであると主張するけれども、鳥取県における投票総数(二六六、六〇〇票余)と八頭郡の投票数(三四、一五〇票余)との比、および田中吉雄類型票二七四票(右二四七票に被告主張の後記二七票を加算)と右一八票との数字を比較するに八頭郡内における田中吉雄類型票が他の地域に比較して特に多数であるとは認められないので、右主張は採用し難い。
(ヘ) 検証の結果によれば被告の得票中に同第一表の(一)(ト)の高田勇関係部分の表に掲記のうち鳥取第一甲2、甲8各一票を除きその主張のような記載の六票のあることが認められる。
鳥取第一甲2一票は、検証の結果によれば、第一字目は抹消してあつて書いてあつた元の字は不明であり、第二字目「チ」は、記載全体の稚拙であること、その字形および右抹消の点から考えれば第一画に当る「ノ」は第二字目を記載するとき間違つて記載したものを消すことを失念したものと推測され、右票は第三、四字目を合せて「ナカタ」となり、また鳥取第一甲8一票の第一字目は、記載全体の稚拙であること、その字形および第三字目「だ」が正確に記載されていること等を合せ考えると、「な」の字の不完全記載であると認められ、右票は「なカだ」と読まれ、右二票とも被告の有効投票である。
成立に争のない甲第七号証、証人西川徳弥の証言を総合すれば、訴外高田勇は鳥取県の農政、財務、商工等の課長を歴任した後昭和三四年二月二日鳥取市長に当選就任したものであつて、鳥取県において著名な人であることが窺われること、検証の結果によれば「たかた」と記載された五票の各第三字目は正確な「た」の字であつて、第一字目「た」を「な」の書き誤りであるとは到底認め難く、「たカタ」と記載された一票の第一字目も正確な「た」の字であること等を合せ考えると右六票は被告の氏を誤記したものと解するよりも、候補者以外の氏名を記載したものとして、無効とすべきである。
被告において、選挙人は本件選挙の数月前に鳥取市長に就任した高田勇を本件選挙の候補者と混同する筈がないと主張するけれども、現在における選挙人全般の智識政治的関心の程度が千差万別であることを考えるとき、右主張はただちには採用し難い。(以上無効とすべきもの合計六六票)
(二) 検証の結果によれば、被告の得票中に別紙第一表の(二)記載のうち境港甲2一票を除くその余の漢字、仮名、またはこれらを混用して「中田正雄」(なかたまさお)を表示した投票合計八八票のあることが認められる。
右境港甲2一票を検するに、第三字目は一見しただけでは「正」と「吉」のいずれであるか判らないけれども、その字形、および第四字目「雄」の字画筆順が正確でないことから見れば、第三字目は「吉」を書くつもりであつたことが窺われるので「吉」と読むべく、従つて右投票の記載は「中田吉雄」であつて、被告の有効票である。
前記「中田正雄」なる投票が被告の氏「中田」と原告の名「正雄」を組合せた記載であることは疑のないところである。よつて右投票の効力について考える。
およそ、選挙人は常に必ずしも平素から候補者たるべき者の氏名を記憶しているわけではなく、諸種の選挙運動を通じてその氏名をはじめて記憶するものも多く、この場合氏名を誤つて記憶し、あるいは各候補者の氏名を混同して一人の候補者の氏名として記憶する場合も十分に想像しうること、我国において個人を識別する標準としてその氏に重きを置いている実情にあるところ、成立に争のない乙第一号証、第二号証の一、二、証人河辺収の証言を総合して明らかな如く本件選挙においても、原告、被告は各自その氏を選挙人に周知徹底せしめるべく選挙運動を行つたこと、および原告、被告の氏には少しの近似性がないのに、名は「正雄」と「吉雄」であつて、各第一字目は字画の少い、ほぼ角形の字形であり、第二字目は同一文字であつて、その読み方も「お」である事実を総合し、通常選挙人は一人の候補者に対して投票する意思をもつてその氏名を記載するものと解すべきであることを参酌すれば、右投票のうち名を漢字で「正雄」と記載した八一票は両者の氏と名を混記したものと認めるよりも、被告に投票する意思をもつて、名のうち第一字目を誤記したものと認めるのが相当であり、名を仮名で記載した七票も右同様被告に対し投票したものと認めることができるので、右八八票は被告の有効投票である。
(三) 検証の結果によれば、被告の得票中に第一表の(三)記載のうち、東伯甲4、甲6、米子第一甲12、鳥取第二甲13各一票を除くその余の各記載のある投票合計三四票のあることが認められる。
検証の結果によれば、右除外票のうち東伯甲4 の第三字目は、その字形、記載文字の稚拙である点から見て、「吉」のつもりで書いたものと推察できるので、「田中吉雄」となり、前記(一)の(ホ)と同じ理由によつて被告の有効投票とすべきである。東伯甲6 の第三字目は「と」でないことは明らかであつて、その字形より見て「よ」の誤記と認められ、「中田よしを」として被告の有効投票である。米子第一甲12 の第三字目は「之」の字よりは一画多くかつ最終の筆が横棒になつている点から見ると「之」の字ではなく、「吉」の字を書くつもりで記載したものと推察できる。「中田吉雄」として被告の有効投票である。鳥取第二甲13 は、その第三字目は「フ」第四字目は「」第五字目は「お」であつて記載の稚拙な点から見て、「」は「よ」の不完全記載とも推定されるので、「中田フよお」として判断するのが相当である。
成立に争のない甲第一号証によれば、前記全国区の候補者のうちに、前記投票に記載の名あるいは氏を同じくする左記候補者がいた事実を認めることができる。鹿島俊雄 沖原紀夫(としを) 後藤俊男 加賀山之雄 石谷憲男 小西英雄 石田次男 中村順造 中川源一郎 吉田セイ 米田正文 田中清一
よつて右投票の効力について考察するに、二つの公職の選挙が同時に行われた場合において、一の選挙の投票用紙にその選挙の候補者の氏または名と他の選挙の候補者の名または氏を組合せた記載のあるときは、当該候補者の氏名が投票記載の氏、名と誤られ易いことについての事由、たとえば氏名の近似性の度合に、一般に特段の事情のない限り投票は当該選挙の候補者に対してされるものと考えられることを考慮にいれて、投票意思を推定しその効力を定めるべきであつて、選挙人の投票意思が明白でないとして直ちに無効とすべきではない。
右投票中漢字、仮名、またはこれらを混用して記載した「中田俊雄」(なかたとしお)類型票八票、「中田之雄」「中田のりを」「中田英雄」「中田ヒデヲ」「中田次男」「中田フよお」各一票は被告の氏「中田」を正確に記載し、名の最後は漢字または仮名で「お」と記載しており「中村吉雄」一票「吉田吉雄」七票「米田吉雄」三票は名は被告の名を正確に記載し、氏は被告の氏「中田」のうちいずれか一字を用いていていずれも被告の氏名に近似性を有することから考察すれば、右各票は被告に対する投票と認めるのが相当であつて、前記全国区候補者に対する投票と見るべきではなく、「なかとしを」一票は被告の氏「中田」(なかた)の「た」一字を書き落したものと推察され、「なかたとしを」として右と同じ理由により被告の有効投票とすべきである。「吉田義男」「田中吉美」「田中よしみ」「たなかよしゑ」各一票は、被告の氏名に近似性が認められず、果して被告に対して投票したものかどうか明らかでないので無効とすべきである。(以上無効とすべきもの合計四票)
(四) 検証の結果によれば被告の得票中に請求原因第一の四に記載する投票中、郡家甲7、東郷甲2、中山甲4、倉吉甲7各一票(計四票)を除くその余の各記載のある投票合計七票のあることが認められる。
検証の結果によれば右除外票のうち東郷甲2 は、文字の極めて稚拙であることと、字形より見て第三字目は「ヲ」よりも、むしろ「タ」に近く、「なかタ」と記載したものと推定できるので、被告の有効投票とすべきである。倉吉甲7 は、文字の稚拙である点、第三字目の字形、特に右から斜左下方に字の線が流れておりかつ横に短い線を入れている点から考え、第三字目は「川」ではなく「タ」を記載しようとした意図が窺われるので、「ナカタ」として被告の有効投票とすべきである。郡家甲7 は、その第三字目は明らかに「キ」であるから「なかキ」として判断すべきである。中山甲4 は、その第一字目は「牛」ではなく「手」であるから「手田」として判断すべきである。
前顕甲第一号証によれば前記全国区候補者のうちに中尾辰義、永岡光治、中村順造、吉田セイがあつて、前記有効票を除くその余の投票のうち「ナカヲ」三票「ながおか」「中村」各一票「吉田」二票は名の記載がなく、それぞれ右候補者の氏と一致しているので、被告の氏を誤記したものとは容易に推定し難く、右候補者に対する投票とも認められないことはないので、無効とすべきである。「なかキ」「手田」各一票は被告に対する投票と認め難いので、無効とすべきである。(以上無効とすべきもの合計九票)
(五) 検証の結果によれば被告の得票中に第一表の(四)記載のうち鹿野甲1、鳥取第二甲23、32、関金甲2、倉吉甲26、河原甲7、用瀬甲6、会見甲2各一票宛(合計八票)を除くその余の各記載のある投票合計二二票のあることが認められる。
検証の結果によれば右除外票のうち鹿野甲1 は、その第三字目は字形より見て「ト」ではなく「よ」と認められ「中田よしち」となる。「ち」は「お」の誤記とも推測されるのであつて、被告の有効投票とすべきである。鳥取第二甲23 は、文字の稚拙さから見て第三字目は「佳」であつて「雄」の偏を書き落したもので、「雄」の字のつもりと推定され「中田雄吉」となる。「雄吉」は「吉雄」を顛倒して記載したものと考えられるので、被告の有効投票である。倉吉甲26 は、その第六字目の字態は「よ」よりも「お」を書くつもりと認められ「お」に類似しているので「なかたよしお」として被告の有効投票である。用瀬甲6 鳥取第二甲32 右二票の各六字目は正確な「こ」の字ではなく、如何なる字を書いたつもりであるか判定し難いけれども、被告が男性であることからすれば、「こ」のつもりでないことは窺われる。被告の名「よしお」の「お」の誤記と見て被告の有効投票とするのが相当である。関金甲2 は、その第五字目は字形、筆の運びから考察すれば、「るえ」の二字ではなく「ゑ」と見るのが相当であつて、「なかダはゑ」として判断すべきものである。会見甲2 は、その第二字目は画数字形から見て「田」と読まれ「中田時蔵」として判断すべきものである。河原甲7 は、その第三字目は「古」であつて「中田古子」として判断すべきものである。
投標記載の氏名のうち、氏または名が候補者のそれに一致し、他の一方が候補者と字形、字音寓意のいずれにおいても全く異るものは、一般に誤記したものとは認め難いので、右三票はこの意味で無効と解するのが相当である。
前記有効票五票および無効票三票(合計八票)を除いたその余の二二票のうち「中田雄夫」二票はその名の一字「雄」が被告の名「吉雄」の一字と同一であること、「雄」「夫」がともに「を」でありその読み方にも疑問のあること等を合せ考えると、「雄夫」は「吉雄」を誤つて記載したものとも推察でき、被告に対する投票意思が窺われるので、いずれも被告の有効投票とすべきである。
その余の二〇票は、その記載の名は被告の名「吉雄」と字形、字音寓意のいずれにおいても全く異るものであつて、氏名全体として被告に近似性がなく単に被告の名を誤記したものと認め難いので、候補者以外のものを記載したものとして無効とすべきである。(以上無効とすべきもの合計二三票)
(六) 検証の結果によれば、被告の投票中に第一表の(五)記載のうち倉吉甲3、米子第三甲3、八東甲4、三朝甲5、東郷甲8、名和甲1各一票(計六票)を除くその余の各記載の投票合計一七票のあることが認められる。
検証の結果によれば右除外票のうち倉吉甲3 は、文字の稚拙な点第一字目の右半分が右上から右下方に斜に傾いている点から見て「な」を記載するつもりであつたことが窺われるので、「は」ではなく「な」の誤記と認め「カた」として被告の有効投票である。三朝甲5 東郷甲8 右二票の各第二字目はほとんど同一の字形であつて、一見「オ」の如くであるけれども、よく見れば、「カ」の第一画目に当るべき筆勢の末端が「オ」の第二画目の末端としては余りに長すぎること、「カ」の第二画目に当るべき「ノ」が、「オ」の第三画目としては「オ」の第二画目から離れすぎていること、その字形、記載文字の稚拙な点から見れば、第二字目はいずれも「カ」のつもりであることが窺われるので、「ナカタ」として被告の有効投票である。名和甲1 は、その第二字目は字形より見て「ガ」の第二画目「ノ」を書き落したものと思われる。右は「ブ」ではなく「ガ」として、票の記載は「ナガタ」となり、被告に対する投票意思が窺われるので、被告の有効投票である。米子第三甲3 は、第一、二字は字の線が交錯していて判読不能であり、明瞭なものは第三字目「だ」のみであるから、被告に対する投票と推定するに由なく、無効とすべきである。八東甲4 は、第一、二字は判読不能であり、読みうるのは第三字目「タ」のみであるので、右と同じ理由により無効とすべきである。
前記一七票中「ナガタ」六票「ながた」四票「ながた」「ナガタ」各一票は被告の氏との類似性から考え被告に対する投票と認められる。「な田」「なた」各一票「なだ」一票は被告の氏「なかた」の「か」を書き落したものと推定できるので被告の有効投票とすべきである。
原告は本件選挙の候補者に「小田スエ」があつて、被告の氏と「田」を共通しているので、右票は無効とすべきであると主張するけれども、右候補者の氏「小田」(おだ)は二字であるので、「ナガタ」「ながた」等仮名三文字の右各票に「た」の字があるとの理由で「小田」に対する投票と推定する余地はなく、「なた」と記載した各票の第一字目が明確な「な」の字である限り「小田」に対する投票と推定することは相当でない。「田」と記載した一票は被告および右小田候補のいずれに対する投票であるか不明であるので、無効とすべきである。(以上無効とすべきもの三票)
(七) 鳥取第三甲1 は、その第二字目は主張の如き明確な「切」の字ではなく、字形、筆の運びから見て「田」の字をくずしたものと認められるので「中田」として被告の有効投票である。倉吉甲11 は、その第三字目をよく見れば、線の色に濃淡があるのみならず、濃線の下に淡い字らしい形が現はれているので、濃い「八」の字形に見える線は字を抹消したしるしと認められる。記載は「なか」として被告の有効投票と認めるべきである。
(八) 他事記載関係
原告が被告の有効票中他事記載のあることを理由として無効を主張した投票の効力につき判定した結果は左に記載するとおりであつて、判定欄に「無効」とあるのは判定の結果無効としたもの「中田」とあるのは被告の有効票を意味し、理由欄には判定の理由を示したものである。(以下同様の形式によつたものについても同じ。)
投票
判定
理由
(1) 米子第三 12
中田
「中田ヨシ」の下の記載「ー」は被告の名「吉雄」(よしを)のうち「ヨシ」まで記載したところ「雄」を思い出せぬまま、記載を省略した印に記載したものと認められる。
(2) 米子第三甲10
無効
「中田ナシ」の「ナシ」は他事記載
(3) 鳥取第三甲16
中田
「を」の字は候補者氏名記載欄の中央上部に位置していること、その右側に被告を指したものと推認できる「なかよしを」との記載のあることを合せ考えると、被告の氏の最初の「な」を書こうとして誤記し、これを抹消することを失念したものであつて、他事記載にあたらない。
(4) 淀江甲2
中田
文字の稚拙な点と「田中」の文字が記載欄の右上隅に記載されていることから考えると、右記載後誤りに気付いてその左側に「中田」と記載したが、「田中」を抹消しなかつたものである。
(5) 気高甲2
中田
良く見ると左側の「中原」の文字は、鉛筆で抹消したことが明白に認められる。
(6) 鳥取第一甲10
中田
文字の稚拙な点と「中」の字の第二画が右で曲らないで「一」となつていることから見ると、最初裏面に「中田」と記載したが、表面に書くべきであつたことに気付き、表面に「中」の字を書きかけたが中止したものと認められる。
(7) 若桜甲3
中田
「ナ」と「カ」の字の間の「一」は、字を書こうとして止め、これを消すのを忘れたものである。
(8) 智頭甲9
中田
「中田」の下の記載は何か文字を書きかけて中止したものと解される。
(9) 智頭甲11
中田
左の行に「2石」と書いて抹消してあるところから推測すれば、候補者二名を連記するつもりで、その氏名の上に番号を付したもので「中田吉男」の上の「ー」は右番号を意味し有意の他事記載ではない。
(10) 鳥取第一甲22
中田
「中田」の下の記載は、文字の稚拙なことから、何か字を書こうとしたものであることが推定できる。
(11) 鳥取第二甲30
無効
「ヨ」に付した( )は他事記載である。(ヨ)の記載は被告の名の略記であつて適法であるとの主張は採用し難い。
(12) 米子第二甲5
中田
仔細に検討すれば「ナカダ」の「ダ」の字の右下の記載は「ヨ」の字を書こうとしたものと推定できる。
(13) 米子第三甲20
中田
「カ」と「ダ」の間の「一」は字を書きかけて、抹消するのを忘れたものと推定できる。
(14) 羽合甲10
無効
「中田」の右肩の「ハノ」なる記載は他事記載と認められる。
(15) 倉吉甲12
中田
「うず巻」様の記載をよく見れば、「田」の字を書いたことがうかがえるので、右記載は「田」の字を抹消する意味の記載であると認められる。
(16) 東伯甲3
無効
「中田」の上部の「〇〇」の記載は明らかな他事記載というべきである。
(17) 東伯甲9
無効
「雄」の字の右側の「〇」印は明らかな他事記載である。
(18) 智頭甲12
中田
「石ハ」なる記載は、「石」の字が抹消してあることから見て、全部これを抹消したものと認められ、他事記載とならない。
(19) 米子第二甲15
中田
記載全体から見れば、第一字目の「か」は誤つて記載したものであつて、抹消するのを忘れたものと推測できる。
(20) 国府甲47
中田
よく見ても、原告主張の「ー」記載はなく写真にある右下のうすい黒線は投票用紙の疵である。
(21) 郡家甲1
中田
「中田」の下の記載は字を書きかけて中止したものと推定できる。
(22) 河原甲1
中田
「田」と「吉」の字の間にある「〇」印は、これをよく見ると「ー」の上に記載されているので、字を書きかけ、これを抹消する意味で記載されたことが明らかである。
(23) 八東甲10
中田
「中田」の下の「ヽヽヽ」印は、字の稚拙な点から見て、被告の名を思い出せぬので、これを省略する意味で記載したものと推定できる。
(24) 用瀬甲7
中田
「中」の「田」の間にある記載「ヒ」は、その形状から見て、ある文字を書きかけて、中止したものと認められる。
(25) 佐治甲1
中田
「中田」の下の黒点は、これをよく見ればその下に濃い鉛筆書きの小さい字らしい記載が認められるので、これを抹消するため、鉛筆で塗りつぶしたものと認められる。
(26) 境港甲11
中田
「中田」の下の記載は、その形状から見て、字を書きかけて消したものと認められる。
(27) 鳥取第一甲3
中田
「中田」の下の小さい黒い点は、その形状、大きさの程度から見て、特に意識的に記載したものではなく、書き終つて鉛筆を置いた時ついたものと認められる。
(28) 鳥取第二甲5
中田
最後の文字「ア」は記載の稚拙な点から見て「ナカタ」の「タ」の音をのばして「ア」を附加したものと推定できる。
(29) 鳥取第二甲18
無効
「中田」の下の「三」の字は、その筆順、記載文字全体の配列の具合から見れば、「吉」の字を書きかけたものとは認められず、明らかに数字の「三」であつて、他事記載と認められる。
(30) 米子第一甲5
中田
<社>なる記載は被告の所属政党「日本社会党」を省略した記載と認める。
(31) 三朝甲1
中田
「中田」の上の「リ」の字の形をした記載は、「中」の字の左肩に位置すること、その形状、記載文字の稚拙なこと等から判断すると、字を書きかけたものと認められる。
(以上無効とすべきものは合計六票)
(九) 検証の結果によれば、被告の得票中に請求原因第一の九において主張する投票合計七票のあることが認められる。
そのうち鳥取第二17一(かなまる)西伯1一(米原)鳥取第一6一(なかおたつよし)八東1一(ながわ)各一票(計四票)は被告に対する投票でないことが明白であり、鳥取第三10一倉吉19一(いずれも中田)(計二票)はいずれも同時に施行された参議院議員選挙の全国区用紙を用いたものであるから無効である。若桜5は、その記載の「ナ」だけでは被告を選ぶ趣旨が表明されているものとは到底認めることができないので、候補者の氏も記載しないものとして無効と解すべきである。(以上無効とすべきものは七票)
二、被告が原告の得票中の無効を主張する票に関する判断
(一) 調書記載の投票に関する分
原告の有効投票中に(1)岩崎五票(若桜7一鳥取第三12一西伯1二米子第三30一) いわざき(名和1) 土崎(名和3) ヲカザキ(名和8) まざき(関金3) とみざき(倉吉7)各一票 山崎三票(米子第三11二東伯9一) (2)宮脇五票(鳥取第三4二青谷10一三朝17一淀江3一) 宮嶋三票(鹿野2一赤8一日野6一) 宮城(米子第三5一) (3)米田正雄(三朝18一) 岩垣正雄(三朝19一) (4)宮崎石谷(郡家3一) 宮崎重政(羽合3一) (5)ミザヤ(羽合5一) (6)点字投票にて、めやざに(米子第三21一) セヤザケマヤミ(鳥取第一5一) (7)石田次男(国府20一) 大倉精一(北条7一) (8)宮崎君へ(鳥取第三20二) (9)みやざき(鳥取第一6一色素を用いないで記載したもの)があることは検証の結果に徴し明白である。よつて右各投票の効力について考察するに(1)の各票の第一字目は原告の氏の第一字目「宮」と(2)の各票のうち宮脇、宮城の第二字目は原告の第二字目「崎」といずれも類似性が認められないので、誤記したものということはできず、原告に対して投票したものと認め難い。(3)は原告の名を(4)は原告の氏をそれぞれ記載し
あるけれども、(3)は氏、(4)は名がいずれも原告のそれと全く関連性がないので、原告に対して投票したものと認め難い。(5)は原告の氏「宮崎」(みやざき)と著しく相違しているので、これまた原告に対して投票したものと認め難い。(7)は本件選挙と同時に施行された全国区候補者の氏名を記載したものである。(8)の宮崎君への「へ」は他事記載と認められる。(9)は色素を用いないで、何か硬い先端のとがつた物でつけたと認められる原告の氏の跡があるにすぎないので、候補者の氏名を自書したものということはできない。以上の各票は右に示したそれぞれの理由により無効とすべきである。
(2)の票のうち「宮嶋」と記載した三票は、第二字目「嶋」が「崎」と同じく「山」偏であつて字形も似ており「崎」の字が当用漢字にもないことから考えると「崎」を「嶋」と誤記しあるいは原告の氏宮崎(みやざき)を「宮嶋」の字に当てて記載したものであつて、原告に対して投票したものと窺われるので、原告の有効票とすべきである。(6)の点字投票二票は、投票者が点字器の操作に慣れていないこと、点字器の故障等のため思いがけない間違つた字を記載することも十分ありうることを考慮し「みやざき」の「やざ」があつて姓と認められる字数が四文字、名の「まさお」の「ま」があつてその字数が三文字であること等その記載全体を通じて原告に対し投票しようとしたことが窺えるので、原告の有効投票とすべきである。(以上無効とすべき票は合計二九票)
(二) 写真に撮影した投票に関する分
(イ) 他事記載関係
被告が原告の有効票中他事記載のあることを理由として無効を主張した投票の効力につき判定した結果は左記のとおりである。
投票
判定
理由
(1) 国府乙19
宮崎
「宮崎正雄」の「正」の字の下にある点は、「崎」「雄」の各下にも点のあること、その大きさも鉛筆の芯の先で押した程度の小さいものであることから見て、選挙人に筆の終りに点を打つ癖があり、それによつて無意識に打つたものと推測される。
(2) 福部乙12
宮崎
欄外にある「2」の記載は、数字の「2」であつて、候補者氏名欄の「みやざき」の字よりも墨色がやや濃いこと、筆勢の相違等から見て、同一人の手になるものとは思われず、開票関係者が計数整理の際にでも記載したものと推定される。
(3) 岩美乙3
無効
「き」の字の左側の「は」の字は原告の氏名とは関係がないものであつて、他事記載と認めるのが相当である。
(4) 郡家乙8
宮崎
「石谷」の「石」の字を斜線で抹消してあるので、「石谷」全部を抹消した趣旨と認められ、他事記載とならない。
(5) 河原乙8
宮崎
第一字目「ミ」の左側の「ノ」は、記載全体が稚拙な点から見て、字を書きかけて中止したものと推定できる。
(6) 若桜乙3
無効
最終の字「ニ」は「に」を意味するものと思われる。筆順から見ても「正」を書きかけたものではなく、他事記載と認めるのが相当である。
(7) 若桜乙7
宮崎
第三字目は記号ではなく、字を消したものと認められる。
(8) 智頭乙14
宮崎
第一字目は記号ではなく、第二字目「み」と比較すれば「み」を書こうとして、書くことができず、第二字目に改めて書いたものであつて、「み」の不完全な記載と認められる。
(9) 境港乙1
無効
記載は達筆、正確な字であることから見て「宮崎正雄」の各字の右側に一個宛打つた合計四個の点は他事記載と認められる。
(10) 境港乙16
宮崎
第四字目「雄」の最後の筆端が欄外に飛出し、更に上方にはねているけれども、特にこれを他事記載と認めねばならない程度のものではない。
(11) 気高乙9
宮崎
「」の横棒は、初めある字を書くつもりで横棒まで書き、これを中止して「ん」の字を書いたものと認められ、字をかきかけたものである。
(12) 鹿野乙1
無効
「つ」の字の上下にある一個宛の点は、その形状から見て記載の際鉛筆が触れて顕出したものであつて、特に附加したものではなく、他事記載とは認められない。しかし記載の名は「つねこ」であつて女性名であることを考えると、原告に対する投票とは認められず、この点で無効とすべきである。
(13) 鳥取第一乙5
無効
「宮崎正雄」の右側に附した上下に亘る意味不明な記載は文字の達筆正確さから見て、いたずら書きか、他事記載と認められるので、無効とすべきである。
(14) 鳥取第一乙15
無効
「宮崎」を囲んだ〇印は他事記載となる。
(15) 鳥取第一乙23
宮崎
「サ」の字の右側の大小二個の縦棒は、記載全体の稚拙な点から見て「ザ」の濁点と思われる。
(16) 鳥取第二乙1
宮崎
各「宮崎」の下に記載した「ー」印はいずれも名の記載を省略した趣旨と認められるので、他事記載ではない。
(17) 同乙5
宮崎
(18) 鳥取第二乙11
宮崎
「宮崎」の上下に附した「( )」印は、「宮崎」の上に書いた二字を数本の縦の線を使つて抹消してあることから見ると、「宮崎」の記載は生かすことを意味するものと考えられるので、他事記載ではない。
(19) 鳥取第三乙21
宮崎
第一字目「ミ」の右上の「」の記載は、字を書きかけて中止し、抹消しないでそのまま残したものと認められる。
(20) 鳥取第三乙22
無効
「宮崎正雄」のうち「宮崎」の二字を特に二重文字で記載しているのは、真面目さを欠くもの、他事記載と認められる。
(21) 鳥取第三乙28
宮崎
「ミ」と「マ」の間の横棒は字を書きかけて中止し、抹消しなかつたものと推定できる。
(22) 米子第三乙11
宮崎
最上部の「一」の記載をよく見ると、その下にうすく、平仮名の「み」の字らしい記載があるので、これを抹消した印と認められる。
(23) 東郷乙14
宮崎
「ミヤザキ」の上下に附した「( )」印は、その上部に記載した「地方区」なる記載と区別する意味のものと考えられるので、他事記載ではない。
(24) 東郷乙21
無効
「雄」の字の右に附した「ダラ」なる記載は、記載全体の正確な点から考え、他事記載と認められる。
(25) 三朝乙10
宮崎
最上部の「と」の字に見える記載は、これをよく見ると、その下にうすく字が現われているので、これを抹消したしるしであつて、文字ではないと認められる。
(26) 倉吉乙3
宮崎
「みやざき」の下の「お」の字は、記載文字の真面目な書体から考えると、被告の名「まさお」の「まさ」を書き落したものとも推測され、他事記載とすることは相当でない。
(27) 倉吉乙5
宮崎
候補者氏名欄記載の「宮崎」が達筆であつて、欄外の「全国区ト 」との記載は頗る稚拙であること、運筆の相違等から見ると、欄外の記載は氏名欄に記載したものによつて記載されたものでないことが認められるので、他事記載ということはできない。
(28) 倉吉乙8
宮崎
最上部の記載は、文字全体の稚拙な点から見て、字を書きかけて中止したものと推定できる。
(29) 関金乙5
宮崎
最上部の「甲」の字の形の記載は、これをよく見れば「中」の字を消すため横棒を一本加えたものであつて、他事記載ではない。
(30) 淀江乙6
無効
「崎」と「雄」の中間の右側にある「トス」なる記載は、文字の正確であることから考え、原告の名の一字「正」を誤記したものとは認められず、他事記載というべきである。(以上無効とすべきもの合計九票)
(ロ) その他の記載関係
投票
判定
理由
(1) 岩美乙13
無効
記載は平仮名で「みやぢま」と読みうる記載であつて、原告の氏との相違が著しいので原告に対する投票と認め難い。
(2) 船岡乙6
無効
「よし子」と明らかに記載してあり、女性名であるので、原告に対する投票と認められない。
(3) 用瀬乙2
無効
記載は「宮場」と判読でき、原告の氏「宮崎」との相違が著しく、原告の氏を記載したものと認め難い。
(4) 用瀬乙5
無効
第二字目は判読不能であつて、到底「崎」とは読まれず、原告に対し投票したものか不明。
(5) 佐治乙4
宮崎
記載は稚拙ではあるが「ミヤサキマナヲ」と判読可能であつて、「マナヲ」の「ナ」は「サ」の不完全記載と解される。
(6) 佐治乙6
宮崎
記載の稚拙さから見て、第三字目の「マ」は「ヤ」の第二画目が上に抜け出なかつたもので、「ヤ」を書く意思であつたものと推定され、「ミヤザキ」の意であることが窺われる。
(7) 智頭乙12
宮崎
記載は「メヤザけ」と読まれるところ、その左側にある抹消された漢字はその字形から見て「宮崎」に酷似しているので「宮崎」を書こうとして自信がないため、これを抹消して、仮名で書き直したものと推定されるので、右記載は「ミヤザキ」を意味したものと認められる。
(8) 境港乙9
無効
第三字目は明らかに「ご」であつて、字形から見ても「ざ」の横棒を落したものではなく記載は「みやご」であるので原告に対する投票とは認め難い。
(9) 境港乙10
宮崎
記載は「みやきき信雄」であるところ、文字の稚拙な点から見て、原告の氏名を記載する意思であつたことが窺われる。
(10) 気高乙4
宮崎
第二字目の「つくり」は正確な「鳥」ではなく「崎」を書くつもりであつたことが窺われ「宮崎」として有効とすべきである。
(11) 鳥取第一乙8
無効
第一、二字は比較的達筆で「みや」と記載してあるけれどもそれ以下は字の形をしておらず、全く判読不能であつて、原告に対する投票と認め難い。
(12) 鳥取第一乙36
宮崎
第二字目は「嶋」であつて、記載の稚拙な点から見ると「崎」を誤記したものと思われ、原告の氏「宮崎」を書くつもりであつたことが窺われる。
(13) 鳥取第二乙10
無効
「宮崎正雄」のほかに、欄外に「石谷」の記載があるので、原告と全国区候補者「石谷憲男」を連記したものとして無効とすべきである。
(14) 鳥取第二乙23
宮崎
第一字目は「宮」をくずして書いたものと認められ、名の記載「正雄」と合せて、原告に投票したものと推定される。
(15) 鳥取第二乙26
宮崎
第二字目の偏は「山」であること、その字形記載の稚拙であること、第一字が「宮」であることを合せ、第二字目は「崎」の誤記と認められ、原告に対する投票である。
(16) 鳥取第三乙16
無効
記載は明らかに「やまさき」であるから、前記第一、二(一)(1)と同一理由により無効とすべきである。
(17) 鳥取第三乙18
無効
記載は明らかに「みぎき」であつて、原告の氏との相違が甚だしいので、原告の氏を記載したものと認め難い。
(18) 鳥取第三乙23
宮崎
記載の極めて稚拙な点から考え、第二字目の「」は「ヤ」の誤記、第三字目「」は「サ」の二画目を書き落したものと思われ、第四字目は「キ」と判読できるので「ミヤサキ」として原告に対する投票と認められる。
(19) 鳥取第三乙37
宮崎
記載は稚拙ではあるが、「ミヤサキ」と判読できる。
(20) 鳥取第三乙39
宮崎
第一字目は「宮」の下の「ロ」を書き落したもの、第二字目は「ざ」第三字目は「キ」であつて「宮ざキ」となる。「のもと」と記載した字が抹消されずに残つているけれど、前者の記載が濃く記載され、その第一字は「の」の上に記載し「ざキ」はその各一部が「もと」の上に記載してあるので、「のもと」を抹消したものと推測される。
(21) 西伯乙4
無効
第一字目は「み」第三字目は「し」と読みうるけれども、第二字目は判読不能であり、何人に対する投票か推定できない。
(22) 青谷乙3
宮崎
記載の稚拙な点から見て、第一字目は「み」第二字目は「や」と判読可能、第三字目「ぎ」は「ざ」の横棒一本を加えたもの、第四字目は「き」と判読でき、全体として「みやざき」を記載したものと認められる。
(23) 青谷乙6
宮崎
記載の稚拙な点から見て、第三字目は「ざ」第四字目は「き」の最後の折り曲げを逆に書いたもので「みやざき」として原告に対する投票と推定される。
(24) 東郷乙13
無効
第一字目は「ミ」を斜めに書いたものと認められるが、第二、三字目は判読困難であつて何人に対する投票か推定できない。
(25) 東伯乙8
宮崎
第三字目の「正」の字の下方部分と第四字目「雄」は判然と顕出されている。仔細に検討すれば「宮崎」と「正」の上の半分の字形がついておるのであつて、鉛筆の芯の出方が悪かつたため、かような記載になつたものと窺われる。原告の有効投票とすべきである。
(26) 会見乙1
無効
記載は明らかに「三崎」であるから、原告に対する投票と認め難い。
(27) 会見乙2
無効
明白な記載は第一字目の「み」のみであつて、第二、三字目は判読困難、第四字目は判読不可能であつて、原告に対する投票と推定できない。
(28) 淀江乙1
無効
いずれも、名は「[禾尺]一郎」と記載されていて原告の名と何らの関連性がないのみならず、同町内に記載のような特異な名を記載した票が二票あることを考えると、原告に対する投票とは認め難い。
(29) 淀江乙5
無効
(30) 淀江乙4
無効
「宮ざきため江」と記載されており、女性名であるので原告に対する投票とは認め難い。
(31) 淀江乙9
無効
「みやざき」の右肩の「中」の字は他事記載と認めるのが相当であつて、無効とすべきである。
(32) 大山乙5
宮崎
記載の稚拙であること、字形から見て第一字目は「み」の誤記、第二字目の「い」は「み」の音をのばして「い」と記載したもの、第三、四字は「サキ」と明白に読めるので、全体として「みやサキ」となり、原告に対する投票であると推定できる。
(33) 日野乙3
無効
記載は第一字目「ミ」は判読できるも次の字は不明。
(34) 日野乙7
宮崎
第一字目は「宮」を書こうとしたもののようであるが判読不能、第二字目は「み」の不完全記載と認められ、第三、四字目は「さき」であるので、「みさき」となり、全体として原告に対する投票と推定される。
(35) 日野乙9
宮崎
記載の稚拙なこと、第一字目が「宮」であることと、字の格好から見て、第二字目は「崎」を書こうとしたものと思われる。「宮崎」として原告の有効票とすべきである。(以上無効とすべきもの合計一八票)
第二、無効として処理された投票について。
一、原告が有効を主張する投票に関する判断
(一) 検証の結果によれば、第一表の(六)記載のうち淀江丙1岩美丙1境港丙2日南丙3各一票(計四票)を除く、その余の各記載のある投票合計三九票のあることが認められる。そして検証の結果によれば右除外票のうち岩美丙1 は第一字目および最後の字は判読不能であつて「<み>ヤギまさお」と読まれないので、何人に対する投票であるか判定できないものとして無効である。境港丙2 は第一字目は判読不能、第三字目は「き」ではなく「ぎ」と読まれ、記載の氏は「〇かぎ」となり原告の氏「宮崎」との関連性がなく記載の名「まさお」のみでは、原告に対する投票と認定できないので無効である。淀江丙1 は第三字目は判読不能であり、第四字目は「雄」の偏と「つくり」を反対に記載したもので「雄」の誤記と認められる、記載は「宮崎〇雄」として次に判断する。日南丙3 は第二字目は正確な文字でなく、判読不能のものであるから「宮〇まさお」として次に判断する。
よつて四一票について検討する。「宮崎古雄」「宮崎〇雄」各一票、「宮崎義雄」六票、「宮崎良夫」「宮崎良夫」各一票は原告の氏「宮崎」と名「正雄」のうち「雄」(お)を同文字あるいは同音の文字で記載し、「宮田正雄」三票、「宮川正雄」「宮野正雄」「宮内正雄」「岩崎正雄」「米崎正雄」「城崎正雄」「野崎正雄」「宮〇まさお」各一票、「宮本正雄」二票、「山崎正雄」四票は原告の氏「宮崎」のうち一文字と名「正雄」を記載してあつて、いずれも原告の氏名四文字のうち三文字まで同じであるかまたはその音を同じくし、その上、氏または名が同一であるから、原告の氏名を誤記したか、あるいは誤つて記憶したままを記載したものと認められる。
また「山崎正夫」「山崎政雄」各一票、「山崎正男」三票、「みやもとまさを」「ヤマサキマサヲ」「やまさきまさお」「いわさきまさお」「いわさき正夫」各一票は、いずれも、名を原告と同じくし、かつ原告の氏名に類似していることから見れば、右各投票は原告に対する投票意思を看取することができる。以上合計三七票はいずれも有効とすべきである。「みやわきのぶを」「やまさきまきお」「ヤマサキモサヲ」「みやわきよしを」各一票は前記各票に比し原告の氏名との類似性が乏しいので、原告に対する投票と認められず無効である。
(二) 検証の結果によれば、無効として処理された投票中に第一表の(七)記載の投票のうち河原丙6船岡丙1各一票を除くその余の記載のある投票合計二一一票のあることが認められる。
そして検証の結果によれば右除外票のうち河原丙6 はその第二字目は「脇」でないことは明白であるけれども、正確な「崎」の字でもない。しかし山偏らしい形の記載があること、その字形から見て「崎」を書くつもりであつたことが窺われるので、「宮崎」として原告の有効投票と認めるのが相当である。船岡丙1 は、その第一字目は「カ」であるから、「カマザキ」として判断すべきものである。右二一一票のうち気高丁2 は、「宮崎」と記載して「崎」を抹消し、その下に「脇」を記載してあるので、原告の氏が「宮崎」であることに確信がなく「宮脇」と訂正したものと考えられ、原告に対する投票意思が窺われるので、原告の有効投票とすべきである。北条丙3 は、「宮」の字を抹消してその右に「山」と書き、その下に「崎」を記載してあるので、原告の氏が「宮崎」であることに確信が持てず「山崎」と訂正したものと考えられ、原告に対する投票意思が看取できるので原告の有効投票とすべきである。「宮嶋」三票は前記第一の二の(一)のうち「宮嶋」票に関する説示と同一理由により原告の有効投票とすべきである。鹿野丙1 は、その記載は「シマザキ」であるけれども「ミヤザキ」との記載のうち「ミ」を「シ」に訂正し「ヤ」を抹消して「マ」と記載したものであつて原告の氏を「シマザキ」と誤つたことが窺われ、原告に対する投票意思を推定できるので、原告の有効投票とすべきである。
投票に氏のみの記載があり、その記載文字が候補者の氏の字形、字音または語感等に著しい近似性があるときは、記載された文字に一致する他の候補者の実在その他特別の事由がない限り、誤記したものとして有効投票と解するのが相当である。この見地に基づいて検討するに(イ)「宮脇」一六票「宮城」「宮川」「宮岡」「宮尾」各一票「宮本」九票「宮部」二票の各第二字目は「崎」の字と字形、字音、語感に著しい近似性があるものと認められず、(ロ)「岩崎」二八票<岩>崎、岩<崎>各一票「高崎」二票「山崎」三三票「山崎様」一票「谷崎」「嶋崎」「西崎」「浜崎」「戸崎」各一票「島崎」六票「尾崎」七票「赤崎」二票「川崎」三票「河崎」二票の各第一字目が「宮」と字形、字音語感等に著しい近似性があると認められないことに、全国区候補者中に氏の第一字目が「宮」である「宮腰喜助」氏の第二字目が「崎」である「真崎勝次」「松崎健吉」「江崎波雄」「吉崎千秋」等があることを考慮にいれれば、前記各票の記載が直ちに原告の氏を誤記したものとは認め難い。「ミヤジマ」「みヤぢま」各一票「イワサキ」四票「いわさき」五票「イワザ<キ>」一票「いはさき」二票「山サキ」「山ザキ」「山サき」「やまき」「ヤまざき」「カマザキ」各一票「山さき」五票「ヤマサキ」四票「やまさき」一〇票「ヤまさき」二〇票「ミヤモト」二票「みやもと」六票「ミカモト」一票「ミヤかわ」「みヤの」各一票「しまさき」一票「シマザ〇」各一票「しまざき」二票「しまぎき」「いしざき」各一票「いしざく」一票「をさき」「ヲザキ」各一票「オサキ」「おさき」各二票「オカザキ」「西ざき」「赤ざき」「あカざき」「ミヤニシ」「宮こう」「ミヤなが」「ミヤがミヤ」「ノシザ<キ>」「つるざき」「のざき」「ハマサキ」「はまざき」「かわさき」「かわさキ」「いさき」「イザキ」「いざき」各一票はいずれも、仮名、および仮名と漢字を混用して記載したものであるから、原告の氏「宮崎」を誤記したものということはできない。
よつて以上各票は候補者でないものを記載したものとして無効とすべきである。(以上有効とすべきもの七票)
(三) 別紙第一表の(八)記載の各投票を検証の結果に照し次のとおり判断する。
投票
判定
理由
(1) 智頭丙15
宮崎
第四字目は判読困難である。稚拙ではあるがその余の記載は「みやキ」と判読可能であつて「みやさき」の「さ」を書き落したものと認められる。
(2) 米子第一丙3
宮崎
第一字目は「宮」の字の下の「ロ」を「田」と誤記したもので「宮崎」の誤記と認められる。
(3) 米子第一丙5
宮崎
第二字目は、山偏であること、字形から見て「崎」の誤記と認められ「宮崎」となる。
(4) 米子第二丙5
宮崎
「宮崎わキ」と判読でき、「わキ」は他事記載とは認められない。
(5) 青谷丙1
宮崎
第一字目は稚拙な「ミ」の字であつて「ミヤサキ」と判読できる。
(6) 倉吉丙4
宮崎
左の行の第一目「ミ」のような字を抹消して、その右側に「ミ」と書き直しし、左行の第三、四字「サキ」の右に「ザキ」と書き、右「キ」の字を抹消したものであつて「ミヤザキ」と読まれる。
(7) 箕蚊屋丙1
宮崎
「ミヤザキ」と判読できる。
(8) 智頭丙4
宮崎
記載の極めて稚拙である点と第三、四字目が「ざき」であること、その字形から見て、第一字目は「み」、第二字目は「や」の不完全記載であつて、「みヤざき」と判読できる。
(9) 船岡丙3
宮崎
第一字目は「み」を書こうとしたことが認められ「みヤざき」と読まれる。
(10) 鳥取第二丙2
宮崎
第三字目は「ザ」のつもりであつて、「みヤザキ」となる。
(11) 国府丙1
無効
第一字目は判読不能であつて、第三、四字目も判読困難、判読できる第二字目の「ヤ」のみでは原告に対する投票と推定できない。
(12) 智頭丙5
宮崎
記載の稚拙な点から見て、第四字目は「き」を書こうとしたことが窺われ、「みヤさき」と見るべきである。
(13) 国府丙2
宮崎
記載の稚拙な点から見て第一字目は「み」の不完全記載、第三字目は「さ」の誤記と認められる。
(14) 船岡丙2
宮崎
第三字目「ツ」は「サ」の誤認と認められ「ミヤサキ」となる。
(15) 東郷丙5
宮崎
「みやヽき」と判読できる。記載全体を通じて原告に対する投票意思が認められる。
(16) 鳥取第二丙3
宮崎
記載は「宮わき」。
(17) 米子第一14一
宮崎
記載は「みやわき」。
(18) 米子第二14一
宮崎
同上。
(19) 東郷7一
宮崎
同上。
(20) 鳥取第二丙1
宮崎
記載は「みわわキ」。右記載の「みやわき」は原告の氏「みやざき」とその呼称に頗る近似性があり、漢字で「宮脇」と表示したものと比較するときは、原告の氏を「みやわき」と誤つて記憶し、あるいは誤つて記載したものと解するのが相当である。
(21) 岸本丙1
宮崎
第三字目「井」は「サ」の誤記と認められる。
(22) 三朝丙2
宮崎
記載の稚拙な点と第二字目「ナ」の字らしき記載は「一」を抹消したものと認められることから、記載は「ミナサキ」となり、原告の氏を誤記したものと認められる。
(23) 米子第一丙11
宮崎
記載の稚拙なことから第一字目は「ミ」であり、第二字目は「ヤ」の不完全記載と認められる。
(24) 東伯丙2
宮崎
記載の稚拙なことと、字形から見て第一字目は「ミ」のつもりであつたことが窺われ、「ミヤサキ」となる。
(25) 大山丙1
無効
記載は「マヤザキ」であつて、原告の氏を誤記したものと認められない。
(26) 智頭丙14
宮崎
右と同一理由により第一字目は「ミ」のつもりであつたことが窺われ、「ミやザキ」となる。
(27) 米子第一丙8
宮崎
記載の稚拙な点から見て、第一字目は「み」の不完全記載、第三、四字は各字の末端の曲げ方を反対にしたものと認められ、第三字目「ぎ」となるのは「ざ」の誤記と認められる。記載全体を通じ原告に対する投票意思が推定できるる。
(28) 米子第一丙10
無効
記載は明らかに「ミヤニサ」である。
(29) 赤碕丙3
無効
同じく「みヤだワ」である。
(30) 鳥取第三丙3
無効
記載は「ミヤかフ」と読める。「ミヤニサ」「みヤだワ」「ミヤかフ」は原告の氏と近似性がないので、直ちに原告に対する投票と推定することはできない。
(31) 境港丙1
宮崎
記載の頗る稚拙な点と字形から見て第三字目は「サ」第四字目は「キ」を書こうとしたことが窺われ「ミヤサキ」となる。
(32) 倉吉丙7
無効
第三、四字目は判読不能であるから、直ちに原告に対する投票と推定することはできない。
(33) 西伯丙2
宮崎
第一字目は抹消したものと認められ、「みカざき」となり、原告に対する投票意思が窺われる。
(34) 米子第一丙7
無効
記載は「ヤヤざぎ」であり、原告の氏との近似性が少い。
(35) 智頭丙9
宮崎
記載全体からみて第二字「し」は「や」を誤記したものと推定される。
(36) 青谷丙5
無効
記載は明らかに「おヤきさ」である。
(37) 智頭丙6
無効
同じく「シヌギキ」である。
(38) 北条丙2
無効
同じく「ミカザナ」である。
(39) 岩美丙2
無効
同じく「ヤヤきま」である。
(40) 米子第一丙2
無効
同じく「みかしき」である。以上五票は原告の氏との近似性がなく到底原告の氏を誤記したものと認められない。
(41) 米子第一丙4
無効
第一、二字は「みカ」と判読され第三、四字目は判読不能であつて、原告に対する投票と推定することはできない。
(42) 中山丙1
宮崎
第一、二字は「みや」であつて、第三字目は「さ」を書きかけたものと思はれ、原告に対する投票意思が窺われる。
(43) 智頭丙13
宮崎
記載は「ミヤキ」である。
(44) 鹿野丙2
宮崎
同上。
(45) 河原丙2
宮崎
記載は「ミやキ」である。
(46) 東伯丙1
宮崎
同じく「みヤキ」と読める。
(47) 智頭丙3
宮崎
同じく「みやき」である。
(48) 鳥取第一丙9
無効
第一、三字目は判読不能であつて、判読できるのは第二字目「や」のみであるから、原告に対する投票と推定できない。
(49) 米子第一丙9
宮崎
記載は「みやキ」である。
(50) 米子第二10一
宮崎
明白な「みやき」である。
(51) 米子第二丙1
宮崎
同じく「みやき」である。
(52) 米子第二丙3
宮崎
同上。以上(ただし(48)を除く)みやき票九票は原告の氏「宮崎」(みやざき)と近似しまた、「さ」の一字を脱落したものとも考えられ、原告に対する投票意思を推定できるものである。
(53) 米子第一5三
無効
記載は「ミヤギ」である。
(54) 米子第一丙6
宮崎
第三字目は「ギ」ではなく、「ザ」の字の上に「キ」の字を書き、「ザ」と「キ」が重り合つたように見える記載であつて、第一、二字の「ミヤ」と関連して考えるときは、原告に対する投票意思を推定することができる。
(55) 米子第一13一
無効
記載は「みやぎ」である。
(56) 倉吉丙6
無効
第三字目は判読困難である。「ぎ」と読めるとしても右三票「ミヤギ」は前記「ミヤキ」と異なり通常ありふれた姓であること、および最後が濁音であつて原告の氏の最後が「き」と発音されること、を合せ考えるとき、原告に対する投票と推定することは困難である。
(57) 米子第三3一
宮崎
記載は明白な「ミサキ」であつて、原告の氏「ミヤサキ」の「ヤ」を書き落したものと認められる。
(58) 東郷丙4
無効
記載は「ミザキ」ではなく「ミザナ」である。
(59) 鳥取第一丙4
宮崎
記載は「みざき」であつて、原告の氏「みやざき」の「や」を書き落したものと推測される。
(60) 鳥取第一丙6
無効
記載は「ヤサキ」と読まれる。
(61) 同丙2
無効
記載は明らかな「やさき」である。
(62) 羽合丙2
無効
記載は「やをき」と判読すべきものであつて、記載自体により原告に対する投票と認められないことは明らかである。
(63) 米子第一17一
無効
記載は「やざき」。
(64) 鳥取第三14
無効
記載は「みやじ」であつて、原告の氏と近似性がない。
(65) 智頭丙12
宮崎
第三字目は「起」(き)の字を崩したものとも解される、第一、二字目「みや」と関連して考察すれば「みやざき」の「ざ」を書き落したものとも推測できる。
(66) 三朝丙5
宮崎
第三字目は字を書きかけて抹消しなかつたものであつて、第一、二字「みや」によつて原告に対する投票意思が窺われる。
(67) 西伯丙1
無効
判読できるのは第二、三字で、「ミカ」となり、その余の記載は不明である。
(68) 智頭丙10
宮崎
記載の稚拙なことから見て、第二字目は「ヤ」と思われ、「ミヤキ」となるので「サ」を書き落したものである。
(69) 三朝丙4
無効
記載は「ミゼキ」である。
(70) 東伯5一
無効
記載は明白な「ミハキ」である。
(71) 用瀬丙1
無効
記載は「ミワキ」と判読できる。右三票は原告の氏と近似性がなく、原告の氏「ミヤザキ」のうち中間の二字を書き落したものとも認められない。
(72) 倉吉丙2
宮崎
第二字目はその字形から見て「崎」の崩し誤りと認められる。
(73) 倉吉丙9
無効
第二字目は正確な字ではなく、その字形から見ても「崎」を書こうとしたことは窺われず、同人に投票しようとしたか推定できないものである。
(74) 米子第二丙4
宮崎
第二字目はその筆順を辿れば「崎」と認められる。
(75) 青谷丙2
無効
第二字目は不明であつて、その形態から見ても「崎」を書こうとしたことは全く窺われない。
(76) 米子第二15一
宮崎
記載は明白な「ミヤ」である。
(77) 鳥取第三丙1一
宮崎
第一、二字は「ミヤ」であり、第三、四字は抹消してあるが、抹消前の書きかけたと思われるものは判読不能である。
(78) 同丙2一
宮崎
第一、二字は「ミヤ」であつて第三字目は字を書きかけて中止したものである。
(79) 鳥取第三3二
宮崎
記載は「みや」である。
(80) 東伯4一
宮崎
同上。
(81) 中山1一
宮崎
同上。
(82) 鳥取第一丙一
宮崎
第一、二字は「みや」と判読でき、第三字目は書きかけて抹消してあり、もとの字は「さ」と思われる。右(76)(79)(80)(81)の四票は「ミヤ」「みや」の各二字のみ記載されているところ、本件選挙の候補者中にその氏名に「みや」のつくのは原告のみであり、また右(77)(78)(82)の三票は記載の稚拙であること、および「ミヤ」に続けて書こうとした事跡に徴し、原告に対する投票意思が窺われる。
(83) 智頭丙2
無効
記載は明らかに「ミカ」である。
(84) 倉吉丙8
無効
第一、二字は「ミガ」であつて、第三字目は抹消され元の字は不明である。
(85) 北条丙4
無効
第一字目は「ミ」と判読できるけれども、第二字目は不明である。
(86) 鳥取第二 一
無効
明白な「ミサ」である。右四票の記載は、原告に対する投票と認められない。
(87) 鳥取第一丙7
無効
第一、二字目は判読することは全く不能であつて「まさお」と読まれない。
(88) 西伯1一
無効
原告の名が「正雄」であつても「正」の一字では果して原告に対し投票したものかどうかについて推定することはできない。(以上有効とすべきもの合計五四票)
(四) 検証の結果によれば
(1) 大山丙2 第一字目は「み」を抹消してあり、第三字目は判読不能であつて「やもあ」となるので、原告に対する投票と推定するに由なきものである。
(2) 鳥取第一丙8 第二、三字は判読不能であつて、「さき」と読むことはできない。第一字目「ミ」と右二字で、「ミ」を第一字とする仮名三字の氏となるので、直ちに原告に対する投票と推定することはできない。
(3) 東郷丙2 第一字目は、字を書きかけて中止したが、これを抹消しなかつたものと認められ、記載は「みヤ」となるので前記理由により原告の有効投票とすべきである。
(4) 羽合丙3 第二字目は「カ」「ヤ」とも読みうる字を抹消したものと認められる。第一字目の「ミ」のみでは原告に対する投票と推定することはできない。
(5) 倉吉丙10 第一字目は「ミ」であつて、第二字目は不明、「サ」とは判読できない。右と同一理由により無効である。
(6) 米子第一丙3 前記(三)(2)において「宮崎」の誤記として原告の有効投票とすべき旨判断ずみの票である。(以上有効とすべきものは一票)
(五) (他事記載関係)
検証の結果によれば、
(1) 鹿野丙3 記載の稚拙なことから見て「シマザキ」は「ミヤザキ」を誤記したものと推定できる。「シ」の上部の「キ」は抹消するのを忘れたものと思われ、他事記載ではない。
(2) 鳥取第一丙11 第一字目は「ノ」を抹消したものと認められ、「ミヤザキ」となる。
(3) 倉吉丙5 第一字目「ワ」は抹消するのを忘れたものと思われる。記載の稚拙なことからみて第三字目は「ヤ」とも判読され「ミヤザキ」となる。
(4) 岩美5一 第一字目「ネ」は抹消するのを忘れたものと思われるので他事記載ではなく「みやざき」となる。右四票には他事記載が認められないので、原告の有効投票とすべきである。
(六) 江府3一は、その記載の氏「仲田」は「中田」の誤記と認めることができるので「中田正雄」として第一、一の(二)の理由によつて被告の有効投票と認むべきものであつて、原告の有効投票とすべきものではない。
(七) 選挙の種類、候補者の所属政党名、氏名を単に二重に記載した票は有効と解すべきである。
検証の結果によれば
(1) 米子第三丙1 「宮崎正雄」の右肩に記載してある字は「自」であつて、同人の所属党である「自由民主党」を意味するものと解される。
(2) 三朝丙3 は記載の稚拙なことから見て「みやせき」の右側の「ちまく」と判読できる記載は「ちほく」の誤りであつて「地方区」を意味するものと解され「みやせき」の「せ」は「さ」の誤記であつて「みやさき」となる。
(3) 米子第三5一 「地方みやざき」と記載あるもの。
(4) 倉吉一 (みやざき・みヤざきまさおと併記したもの。
(5) 淀江6一 (宮崎・宮崎と併記したもの。
以上五票は右理由により原告の有効投票とすべきである。
(八) (予備的主張二関係)
無効として処理された投票中に第一表の(一〇)記載の漢字、仮名およびこれらを混用して記載した「宮崎吉雄」(みやざきよしお)を表示した投票合計三〇票があることは検証の結果に徴し明白である。
右「宮崎吉雄」なる投票が原告の氏「宮崎」(みやざき)と被告の名「吉雄」(よしお)を組合せた記載であることは疑のないところである。右投票の効力について考えるに前記第一、一の(二)記載と全く同一理由で原告の有効投票と解すべきである。(以上増加すべきもの合計三〇票)
(九) (予備的主張三関係)
検証の結果によれば、無効として処理された投票中に「みヤざきのりを」(船岡4一) (智頭3二)「宮崎憲夫」(青谷9一) 「宮崎憲男」(溝口4一)の各票のあることが認められ日野丙2 は第三字目「り」は抹消されているので「宮崎のを」として判断すべきである。右六票は前記第一、一の(五)と同一理由により原告の有効投票とすべきである。
(一〇) (予備的主張四関係)
検証の結果によれば無効として処理された投票中に宮崎太郎(岩美2)宮崎博史(米子第三8)鳥沢正雄(気高3)高橋正雄(八東1)いしもとマサヲ(国府3)山崎石雄(気高7)宮沢正秋(気高丙5)<谷>口正お(日南丙4)各一票(計八票)のあることが認められる。
右各投票は記載の氏、名のうち原告のそれに一致しない他の一方が原告と字形、字音寓意のいずれにおいても全く異なるので、原告の氏名を誤記したものと認め難く無効である。
(一一) (予備的主張五関係)
検証の結果によれば無効として処理された投票中に、宮崎健吉(米子第二13、倉吉18)宮崎弥一郎(淀江3)ミヤザキタメジ(日野丙1)石田正雄(鳥取第三11)石谷正雄(日南4)吉田正雄(郡家1、会見2)高田正雄(鳥取第一3)合計九票のあることが認められる。右各投票は前記第二、一の(一〇)と同一理由により無効である。
原告主張の鳥取第二丙5一票をよく見れば「宮崎」の下の記載は「一」の字を抹消しており、その下の記載と次の最後の「一」は「宮崎」の字の大きさに比較すれば小さいものであるから書きかけて中止したものと考えられ、従つて「宮崎」の下の記載は「せい一」ではない。右投票は単に「宮崎」のみ記載があるものとしてて、原告の有効投票とすべきである。(以上有効とすべきもの一票)
二、被告が有効を主張する投票に関する判断。
(甲) 調書記載の投票関係
検証の結果によれば、
一、無効として処理された投票中に「ナカダ」と記載した投票(西伯1)一票があることが明らかであつて、明らかに被告の有効投票である。
二、無効として処理された投票中に
(一) 「なか」三票(国府2、米子第一2、羽合1各一票)「中」三票(福部4一智頭3二)があることが明らかである。本件地方区選挙の候補者中にその氏名に「中」(なか)のつくのは被告のみであるから、右六票は被告に対する有効投票と認めるのが相当である。
(二) 「ナカタニ」四票(国府5、境港8、鳥取第三3、倉吉7各一票) 「中谷」五票(福部2、鳥取第三4、米子第三20、倉吉14、中山5各一票)「中たに」一票(境港11)「なかたに」一票(大山4)があることが明らかである。本件選挙と同時に行われた全国区の候補者中に「中」の字のある候補者には「中川」「中村」「中尾」「仲子」がありまた「谷」のある候補者には「大谷」「石谷」「柴谷」があること「中谷」(なかたに)は仮名四文字であるのに被告の氏「中田」(なかた)が仮名三文字であること、および「田」と「谷」にたいした観念連合があるものとは考えられないこと等を考慮すれば、右票は直ちに被告に対し投票されたものと推定し難く、候補者でないものの氏を記載したものとして無効である。もし「中谷」以外の票の記載を「中田」(なかた」とすれば最後の「ニ」または「に」はいずれも他事記載として無効である。
(三) 「中原吉雄」二票(河原1、米子第三18各一票) 「中原義雄」一票(米子第三5) 「ヨシダヨシヲ」一票(米子第一5) 「よしだよしお」一票(倉吉11) 「吉田吉雄」一票(日野9) 「中村吉雄」一票(気高11) 「中村ヨシヨ」一票(鳥取第一2) 「大田よしお」一票(智頭12) 「中西よしお」一票(米子第一7) 「中谷吉雄」一票(米子第二3) 「石田吉男」一票(境港3) 「山田吉雄」一票(鳥取第一1)があることが明らかである。右一三票は前記第二、一の(一)と同一理由により有効とすべきである。
(四) 別紙第二表の(一)記載のとおり漢字、仮名およびこれらを混用した「中田正雄」(なかたまさを)の類型票合計六二票があることが明らかである。これらの投票が被告の氏「中田」(なかた)と原告の名「正雄」(まさお)を組合せた記載であることは疑のないところである。右六二票は第一、一、の(二)と同一理由により被告の有効投票とすべきである。
(五) 同表の(二)記載のとおり漢字、仮名およびこれらを混用して記載した「田中吉雄」(たなかよしお)の類型票合計二七票があることが明らかである。右投票は第一、一(一)の(ホ)と同一理由により被告の有効投票とすべきである。
(六) 同表の(三)記載のとおり漢字、仮名で記載した「田中」(たなか)票合計二四〇票があることが明らかである。右投票は第一、一(一)の(二)と同一理由により被告に対する投票と認め難く無効である。
(七) 「田中よしはる」(岩美5) 「中よを」(中山6) 「田中一夫」(鹿野2)各一票(計三票)があることが明らかである。右各票記載の名が被告の名「吉雄」(よしお)と相違していることから見ると投票記載の「田中」が被告の氏「中田」を顛倒して記載したものとは速断し難いこと、および各記載全体から見て、被告の氏名を誤記したものとは到底推定し難いので、候補者以外の者を記載したものとして無効である。
(八) 「長田」一票(青谷2) 「永田」五票(鳥取第二18一米子第三6一倉吉12二赤碕3一)があることが明らかである。右票の「長」「永」は「中」と字形も相違しており「中」より字画も多く書き難い字であること、右「長」「永」の字を書く程のものがそれよりも書き易い「中」の字を難字に誤記することは通常考え難いこと等を考慮すれば「中」(なか)と「長」(なが)「永」(なが)が発音が似ていることの事由から、直ちに、右投票が被告の「氏」を誤記したものであると推定することは困難である。候補者以外の者を記載したものとして無効である。
(九) 「吉田」八票(用瀬4一西伯5一米子第三10二、倉吉5一東伯5一赤碕11一淀江5一)「ヨシダ」一票(赤碕8一) 「よしだ」一票(会見3一) 合計一〇票があることは明らかである。右投票の効力について考えるに、被告の氏「中田」の「中」の字と「吉」(よし)とは字音、字形のいずれも近似性がないので、「中田」(なかた)を「吉田」(よしだ)と誤記したものとは認め難い。被告は右「吉田」は被告の氏「中田」の「中」と名「吉雄」の「吉」を混同し顛倒したものであるというけれども、容易に首肯し難く、全国区候補者中に「吉田セイ」があることを考慮すれば、右票が被告に対し投ぜられたものと推定することはできないので、無効である。
(一〇) 別紙第二表の(四)記載の各投票合計八七票があることは明らかである。右投票中「中西」と記載した投票合計三四票は第一、一の(一)(ハ)と同一理由により無効たるべきものである。「中山」「中川」「中井」「なかお」「なかの」等は世間にありふれた氏であること、「山」「川」「井」の各字は「田」の字と字形においてさ程類似したものではなく、「た」の字と「お」「の」の字は字形、筆順から見ても誤記され易いものとは認め難く、発音上においても類似性が少い。「中上」は「なかうえ」「なかがみ」と呼ばれるものと考えられるところ、被告の氏「中田」と呼称の上に近似性がなく「上」を「田」の誤記とは認め難い。
如上の理由により右各票は、特に「中川」「中井」につき「川」「井」が「田」と水についての観念連合があることを考慮しても、被告に対する投票と推定し難く、候補者でないものを記載したものとして無効である。
(一一) 「中田憲男」(岩美3) 「中田トシオ」(米子第一17) 「中田次男」(大栄3) 「中田義正正」(鳥取第二16) 「中田義政」(鳥取第二15) 「中田仲夫」(気高2) 「中田義一」(鳥取第二7) 「仲田雄二」(米子第一14) 「中田てつお」(日野5)の各一票宛(計九票)の投票のあることが明らかである。右投票のうち「中田憲男」「中田トシオ」「中田次男」「中田仲夫」「中田義一」「中田てつを」各一票合計六票は第一、一の(三)の理由中の有効票と認めた部分と同一理由によつて、有効票と認めるべきである。「中田義正」「中田義政」各一票は第一、一の(一)(ロ)と同一理由によつて無効である。「仲田雄二」は、その氏は被告の氏「中田」と同じ読みであるけれども、名の「雄二」は被告の名「吉雄」と字音寓意等において何ら近似性がないので、直ちに被告に対する投票とは推定し難く、候補者以外のものの氏名を記載したものとして無効である。(以上有効とすべきもの六票)
(一二) 「シ×××ナカタ」と反訳記載してある点字投票一票(八東1)は鑑定人信崎盛文の鑑定の結果によれば「×××」印は字を抹消したものであつて、第一字目は「り」であるけれども、完全に抹消しなかつたので字の形として残つたものであることが認められる。されば右「リ×××」は他事記載ではないので被告の有効投票とすべきである。(有効一票)
(一三) 中田・中田)三票(倉吉17一日野11二) 中田吉雄・中田吉雄)二票(倉吉18二) 仲田・中田)一票(日野10一) なかた・なかた)一票(倉吉16一) 吉田・中田)一票(米子第三12一)右各投票のうち倉吉16・17各一票は投票用紙の裏面に併記したもの、倉吉18二票、日野10一票、日野11二票はいずれも候補者氏名欄と裏面とに記載したものであつて、当然被告の有効投票とすべきものであり、米子第三12一票は候補者氏名欄に「吉田」と、その裏面に「中田」と記載されているものであつて、右「吉田」の誤記に気付いて裏面に被告の氏「中田」を記入したところ、「吉田」の抹消を失念したものと推測できるので、被告の有効投票とすべきである。(以上有効とすべきもの八票)
(一四) 別紙第二表の(五)記載の各投票合計四八票の存在することが認められる。同表中の「中田政美」類型票合計四二票は第一、一の(一)(イ)と同一理由によつて無効たるべきである。「中田正道」「中田正文」「中田実」「中田忠二」「中田おさむ」「中田としじ」各一票合計六票は、各記載名は被告の「吉雄」と何ら近似性がないので、氏が「中田」であるだけでは、直ちに被告に対する投票とは推定し難く、候補者以外のものの氏名を記載したものとして無効である。
(一五) 無効として処理された投票中にをだよしお(米子第三4)小田よしお(倉吉20)各一票の存在することが明らかである。右各投票は被告の名と候補者「小田スエ」の氏を組合せた記載であることは疑がない。小田候補者は女性であるので、同人に投票しようとする選挙人が、男性の名「吉雄」「よしお」を記載することは通常考えられないことであること、記載の名が被告と同一呼称であること、被告と右小田両名の氏が「田」の字を共通していること等を合せ考えると、被告に対し投票する意思であることを推定できるので、被告の有効投票とすべきである。(以上有効とすべきもの二票)
乙 写真に撮影した投票関係
被告が無効票中有効を主張した投票の効力について判定した結果は左に記載するとおりである。
投票
判定
理由
(1) 国府丁1
無効
「なかお」と明確に記載されており、「お」は「た」の誤記と認められない。
(2) 国府丁2
無効
第三字目「の」は第二字目の五画目として「田」の一部となるものとは字形からも認められない。他事記載と認められる。
(3) 岩美丁1
無効
第一字目の二画目がやや左り曲りに直下にのびているので、「オ」の第三画を書き落したものとも考えられる。そうすると「オタ」の不完全記載ともなるので、「ナタ」として被告の有効投票と認められない。
(4) 岩美丁2
中田
記載の稚拙なことから見て、第一字目は「中」の誤記と認められ、記載は「中田」と見られる。
(5) 岩美丁3
中田
「中田」「中田吉雄」の併記であるから有効である。
(6) 郡家丁1
無効
記載は「なが」であつて、被告に対する投票と推定し難い。
(7) 郡家丁2
中田
「八一」なる記載は文字を書きかけたものであつて、他事記載ではない。
(8) 郡家丁3
無効
記載「中ガ」では、全国区候補者に「中川源一郎」があるので、直ちに被告に対する投票と認め難い。
(9) 郡家丁4
無効
記載は明らかに「なかさは」である。
(10) 船岡丁1
無効
第四字目は「美」の誤字であつて「中田正美」は中田政美の類型のものとして無効とすべきことについては既に判示した。(以下この類型票につき同じ)
(11) 河原丁1
中田
記載の稚拙なことから見て第二字目「口」は「田」の誤記と思われ「中田」となる。
(12) 八東丁1
無効
「中田正美」と読まれる。
(13) 佐治丁1
無効
第一、二字で「なか」と読めるが、その下の三字は判読不能であつて、被告に対する投票と認め難い。
(14) 智頭丁1
無効
記載は「中田正美」である。
(15) 智頭丁2
無効
第一、二字で「ちカ」と判読できるが他の二字は不明である。
(16) 智頭丁3
無効
第二字目は「中」と判読でき、記載は「ナ中」となるので被告に対する投票と認め難い。
(17) 智頭丁4
無効
判読不能である。
(18) 智頭丁5
中田
投票用紙の破損の状態から見れば、投票用紙処理の際生じたものであつて、符号記号を意味するものではない。
(19) 智頭丁6
無効
記載は「中西吉進」である。
(20) 智頭丁7
無効
判読不能である。
(21) 智頭丁10
無効
記載は「中田かく」であつて、被告に対する投票と認め難い。
(22) 智頭丁11
中田
記載は「ナカ」であるので、被告に対する投票と認められる。
(23) 境港丁1
中田
記載の稚拙なことから見て第二字目は「カ」、第三字目は「ダ」の不完全記載であつて、「ナカダ」となる。
(24) 境港丁2
中田
第一、二字「たか」は抹消するのを失念したものと思はれる。記載は「なかた」となる。
(25) 境港丁3
無効
記載は「田中」と判読される。前記第一、一、(一)(二)と同じ理由により「田中」票は無効とすべきである。(以下田中(たなか)票につき同じ)
(26) 境港丁4
中田
第一字目は「中」の不完全記載であつて「中田」となる。
(27) 境港丁5
無効
第一、二字とも第二画目が判然とした記載なく、判読不能である。
(28) 境港丁6
中田
記載は「ナカタ」と判読できる。
(29) 境港丁10
中田
最初の記載は字を抹消したものであつて、他事記載に当らない。記載は明白な「中田」である。
(30) 鳥取第一丁5
無効
記載は「田中」である。
(31) 鳥取第一丁6
無効
記載は「田中」である。
(32) 鳥取第一丁7
無効
第二字目の記載は意味不明であつて、第一字「中」のみでは、被告の有効投票と認められない。
(33) 鳥取第一丁8
無効
第二字目は判読不能、読める字は第一字目の「中」のみである。
(34) 鳥取第一丁9
無効
記載の二字ともに判読不能である。
(35) 鳥取第二丁1
無効
記載は「たなか」である。
(36) 鳥取第二丁2
中田
第四字目は「雄」を書くつもりであつたと思われる。「田中吉雄」となる。
(37) 鳥取第二丁3
中田
記載は「ナタ」であつて、稚拙な字体から見て、両文字の間に「カ」を書き落したものと思われ「ナカタ」なり、被告に対する投票意思が窺われる。
(38) 鳥取第二丁4
無効
記載は明白な「長田」である。
(39) 鳥取第二丁6
無効
記載は明白な「かなだ」である。
(40) 鳥取第二丁8
無効
記載は明白な「たかた」である。
(41) 鳥取第二丁9
無効
記載は「おだ」と判読できる。
(42) 鳥取第三丁3
中田
記載の稚拙なことから見て第一字目は「な」、第二字目は平仮名の「か」に濁点を一個附したもので「か」の誤記であり、「なか」として有効投票と認める。
(43) 西伯丁1
中田
記載の稚拙なことから見て、不完全ではあるが第一字目は「中」を、第二字目は「田」を記載したものと認められ「中田」となる。
(44) 西伯丁2
無効
第一字目は「を」とも判読できる記載であつて、「をたさま」となり、被告に対し投票したものであるか疑間である。
(45) 米子第一丁2
無効
記載は明白な「ナが」である。
(46) 米子第一丁5
中田
第三字目「ニ」は「ヨ」の誤記と認められ「中田ヨシヲウ」となる。
(47) 米子第一丁6
中田
記載の稚拙なことから見て、第一字目は「ナ」であり、第三字目「グ」は「ダ」の誤記と認められ「ナカダ」となる。
(48) 米子第一丁7
無効
第三字目は判読困難であつて、第四字目「一」と合せ考えると「清」とも判読できる記載である。名の記載があるので、「中田」のみでは、被告に対する投票と認め難い。
(49) 米子第一丁8
中田
第一字目「中」の下の記載は字を書きかけて中止したものの如く認められるので他事記載にあたらない。
(50) 米子第一丁10
無効
中の線がようやく認められる位のうすい鉛筆の線であること、その方向、長さ等から見ると、鉛筆が触れて偶然付いたものであつて、「中」の字の第四画として記載されたものではない。記載全体から見ると「○」印と認めるのが相当である。
(51) 米子第一丁13
中田
記載の稚拙なことから見て第二字目は「田」の誤記であつて、第一字目の明白な「中」と合せて「中田」と見るべきである。
(52) 米子第一丁14
無効
記載をよく見ると、第二字目は「な」の字を抹消してその右横に「か」を記載してあり、第一字目は「た」であつて、第三字目は第一字目と同じ字に濁点を付したものであるから、第一字目は「た」の字として記載したことが窺われ、「な」の誤記ではない。記載は明白な「たかだ」である。
(53) 米子第一丁15
中田
「中田」の下の記載は字を書きかけたものであつて、他事記載にあたらない。
(54) 米子第一丁16
無効
記載は「ナカダ」と判読し難く、記載の意味を補捉し難いものである。
(55) 米子第二丁1
無効
記載は判読困難であつて、被告に対する投票と認め難い。
(56) 米子第二丁3
無効
記載は明白な「タナか」である。
(57) 米子第二丁8
無効
記載は明白な「たなか」である。
(58) 米子第二丁9
無効
記載は「田中」と判読できるものである。
(59) 米子第二丁7
無効
記載は明白な「中田カンジ」である。
(60) 米子第二丁
無効
第一字目は「な」と読めるが、以下判読不能である。
(61) 米子第二丁11
中田
第一字目は「ナ」であり、第二字目は「カ」を書く意思が窺われ、第三字目は「タ」の不完全記載であつて、記載の全体を通じて被告に対する投票意思が推定できる。
(62) 米子第二丁13
中田
記載は「なカ」と判読できる。
(63) 米子第二丁14
無効
記載は「小田」のようであつて、到底被告のいうように「タ」と判読できるものではない。
(64) 米子第三丁3
無効
記載は「ナ日」であつて、意味不明である。
(65) 米子第三丁4
無効
第二字目は「の」であつて、第一字目は判読不能である。
(66) 米子第三丁5
中田
記載は「なか」と判読できる。
(67) 米子第三丁6
中田
記載は明白な「中」である。
(68) 米子第三丁7
無効
第二字目は「尾」の略字のような形でもあつて、「田」とは判読できないので第一字目の「中」と判読できる一字のみでは、被告に対する投票と認め難い。
(69) 米子第三丁10
無効
記載は明白な「タナカ」である。
(70) 米子第三丁11
無効
記載は明白な「ななカ」である。
(71) 青谷丁1
無効
記載の「中」「中」の二字はかなり達筆であつて、第二字目を「田」の誤記とは認め難い。その下の記載は全く判読不能である。
(72) 青谷丁2
中田
第一字目は「ナ」であり、第二字目は「カ」と思われ、第三字目は「タ」を書く意思であつたことが窺われ「ナカタ」となる。
(73) 青谷丁3
無効
第一字目は明白な「中」であるが、第二、三字目は判読不能第四字目は「ラ」であつて、記載の意味不明である。
(74) 青谷丁5
無効
記載は、判読不能である。
(75) 青谷丁6
無効
記載は明白な「田中」である。
(76) 青谷丁7
無効
記載は字の体をなしておらず、全く不明である。
(77) 青谷丁8
無効
記載は判読不能である。
(78) 青谷丁9
無効
記載は、字のように認められるのは第一字のみであつて、判読不能である。
(79) 羽合丁1
無効
第一字目は「お」を併記したような記載であり判読不能であつて、「なかたた」と読まれないものである。
(80) 羽合丁2
無効
「中田タツ」と記載され、名が女性名であるので、被告に対する投票と認められない。
(81) 羽合丁3
無効
記載は判読不能である。
(82) 羽合丁5
中田
記載の稚拙なことから見て第一字目は「中」の崩し字の不完全な字形と見られ第二字目と合せて「中タ」となる。
(83) 東郷丁1
無効
第二字目は判読不能であり、明白な字は第一字目「ナ」のみである。
(84) 東郷丁3
中田
「中田」の記載を抹消して、その下に「田中」と記載してあることから考えると、被告の氏を「田中」と感違いをして書き直したにすぎないものと認められる。
(85) 東郷丁4
無効
記載は「中田タカナ」であつて、「タカナ」は被告の氏「ナカタ」を逆記載したもので他事記載と認めるのが相当である。
(86) 三朝丁1
無効
第一、二字は判読困難であり、第三、四字は「かた」と判読できる。第一字目を「た」と読んでも、被告の氏「なかた」の三文字より一字多いので被告に対する投票と認められない。
(87) 三朝丁2
無効
第一字目は「を」と判読され「をだ」となる。
(88) 三朝丁3
無効
記載は明白な「田中」である。
(89) 三朝丁4
無効
記載の稚拙なことを考慮しても「ナガタ」と判読することは不能である。
(90) 三朝丁5
無効
「中田」と判読できる記載の右行にある片仮名を混ぜて記載した五字は判読不能な字もあつて、意味不明である。候補者以外の氏名を併記したものとも考えられるものであるから、有効と認められない。
(91) 倉吉丁1
無効
第一字目は「た」であり、第二字目は「カ」と判読されるのであつて「中」ではない。「たカ」となるので被告に対する投票と認められない。
(92) 倉吉丁2
無効
第一字目は「中」と判読できるが、次の記載は全く不明である。
(93) 倉吉丁3
無効
第二字目は「た」と読めるが、第一字目は判読不能である。
(94) 倉吉丁5
中田
記載の稚拙なことから見て、「なかだ」と判読できる。
(95) 倉吉丁6
無効
第三字目は判読不能であつて、記載は「ヨシヲ」と読まれない。
(96) 倉吉丁7
無効
第一字目は第三字目「た」と同一字形であるので「な」の誤記ではなく「たかた」である。
(97) 倉吉丁8
無効
記載の稚拙なこと、両者とも不完全な記載であることから見て、「中田」「田中」のいずれに投票する意思であつたものか推定できない。
(98) 倉吉丁9
無効
「けカたに」と判読される。
(99) 倉吉丁10
中田
記載は「中」と判読できる。
(100) 倉吉丁11
中田
記載の稚拙なことから見て第二字目は字を書きかけて「――」で中止し、その右に「た」を記載したものであつて、「なた」となり「なかた」の「か」を書き落したものと認められる。
(101) 倉吉丁12
無効
第一字目は「ナ」と読まれるが、以下四文字は判読不能である。
(102) 倉吉丁13
無効
第一字目は判読不能、第二字目は「の」である。
(103) 関金丁1
無効
第一字目は「中」と読むことはできず、記載自体真面目さを欠くものであつて、真の投票意思が認められない。
(104) 関金丁2
無効
記載は文字の体をなしていないものであつて、判読不能である。
(105) 関金丁3
無効
記載は判読不能である。
(106) 北条丁1
無効
記載は判読不能である。最後の記載を「中」の不完全記載と認めることはできない。
(107) 北条丁2
無効
第一字目は「田」と判読できる。第二字目を「中」の不完全記載と見れば「田中」となる。
(108) 大栄丁1一
中田
「田」と「中」の中間右側の記載は「返り点」であつて、他事記載にあたらない。「中田」と読むべきものである。
(109) 大栄丁2
無効
第一字目は判読不能。その字形のうちに「小」と読みうる部分もあつて「中」と読むことはできない。第二字目「田」のみでは被告に対する投票と認められない。
(110) 東伯丁1
無効
被告の氏名の左側の意味不明の記載は他事記載と認められる。
(111) 東伯丁2
無効
第一字目は「カ」または「ヤ」と判読できるけれども、第二字目は判読不能であつて、結局記載は不明である。
(112) 東伯丁3
中田
第一字目は「中」の誤記と認められ「中田」となる。
(113) 赤碕丁1
無効
記載の意味不明である。
(114) 赤碕丁2
中田
記載の稚拙なこと、第一、二字が「ナか」であることから、第三字目「ば」は「だ」の誤記と認められ「ナかだ」となる。
(115) 赤碕丁3
無効
明白な「たなか」である。
(116) 会見丁1
無効
二字ともに判読困難であつて「中タ」とは読まれない。
(117) 岸本丁1
無効
第一文字は「吉」のような字形ではあるが、下の二字は判読不能である。
(118) 岸本丁2
無効
第一字目は一見し「米」のようでもあつて「中」と判読することは困難であり、結局「中田」と読むことはできない。
(119) 箕蚊屋丁1
無効
第一字目は抹消したものと見ることはできない。第二、三字は「口田」であつて、被告に対する投票と認め難い。
(120) 箕蚊屋丁2
中田
第三字目は「義」の不完全記載と見られ、「中田義(よし)」として被告に対する投票と認められる。
(121) 箕蚊屋丁3
無効
記載は明白な「たなか」である。
(122) 中山丁1
中田
「田中義男」と読まれるので、前記第一、一、(一)の(ホ)の理由により被告の有効投票とすべきである。
(123) 中山丁2
中田
「なから」と記載されており「ら」は「だ」の誤記と認められ「なかだ」となる。
(124) 大山丁1
無効
記載は判読不能である。
(125) 名和丁1
無効
記載の「な口」では、意味不明である。
(126) 溝口丁2
中田
第一字目は「な」と判読され、下の字と続けて「なカ」となることと、その字形から見て第三字は「ダ」を書くつもりであつたことを推測できる。記載全体を通じ被告に対する投票と認められる。
(127) 溝口丁3
中田
第二字目は「田」の不完全記載であつて、「中田」となる。
(128) 日南丁1
無効
第三字目は不明であつて、その字形から見ても被告の名を書こうとしたものではない。右記載があるので前記第一、一、(一)(三)の理由により「中田」の記載だけでは被告に対する投票と認めることができない。
(129) 日南丁2
中田
第一字目は「中」の誤記と認められるので、「中田」となる。
(130) 日南丁3
無効
記載は明白な「ナカオ」である。
(131) 日南丁4
無効
記載は明白な「タナか」である。
(132) 日野丁2
無
第四字目は判読不能であつて、「なかた」と読むことは困難である。
(133) 日野丁3
中田
被告の氏名の上にある「地区方」は「地方区」の誤記と認められ他事記載にあたらない。
(134) 日野丁4
中田
「中田」の下の小さな横棒は字を書きかけたものであつて、他事記載にあたらない。
(135) 日野丁5
無効
記載は判読不能である。
(136) 日野丁6
無効
記載は判読不能である。
(137) 米子第一丁1
中田
前記甲の(一五)と同一理由により被告に対する有効票と認めるべきである。
(以上有効とすべきもの合計四二票)
三(イ) 検証の結果によれば原告の有効投票中に別紙第二表の(六)記載の各投票合計七一票の存在することが認められる。右投票中、漢字、仮名およびこれを混用して記載した「宮崎としお」類型票合計六票、「宮崎のりお」類型票一一票、「宮崎ひでお」類型票四票、「宮崎つぎお」「宮崎かずお」類型票各二票、「宮崎まさとし」類型票一〇票、「宮崎しよういち」「宮崎ふみお」「宮崎まさふみ」「宮崎ゆきお」類型票各五票「宮崎まさる」類型票四票「みやざきとみを」「宮崎テツヲ」「宮崎正信」各一票(合計六二票)は、いずれも原告の氏「宮崎」(みやざき)を正確に記載し、名は原告の名「正雄」(まさお)の二字のうちいずれかを漢字または仮名で記載しており、その記載が原告の氏名に近似しているので、原告に対する投票と認めるのが相当である。
「みやざききすけ」「宮崎藤市」「宮ざきかつじ」「みやざきためじ」「ミヤザキケンキチ」「宮崎市蔵」「宮崎忠次」「みやざきつねこ」各一票(合計八票)は、その記載名は原告の名と全く近似性がなく、特に「みやざききすけ」票については全国区候補者に、氏名の近似した宮腰喜助のいること、「みやざきつねこ」票については、女性名であること、を考慮すれば、右投票は果して原告に対しされたものかどうか明らかでないので、候補者でないものを記載したものとして無効とすべきである。
「宮崎重政」一票はすでに前記第一、二(一)(4)において無効として判断したものであるから本項における無効票中に算入しない。(以上無効とすべきもの合計八票)
(ロ) 検証の結果によれば、原告の有効投票中に「宮崎敬一」(西伯4)「ミヤサキシヨ一」(青谷9)「みやざきただよし」(岸本3)「宮崎いさむ」(用瀬乙1)「宮崎雄男」(鳥取第三乙43)「みやざきさだみ」(倉吉乙1)「ミヤザキノリシゲ」(鹿野1)「みやさきとしじ」(鳥取第一13)各一票(合計八票)の存在することが認められ、淀江乙8 は、その記載は「みやざき文」ではなく、第五字目は字を抹消したものであつて、他事記載にあたらず、単に「みやざき」であり、名和乙1 は、第四字目は「次」ではなく「治」と判読されれ、「宮崎憲治」であり、日南乙2 は、名は「たろー」ではなく「比ろし」と判読され「宮崎比ろし」となり、日南乙1 は、第三、四字は抹消されており記載は単に「宮崎」となるものである。
右投票中「みやざき」(淀江乙8)「宮崎」(日南乙1)各一票は、当然に原告の有効投票であり、「宮崎雄男」(鳥取第三乙43)は、氏および名のうち一字「雄」が原告と同一であつて、記載全体を通じて原告に対し投票したものと認められるので、原告の有効投票である。
前記一二票中から右有効票を除いた九票は、記載の氏は原告の氏と同じであるが、その名は原告の名と全く近似性がないので前記(イ)と同様理由で無効とすべきである。
なお被告主張の投票中「宮崎藤市」「宮ざきかつじ」「みやざききすけ」「みヤざきためじ」「ミヤザキケンキチ」「宮崎重政」「宮崎忠次」「宮崎市蔵」各一票(合計八票)の効力については前記(イ)においてすでに判断ずみであるから省略する。(以上無効とすべきもの合計九票)
第三、混在票について。
原告は被告の有効投票とされた「仲田正雄」(倉吉15、日南1、江府12)計三票「田中正雄」(鳥取第一甲4)一票「宮田止男」(国分甲1)一票は原告の有効投票であると主張するので考察する。検証の結果によれば被告の有効投票中に右「宮田止男」票を除くその余の各投票の存在することを認めることができる。
右「仲田正雄」票記載の「仲」は、被告の氏「中田」の「中」と字音は全く同一であり、字形も頗る近似しているので、「仲田」と「中田」と同一視してもよい程近似性が極めて大である。よつて「仲田正雄」は「中田正雄」と同じく前記第一、一、(二)と同一理由により被告の有効投票である。「田中正雄」一票は、その記載は被告の氏名と全く異なるものであつて、「田中」が「中田」を顛倒して記載したものとはその名の関係から容易に首肯し難いので、被告に対する投票と認め難く、記載名は原告と同一であるけれども、氏に近似性がないので、原告に対する投票とも認め難く、無効とすべきである。
国分甲1 をよく見れば、第三字目は、中央の縦の線の上先端が少し左に廻つているのであつて、「正」の字の第一画を短くして第二画に続けて書いたものと認められ「宮田正男」と読めるので、名は原告の名と同一呼称であり、原告の氏と上の一字を同じくすることからみて、原告に対する投票と認めるのが相当である。
よつて本項において原告の有効票一票の増加となり、被告の減票二票となる。
第四、福部村開票区に関する主張に対する判断
(一) 検証の結果によれば、原告の投票中乙1、4、6、7、8、9、18、19の八票のうち乙7、19の各投票記載の筆跡はその余の投票の筆跡と相違し、乙8、18は同一筆跡であつて他の投票の筆跡と相違しており、乙20、21、22の三票のうち乙21の筆跡は乙20、22の各筆跡と相違している事実が認められる。しかるにこれら票の各二組の投票の筆跡がそれぞれ同一であつて、六票の代理投票をした訴外浅井晃の筆跡は乙20、21、22の三票であるから、前者の組の代理投票をしていないことになり従つて前者の八票は代理投票によつたものでないので自筆の一票を除くその余の七票は自書しないものであつて無効であるとの被告の主張は、すでに前提事実が認められないので採用の限りでない。
(二) 検証の結果によれば、乙1、4、6、13、17の五票が赤鉛筆で記載されている事実が認められる。
証人岸田貞樹、浅井晃、川光多喜夫、橋本孝由、川口紀子の各証言によつては同人らが代理投票の補助者として投票の記載をした際赤鉛筆を使用しなかつた事実を確認するに足らず、他にはこれを認めるに足る証拠がない。かえつて右各証言に弁論の全趣旨を総合すれば同人らは選挙事務従事者として勤務し事務上赤鉛筆を使用していたものであつて、補助者として代書するに際し使用中の赤鉛筆を用いた事実のあることを認めるに難くない。よつて右投票は代理投票によるものでなく、従つて有意の記載である旨の主張は採用しない。
右投票は選挙人が自書したものでない疑が濃厚であるから無効であるとの主張について考察する。検証の結果によれば乙1および乙4の各投票が原告の有効投票中の端数綴りの中に纒めて近く近接して存在し、かつ、各投票に近接していた乙2および乙3の各投票に赤鉛筆で書いた数字、横線が認められるけれども、右事実によつて、直ちに開票に際し何人かが事務に用いていた赤鉛筆で白票に記載した事実を認定することはできない。他に右事実を認定するに足る証拠がないので右主張は採用の限りでない。
第五、検証の結果によれば、各開票区において票数計算に誤があり、また有効投票が各自相手方の有効票中に混在していたものがあつて、別紙第一表の(九)記載のとおり計算違いにより原告の増票八票 被告の増票四票 混在により原告の増票一三票 被告の減票一三票となる事実が認められる。(この点当事者間に争がない)
第六、以上の理由により当事者双方の各得票を計算すれば、原告の有効票中無効とすべきもの合計七三票、無効票中有効とすべきもの合計一四五票、第三の混在による増票一票に第五の増票二一票を加減すれば結局九四票の増加となり、被告の有効票中無効とすべきもの合計一二〇票、無効票中有効とすべきもの合計一六八票、第五の差引減票九票を加減すれば結局三九票の増加となる。各当事者の冒頭掲記の各得票数にそれぞれ右各増加票を加算すれば、原告は一一八、〇四六票、被告は一一八、〇三〇票となり、原告の有効投票は被告のそれより一六票多数となる。
よつて、被告の当選の無効の確定を求める原告の本訴請求は理由があるので、これを認容すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 三宅芳郎 藤田哲夫 熊佐義里)
(別表省略)